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財団法人日本ユニセフ協会
 



フィリピン台風緊急募金 第25報
復興への長い道のり、レジリエンスの強化支援も
ユニセフ 4カ月レポートを発表

【2014年3月7日 マニラ発】

2013年11月8日にフィリピン中部を襲った台風30号から4カ月。被災地では、保健センターの再開や水道の復旧、仮設学校への子どもたちの通学など、復興は目覚しく進んでいます。

しかし、本日ユニセフが発表する4カ月レポートは、子どもたちのニーズは依然として大きく、台風30号がもたらした被害の爪あとは、被災した方々や地域の復興のためにやるべきことがあることを強く物語っていると指摘しています。

ビタミンAの投与をうける子ども。
© UNICEF/NYHQ2013-1228/Heather Papowitz
ビタミンAの投与をうける子ども。

ユニセフ・フィリピン事務所代表代理のアブドゥル・アリムは「台風が直撃した地域は、被災前も約40%の子どもたちが貧困下で暮らしていたほど、最も貧しい地域です。子どもたちは台風の影響を最も受けており、ユニセフの取り組みの中心に置かれています。完全なる復興への長い道のりを歩んでいます」と述べました。 ユニセフとパートナー団体の取り組みをまとめた報告書「台風30号:支援活動4カ月レポート(原題:Four Months After Typhoon Haiyan)」では、これまでの支援活動がまとめられています。

  • ■これまでの主な支援
  • 清潔で安全な水を93万人に供給
  • 学校や「子どもにやさしい空間」を通じて、23万1,000人の子どもに衛生キットを提供
  • はしかの予防接種を約8万3,200人の子どもに実施
  • 免疫力を高めるビタミンAを5万5,300人に投与
  • 9万7,000人に栄養状況の調査を実施
  • 被災した子どもたちが守られる環境を提供し、1万7,000人の児童に心のケアを実施、これによって災害で受けた心の傷を癒し、虐待や暴力のリスクの高まりを軽減することを支援

地域のレジリエンス(回復力) 向上の支援も

テントの学校で授業を受ける女の子。
© UNICEF/NYHQ2014-0123/Giacomo Pirozzi
レイテ島のテントの学校で授業をうける3年生の女の子。

報告書は、さまざまな取り組みをしてきたものの、復興への道のりは長いものになることを指摘。今回の災害から被災地が復興するには、数年がかかるとしています。感染症の集団感染や学習機会の喪失や損失、暴力や搾取、虐待の危険が高まり、女性と子どもが栄養不良に陥るリスクがあるなど、直近でもさまざまな問題が子どもたちの前に立ちはだかっています。

ユニセフとパートナー団体は、緊急の人道支援や必要不可欠なサービスの復旧と合わせて、被災した地域のレジリエンス(回復する力)を向上する支援に力をいれてきました。支援にあたっては、最も支援を必要とする子どもたちと最も被害の大きかった40自治体を中心に行われています。ユニセフは、政府の関係省庁、市民社会、地域社会とともに、被災した地域で最も厳しい状況に置かれている人たちに支援を届けるしくみをつくっています。

アリム代理代表は「今回の大災害に寄せられた世界中からの支援に深く感謝しています。ご支援のおかげで、さまざまな取り組みが可能となり、子どもたちの命を守ることができました。フィリピンの方々自身の不屈の精神と懸命な取り組みと世界中から寄せられたあたたかいご支援によって、4カ月の間に、多くのことが実現しました」と述べました。

「子ども自身が強さと生活を取り戻すには、時間が必要であり、持続的な取り組みが求められます。ユニセフは、復興へのあらゆるプロセスを通じて、被災した子どもたちを支援し続けます」と続けました。

支援向上のためのモニタリングと調査を継続

「子どもにやさしい空間」の前で遊ぶ女の子。
© UNICEF/NYHQ2014-0121/Giacomo Pirozzi
タクロバンに設置された「子どもにやさしい空間」の前で遊ぶ女の子。

ユニセフは、台風30号への取り組みとして支援状況のモニタリングを強化しており、人道支援パフォーマンス監視情報システム(Humanitarian Performance Monitoring Information System:HPMIS)を開発しました。本システムでは、支援物資の供給状況を入力、パートナー団体への物資の配布を追跡、その取り組みをモニターし、支援の適切さや質、支援を受けた人の満足度などの情報が把握できます。

2013年12月以降、地域や避難所にいた7,200世帯以上に、水とトイレ、衛生、教育、保健、子どもの保護、栄養などの人道支援サービスについて調査を実施。さらに、最も被害の大きかった40自治体の情報が現在集められています。

* * *

■参考情報:4カ月間の取り組み

  • <水と衛生>
  • 貯水用の資材や浄水用の物資の配布などを通じて、93万人が清潔な水の利用が可能に
  • 7万6,000人以上がトイレの利用が可能に
  • 沿岸部での子どもの病気、特に下痢を防ぐために、学校で23万1,000人以上の子どもに衛生用品を提供
水を汲む男の子。
© UNICEF/NYHQ2013-1217/Jeoffrey Maitem
水を汲む、最も甚大な被害を受けたタクロバンに住む男の子。
  • <教育>
  • 被災地で子どもたち43万人に学用品を提供
  • 15万3,000人近い子どもたちに通学かばんを配布
  • 学用品や教材などを備えた「仮設学習スペース」1,320カ所を設置し、約13万2,000人の子どもたちが参加
  • <保健>
  • はしかが確認または疑われた避難所や地域など最も危険性の高い場所に重点を置いて、5歳未満の子ども8万3,200人にはしかの予防接種、8万2,100人にポリオの予防接種を実施
  • 災害に強い(disaster-resilient)アプローチに重点を置く一例として、電力不足による混乱を避けるために太陽光発電によるワクチン保冷庫を50の保健センターに設置
  • <子どもの保護>
  • 被災地に89の「子どもにやさしい空間」を設置、約1万7,000人の子どもが利用
  • 遊びやレクレーション活動、学習を通じて子どもたちの心の回復を支援
  • 教員が子どもたちの心のケアができるように研修を実施
  • ソーシャルワーカーや養育者など350人以上に子どもの心のケアや暴力、搾取、虐待、人身売買を予防するために必要な子どもへの支援について研修を実施
  • <栄養>
  • はしかの予防接種と並行して、5万5,300人に免疫力を高めるビタミンAを投与
  • 9万7,000人の栄養状況を調査
  • 「母親にやさしい空間」を52カ所設置、これまでに1万799人の妊婦や授乳期の母親が利用
  • 「母親にやさしい空間」では、母乳育児や離乳食の相談も受け付け
  • 重度の急性栄養不良の子ども6,000人に栄養治療食による治療を提供