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財団法人日本ユニセフ協会
 



フィリピン台風緊急募金 第18報
母親と赤ちゃんに安全な空間を
復興へ向けた、大切な一歩

【2013年12月16日 フィリピン・タクロバン発】

© UNICEF PHILIPPINES/2013/MAITEM
タクロバンにある「親子にやさしいテント」では、ほっとする空間を提供しています。「ここにいるすべての母親は、彼女たちの人生における大切な人々を亡くしています。しかし、その出来事について心の整理をする時間がありませんでした」と語る、パートナー団体の心理学者カリヨさん。

台風30号による災害発生から1ヶ月が過ぎた現地では、復興に向けた支援活動が始まっています。ユニセフはパートナーと共に、台風30号で被災した母親と赤ちゃんが、ほっと息をつける空間を提供し、復興に向けて長い道のりを歩き始めることができるよう、支援しています。

被災後に生まれた小さな命

クリスティーナさんは、娘のキャサリンちゃんを腕に抱いています。キャサリンちゃんは、台風30号が去って間もない、11月19日に誕生しました。

「この空間にくると、ほっとします」と、バランガイ68と呼ばれる場所にあるテントの中に座って、クリスティーナさんは言います。「私たちの家は台風によって倒壊しました。ようやく建て直し始めたところで、今は部分的に再建された家に住んでいます」

クリスティーナさんは続けます。「あの家にいると、ストレスを感じます。ここにくると、キャサリンと私はリラックスできて、いろいろな問題も忘れることができます」

母親のための空間、赤ちゃんのための空間

© UNICEF PHILIPPINES/2013/MAITEM
「この空間に来ると、ほっとします」と語る、母親のクリスティーナさん。娘のキャサリンちゃんは、台風30号到来の11日後に誕生しました。

台風30号による被災以来、クリスティーナさんのような母親たちは、子どもを出産する喜びと同時に、その困難を経験してきました。

被災した多くの母親は、避難所に身を寄せています。台風によって夫を亡くした女性もいます。彼女たちは、家族や家、大切なものを失った喪失感のなかで新しい命を産み、被災後は貧困に苦しんでいる母親もいます。初めて母親になった女性も、そうでない女性もいます。

ユニセフはパートナーとともに、クリスティーナさん親子が通うような“親子にやさしいテント”を設置しています。現在、タクロバンに4カ所、Dulga自治体に1カ所が設置されています。

これらのテントは、母親と赤ちゃんが、台風によって受けた精神的ショックから回復できるよう、清潔で安全で静かな空間を提供しています。混雑した避難所の暮らしから離れ、母親は赤ちゃんに母乳を与えることができ、赤ちゃんは安心して遊ぶことができるのです。

母親と赤ちゃんたちの心を落ち着かせるための活動も行われています。地域のスタッフが、赤ちゃんと一緒にできるリラクゼーション運動の方法を教えます。セラピーグループと呼ばれる集いでは、母親たちが感情を共有することができます。

母親が心穏やかに母乳を与えている間、2歳未満の子どもたちは、ユニセフが提供する早期幼児開発(ECD = early childhood development)キットに入っているおもちゃで遊ぶことができます。

復興への一歩

© UNICEF PHILIPPINES/2013/MAITEM
(後方左)タクロバンにある4つの“親子にやさしいテント“のうちの一つ。

母親たちにとって、自分の感情を整理することは、回復への大切な一歩です。
「台風による被災後、母親たちは自分の感情を表に出す時間も余裕もありませんでした」と、パートナー団体の心理学者であるヌリア・ディエズ・カリヨさんは話します。「子どもたちを守るために、食べ物や水を探すことで精いっぱいでした。疲れ切って、恐怖やストレスのなかに身をおいていたことで、子どもたちへの愛情にも影響がでてきました」

「ここにいるすべての母親は、人生における大切な人々を亡くしています。しかし、その出来事について心の整理をする時間がありませんでした。このテントにきて初めて、彼女たちは立ち止まって涙を流すことができます。それは彼女たちにとって、良いことなのです」(カリヨさん)

「感情を表に出し、同じ状況にいる他の母親たちと共有することは、良いことです。そうすることで彼女たちは、お互いを助け合い、コミュニティーに属しているという意識を持つことができるのです」と、カリヨさんは加えました。

台風30号到来の時、クリスティーナさんは、お腹の中にいる娘と自分自身を守るため、高い家によじ登りました。その後キャサリンちゃんは、公立病院で生まれました。「娘が生まれてきて、本当にうれしかったです」とクリスティーナさんは話します。彼女の夫の両親は、台風で亡くなりました。

パートナー団体であるAction Against Hunger (ACH)は、10年以上にわたってフィリピンで人道支援を続けている国際NGOです。タクロバンやこの地域全体で、数多くの支援をユニセフとともに実施しています。