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財団法人日本ユニセフ協会
 



シリア緊急募金 第106報
現地からの報告:
歴史的建築物の地下室に身を寄せる避難民

【2014年4月13日 シリア・タルトゥース発】

避難所でダンスをする子どもたち
© UNICEF Syria/2014/David Youngmeyer
タルトゥースの旧市街にある避難所の広場でダンスをする子どもたち。

何百万人ものシリアの子どもたちやその家族が、長期化する紛争で、自宅からの避難を強いられています。多くの避難民は学校などの公共施設や、建設途中のままのアパートに設けられた避難所に身を寄せています。

シリア西部では、タルトゥース、ラタキア、イドリブの3県に約130万人が避難しています。なかでもタルトゥースは最も多くの避難民を受け入れており、その数は57万人にも及びます。

タルトゥースは、紛争が起こっている場所から比較的離れた場所にあり、賑やかな港町です。何千もの世帯が、避難所22カ所や親類、友達のもとに身を寄せています。

タルトゥースの国連拠点でもあるユニセフは、パートナー団体と協力して、最も厳しい状況におかれている子どもたちやその家族を支援しています。

超満員の避難所で、工夫を凝らして生活する人々

ミュージアムにもなっている古代の要塞や12世紀の建築物の近く、タルトゥースの歴史的中心地にある避難所を同僚と訪れました。

その避難所は、古い石造建築物内の円天井の地下室に設置されており、まるで大きな暗い地下貯蔵室のようでした。

超満員の避難所で少しでもプライバシーを確保しようと、38人の子どもを含む、およそ20の家族がテントを張って生活をしています。それぞれのテント内で、石床の硬さを和らげるために毛布やマットを使用するなど、少しでも自宅のような快適な空間を作ろうと工夫を凝らして生活する様子が見られました。

この避難所はシリア危機が始まってすぐ、2011年の中頃に設置されたものです。タルトゥースの中でも初期に設置されたこの避難所に身を寄せる多くの家庭は、アレッポやホムスから避難している人々です。

学校に通わず、家計を支える息子を案ずる母親

地下室にテントを張って生活する避難民
© UNICEF Syria/2014/David Youngmeyer
円天井になっている地下室にテントを張って生活する避難民。

ユニセフのパートナー団体のボランティアスタッフは、母親や青年期の女の子の衛生意識向上のための集会を開催しました。乳児のいる家庭には、おむつや発疹用クリーム、石けんなどが入った乳児用衛生キットが配布されました。集会では個人衛生、下痢への対処法、手洗いや食べ物を覆うことの大切さなどを取り上げたと、ボランティアスタッフから話を聞きました。また、人が密集している場所で急速に拡散する危険性のある、水を媒介とする病気の予防方法についても重点的に伝えられました。

家族と共に避難所に身を寄せているボウシャラさんと話ができました。ボウシャラさんはおよそ2年前に爆撃で家が破壊され、アレッポから避難してきました。3人の子どもは避難生活を送っているがゆえに、1年ほど教育を受けることができませんでした。

ボウシャラさんは現在2人の子どもが定期的に通学していることを喜ぶ一方、おそらく再び学校に戻ることのできない16歳の長男、シャディくんの将来を案じています。シャディくんはガス容器を売って、家族の生活を支えています。

「シャディには学校に戻って勉強してほしいです。息子も、そう願っています。でも、シャディが働かなくては、家計が回らないのです」と、ボウシャラさんが語ります。夫も仕事をしていますが、一家は避難所で配布される支援物資に頼らなくては、生活を送ることができません。

懸念される資金不足

シリアには、ボウシャラさんのように支援を必要としている住民が何百万人もいます。ユニセフは支援を必要としている人のために、緊急に必要とされているワクチンや水と衛生サービスなど、命を守るための支援を提供しています。また、シャディくんのような、働かざるを得ない状況にある子どもたちが再び学校に通い、目にした惨事からトラウマを抱えている子どもたちの心の傷を癒し、子ども時代を取り戻すことができるよう、ユニセフは支援を行っています。

しかし、これらの支援活動を継続するために必要な資金は不足し、大きな懸念となっています。ユニセフはシリア危機対応のために、2014年に2億2,200万米ドルの資金を国際社会に要請しました。しかし、2億米ドルが依然として不足しており、緊急に必要とされています。

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