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財団法人日本ユニセフ協会
 



シリア緊急募金第91報
レバノンで夢を抱く、シリア難民の13歳
出生登録証がなく、学校へも行けない

【2014年1月30日 レバノン(バールベック、タル・アル・アバド)発】

© UNICEF Lebanon/2014/Noorani
レバノンの非公式テントに避難しているハサンくん(13)

レバノンに身を寄せるシリア難民の男の子。シリアで直面していた紛争の恐怖や命の危険から解放されたものの、レバノンでの生活には様々な困難が立ちはだかります。

“存在している証”がない

シリア人の父親と、レバノン人の母親のあいだに生まれたハサンくんは、どちらの国でも、正式に存在が認められていません。

ハサンくんがシリアで生まれたとき、両親は出生届を出しませんでした。その後両親が離婚し、状況はより複雑になりました。正式な出生登録書をもたないハサンくんと姉妹(16歳・12歳)は、シリアの国籍を取得することも、学校に通うこともできませんでした。

2年前、ハサンくんの母親は、シリア危機によって迫りくる暴力から逃れるため、家族を連れてレバノンに避難することを決めました。それが彼女自身や子どもたちにとってより良い未来につながる、と希望を抱いての決断でした。 「故郷のシリアでは、どこにいても発砲や爆撃がありました」と、ハサンくんが思い起こします。「いつも危険を感じていました。レバノンに着いたとき、ようやく安心できました。今はテントで叔父さん夫婦と一緒に暮らしています」

© UNICEF Lebanon/2014/Noorani
シリア人の父親とレバノン人の母親をもつハサンくんは、出生登録証がないため、両国で正式に“存在”しておらず、学校にも通えていません。

助けてくれた”叔父さん”

シリア危機が発生して以来、レバノンは周辺国のなかで最も多くのシリア難民を受け入れています。国連難民機関によると、レバノンで難民登録をした人、もしくは登録待ちの人の数は85万8,000人を超えています。またレバノン政府によると、正式に難民登録されていない人も含めると、100万人以上のシリア難民がレバノンに身を寄せていると推測しています。※

レバノンに避難するシリア難民の多くは、先にレバノンに入国した家族や親せきを頼り、近くに身を落ち着かせます。しかし、ハサンくん一家には頼れることのできる家族や親せきがいませんでした。“叔父さん”夫婦は二人を招き入れ、安心できる寝床を提供してくれました。

夢を抱き、日々を精一杯生きる

しかし、ハサンくんが抱えている問題は、避難場所だけではありません。ハサンくんを含め、たくさんのシリア難民の子どもたちが、家計を支えるために働かざるを得ないのです。苦しい生活を強いられている難民の子どもたちにとって、教育の優先順位は極めて低くなっています。

「母はパートタイムで家政婦として働いています。母の負担を軽くするためにも、僕も仕事を見つけて働きたいです。以前は、鉄を加工する店で働いていましたが、給料の支払いが遅れたり、全く払ってもらえないことがあったので辞めました」

ハサンくんは仕事探しに時間を費やしています。「道端で靴磨きをしていますが、今は雨が降っているのでそれもできません」と、ハサンくんが語ります。

多くの困難に直面しながらも、ハサンくんは希望や夢を持ち続けています。「シリアのことを思い出すと、頭の中に恐怖や死が浮かびます。この感情を乗り越えるためにも、夢中になれることを探したいです。今は、一日一日を精いっぱいに生きています」

「人間はみんな、夢を抱きます。その夢が叶う時もありますが、夢が現実にならない時もあるのです。僕にとって今は、自分の夢が叶えられる時ではないようです。でもいつかここで身を落ち着かせ、小さな会社や食料品の店を開きたいです」

※レバノン政府の推計値には、シリア人労働者やその家族、UNHCRで難民登録されていない人が含まれています。

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