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財団法人日本ユニセフ協会
 



フィリピン台風緊急募金 第10報
日本政府 ユニセフに約4億円を拠出
『子どもに優しい空間』に続き『赤ちゃんテント』も

【2013年11月19日 ニューヨーク/マニラ発】
【2013年11月20日 東京発】

タクロバン空港に『子どもに優しい空間』第2号設置へ

© UNICEF/NYHQ2013-1007/JEOFFREY MAITEM
タクロバンで、支援を待つ子どもたち

壊滅的な被害を受けた家屋や地域の再建が始まる中、最も幼い被災者たちの安全を守ることは最優先事項です、とユニセフは訴えます。

ユニセフとタクロバン市社会福祉開発局は、国際NGO(セーブ・ザ・チルドレン)とも協力し、現地時間本日(20日)、タクロバン市内に、最初の「子どもに優しい空間」を開設。今後、他の被災地域にも多数を設置してゆきます。

「子どもたちが災害から生きのびるためには、健康面や教育面、そして心理面でのニーズへの対応は当然ながら、その安全を何よりも優先して確保しなければならないのです」と、ユニセフ・フィリピン事務所の穂積智夫代表は言います。「これは、我々が今後数多く開設してゆく『子どもに優しい空間』の第1号です。子どもたちが、大切な人を失ったことや生活の激変から立ち直り始める場所であり、また、子どもたちを、人身取引をはじめとする様々な形の搾取などの脅威から守る場所でもあるのです」

『子どもに優しい空間』の開設にあたり、ユニセフは、テントやレクリエーション用品、幼児教育用品などを提供。地元自治体は、デイケアワーカーを派遣しています。また、近日中に、ソーシャルワーカーや漫画家、若者のボランティアなども、この活動に参加する計画です。

東日本大震災の経験を元に、将来の“万が一”に備え、先日、日本ユニセフ協会が国立精神・神経医療研究センターと共同で日本版のガイドブックも制作した『子どもに優しい空間』。フィリピンの被災地に開設された“空間”でも、20年以上にわたって積み重ねられたユニセフの知見をフルに活かし、子どもたちの回復を助けるため、3歳から15歳の子どもたちに、それぞれの年齢に合った遊びやスポーツ、学び、子ども同士の話し合いなどの活動の場や機会が提供されます。第2号は、タクロバンの空港に。さらに、タクロバン・アストロドームや、がれきの撤去が進む小学校に設置される予定です。子どもたちの親や地域の方々も、設置・運営に積極的に関わっています。

『赤ちゃんテント』も

©  UNICEF/NYHQ2013-1029/JEOFFREY MAITEM
タクロバンの避難所で抱かれる子ども

ユニセフは、『子どもに優しい空間』用とは別にテント30基を用意。タクロバン市内に『赤ちゃんテント』も設置しました。ここでは、妊婦や子育て中の母親たちが、母乳育児はじめ、幼い子どもたちの栄養状態を維持するためのアドバイスを受けることがきます。

東日本大震災の時も、ユニセフや国内の専門家の協力を得て日本ユニセフ協会も展開した、赤ちゃんとお母さんを守る活動。「母親や赤ちゃんの健康を守ることもまた、今回のような緊急時における優先事項の一つです」「母乳育児は、乳児が必要な栄養素を受け取るために最も効果的な方法で、母乳には乳児を病気から守る免疫成分も含まれるのです」と穂積代表は語ります。

「母親たちが、これほど多くのストレスを抱える中で母乳育児を続けるためには、支援とはげましが必要です。安全な水がない、哺乳瓶が煮沸できないなど衛生状態が悪い中で粉ミルクを与えることは、乳児に感染症、栄養不良、病気、そして死をももたらすかもしれない危険があるということを、母親たちに知ってもらう必要があります」(穂積代表)

電気が無い場所で“宣伝”活動

厳しい状況が続く中、どうしたら自分の子どもを守れるのか? どうしたら不用意に子どもと離ればなれになってしまうのを防ぐことができるのか? どうしたら子どもたちの心理的な回復を助けられるのか? 行政などの“子どもを守る仕組み”が崩壊または十分に機能していない状況の中、ユニセフは、ひとりひとりの親や地域の方々に、自らの力で子どもを守る“ヒント”となるメッセージの“宣伝”活動もスタートさせています。

ユニセフがこうした活動に使う手段は、通常、テレビやラジオ、インターネットなど。しかし、電気はおろか、多くの人々がこうした“手段”を失った被災地では、拡声器を付けた車が頼りです。

日本政府 ユニセフに約4億円を拠出
(UNICEF東京事務所発行プレスリリースから)

日本政府は、観測史上最大級とされる台風30号「ハイエン」(現地名「ヨランダ」)で甚大な被害を受けたフィリピンの子どもと女性を支援するため、400万米ドル(約4億円)の緊急支援をUNICEFを通じて実施すると発表しました。現時点で、被災した子どもは500万人以上、そのうち170万人が避難を余儀なくされたと推定される中、UNICEFはこの支援により、水と衛生、保健、栄養、教育、子どもの保護の分野で6ヶ月間の緊急支援活動を実施します。UNICEFの現地報告によると、水や衛生のサービスは壊滅的な打撃を受け、安全な水の確保、供給が急務となっています。現時点で少なくとも47万棟以上の家屋が全壊し、トイレなどの衛生施設の破損も深刻で、殆どの水源が汚染されているため、感染症の蔓延が懸念されています。

© UNICEF/PFPG2013P-0246/MARISSA AROY
タクロバンに到着した支援物資を運ぶ、フィリピン事務所の穂積代表

これに対しUNICEFは、米国国際開発庁(USAID)やフィリピン軍と協力し、タクロバン市の水処理施設の完全復旧に貢献。市の人口の80%にあたる約27万人へ安全な水の供給を開始し、タクロバン市の3万ヶ所で給水が可能になりました。さらにUNICEFは、パートナー団体とともに、水質調査の実施、水道施設の修復、衛生キットの配布、給水所、移動式浄水施設、男女別トイレの設置といった活動を行っています。

避難を余儀なくされている子どもたちの栄養不良が懸念される中、UNICEFは急性栄養障害の子どもたちへの栄養治療食の供給や、ビタミンAなど子どもの命を守るために必須な微量栄養素の配布、家庭内で治療できる子どもたちの地域栄養障害治療センターの設置、緊急時の急性栄養不良に対応するための保健員の能力強化といった支援を実施します。また、予防接種キャンペーンを行うとともに、子どもの肺炎や下痢症などの病気を治療するため、緊急保健サービスを提供します。

また、1,344棟の学校が倒壊したり避難所として使用されたりして、被災した子どもの大多数が学校に通うことができなくなっています。UNICEFは、仮設教室の設置や学習キットの配布などの活動を通じ、子どもたちが安全に遊び、学ぶことのできる場所を確保します。また、避難生活を強いられた子どもたちが直面している虐待、搾取、暴力、人身売買といった問題の予防や早期対応に取り組むとともに、家族と離別した子どもの登録や、家族との追跡・再会プログラムを実施します。

フィリピンの子どもたちに必要とされる支援の規模が日ごとに大きくなる中、UNICEFは国際社会に対して総額6,150万米ドル(約61億5千万円)の支援を求めており、今回の日本政府からの拠出金は、上記の活動を含むUNICEFのフィリピン緊急支援活動の一部として使われます。

UNICEF東京事務所の平林国彦代表は「日本政府、そして日本国民の皆様からフィリピンの被災した子どもたちのために、ボホール島の地震、ミンダナオ島での武力衝突に加え、この度の台風被害のご支援を頂戴し、心から感謝申し上げます」と述べ、「多くの子どもたちが、家を、家族を、そして学校や病院を失っています。今回の日本政府からの温かい支援は、そのような子どもたちの心に、必ずや安心と希望をもたらしてくれるでしょう」と話しました。

また、パートナーとともに作成した、子どもの保護を呼びかけるメッセージを、タクロバン市内でラジオや市内を巡回する車のスピーカーから流しています。

避難所においては、親たちが壊れた家を直しに行っている間などに取り残される子どもたちのため、「子どもに優しい空間」をつくって、子どもたちが安全に過ごせる場所を提供します。今週末までに、被害が大きかった地域を中心に、「子どもに優しい空間」を正式にスタートさせることで、タクロバン市長とも合意しました。

このほか、タクロバン市内と周辺6自治体に水を供給する水処理施設の復旧を支援し、16日夜までに、20万人に安全な水を提供できるようになりました。衛生面では、1万8,000人が利用できる3,000個の衛生キットを提供しました。さらに、妊婦と授乳中の母親たちのために、タクロバン市内30ヶ所にテントを設置し、子どもたちの栄養についてのカウンセリングも行っています。