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財団法人日本ユニセフ協会
 



シリア緊急募金 第35報
数十万人の子どもたちの教育を奪う紛争

【2013年3月5日 ダマスカス/アンマン発】

© UNICEF/Syria/2013/Morooka
ホムスの小学校の授業の様子

3月15日で3年目に突入するシリア内戦。
周辺国へ逃れた国民は100万人に達しました。
ユニセフの実施した調査により、シリア危機の影響を受けている地域の学校は深刻な影響を受け、出席率が急速に減少していることが明らかになりました。

シリア危機から、もうすぐ丸2年。暴力はさらに激化し、何十万人もの子どもたちの教育を受ける権利が脅かされていることが、ユニセフの調査で明らかになりました。

シリア国内の5分の1の学校が攻撃を受けて損傷したり、あるいは避難所として使用されているため、学校の再開もままならない状況が続いています。

最も激しい紛争地域では、この2年間、ほとんど学校に通っていない子どももいます。

「シリアの教育システムは、この暴力の影響で揺らいでしまっています」「かつてシリアは、質の高い教育を誇っていました。しかし今は、急速に後退してしまっているようです」こう話すのは、ユニセフ・シリア事務所のアブデル・ジェリル代表です。(参考:純就学率男子97%、女子92% 出典:ユニセフ『世界子供白書』2009)

ユニセフの教育についての調査は、2012年12月に実施されました。本調査によると、多くの親が、安全性を懸念し、子どもを学校に通わせることをためらっています。

  • 少なくとも2,400校が倒壊、あるいは深刻な被害を受けました。そのうち772校(全体の50パーセント)がイドリブ、300校がアレッポ、300校がダラアの学校です
  • 1,500校以上が避難所として使用されています
  • 110人以上の教員とスタッフが命を落とし、多くの人々が職を失いました。イドリブでは、教員の出勤率は55パーセントにも満たない状況です
  • 子どもたちの出席率は、ラタキア県で60%、イドリブ県で40%、アレッポ県ではわずか6%まで低下しています
  • 紛争地域では、武力勢力や武装グループに占領されている学校もあります

本調査では、特に激しい紛争に巻き込まれているイドリブ、アレッポ、ダラアの学校が、最も深刻な影響を受けていると警鐘を鳴らしています。このため、子どもたちは、授業が途中で中断されたり、時には週に2回しか学校に通うことができないこともあるのです。

多くの難民を受け入れている地域の学校では、クラスの人数が定員を大幅に上回り、100人近くに達しているところもあります。

「学校にいることで、子どもたちは安心したり、守られている感覚を得ることでき、親や保護者は、子どもの将来に希望を抱けるようになります」「だからこそ、多くの親が教育を最優先に考えているのです」(アブデル・ジェリル代表)

シリア国内の子どもの学習ニーズに対応するため、ユニセフは、ホムス、ダラア、ダマスカス郊外、タルトゥース、ラタキア、ハマ、クネイトラの170校以上の学校クラブを支援しています。このクラブでは、約4万人の子どもが補習授業を受けたり、レクリエーション活動を楽しんだりしています。また、ユニセフは、指導用と学習用の教材の提供の他、被害を受けた学校の修繕も支援しています。

しかしながら、この学校クラブを維持するためには、5月末までに、追加で100万米ドルの資金が求められています。資金不足のために、早急に必要なプレハブ教室の設置、学習スペースの修繕・修復、指導用と学習用教材の提供も妨げられているのです。

ユニセフは、シリアの教育プログラムを実施するために、今年度最初の6ヵ月間に必要な総額として2,000万米ドルの資金を、国際社会に要請しています。このうち、現在までに集まった資金は、300万米ドルに過ぎません。

ユニセフの対応

2011年3月の危機当初から、ユニセフは40のNGOとともに、できるだけ多くのシリアの子どもたちが教育を受け続けられるように活動してきました。学校は、子どもたちに安全で安心できる場所を提供し、子どもを支え、危険から守る場所であると、ユニセフは信じています。

2013年前半、ユニセフはパートナー団体と共に、下記支援活動を予定しています。

  • 100万人の子どもたちに学用品を提供
  • 特に、国内で避難を余儀なくされている15万人の子どもと若者たちの教育へのアクセスを確保する
  • 学齢期にある30万人の子どもたちに、カウンセラーの育成を通じて、心理社会的なニーズの充足
  • 未就学の子どもたちの先生やボランティアに、心理ケアのトレーニングを行い、未就学児の活動を支援
  • 学校と幼稚園が、給水設備とトイレを含め、子どもに優しい建物にすること
  • 50万人の子どもたちに、地雷の危険啓発を実施
  • 児童・生徒数が増えている学校にプレハブの教室を提供し、教育活動の再開を支援