世界のニュース(2)

〜世界の子どもたちも運んだ聖火〜
思いよ届け!アテネ・オリンピック

 いよいよアテネ・オリンピックが8月13日からはじまります。日本選手の活躍も気になるところですが、オリンピックはスポーツを通じて平和をうったえるお祭りでもあります。

 オリンピックが開かれるのに先だって、オリンピック会場にともされる聖火が世界をかけめぐりました。平和を進めるユニセフのパートナーであるIOC(国際オリンピック委員会)は、ニューヨーク(アメリカ合衆国)、モスクワ(ロシア)、リオデジャネイロ(ブラジル)、ストックホルム(スウェーデン)で、ユニセフが推薦する子どもや若者たちに聖火を運んでもらおうと提案してくれました。

 6月には、オリンピック聖火がはじめてニューヨークの国連本部へやってきましたが、そこではユニセフが推薦した2人が聖火ランナーに加わりました。
 そのひとりはトニ・ジョーンズさん(18歳)。彼女は西アフリカの国、リベリアの首都モンロビアで生まれました。1990年におこった内戦で家を追われ、ユニセフが支援する難民キャンプで3年間暮らしました。その間に、8歳だったトニさんの友だちは、ゆうかいされ、子どもの兵士にさせられたそうです。そして、戦争のなか、その友だちはなくなったといいます。今、トニさんはリベリアの元子ども兵士のためのセンターを建て直すプロジェクトに参加しています。大学を卒業したら、リベリアにもどり、食料のビジネスをはじめ、開発途上国の支援をしたいと夢を語ります。

聖火ランナーになったセルゲイくん

 モスクワで聖火を運んだのは、セルゲイ・パブロフくん(16歳)。彼は、お父さんが家を出ていなくなってしまい、アルコール中毒で苦しんだお母さんが亡くなってから、子どもたちのためのセンターで暮らしています。孤児や緊急の支援を必要としている子どもたちをひろく受け入れているこのセンターは、ユニセフと協力しながら運営されています。ロシアでは、多くの親たちが失業やアルコールの問題に直面し、その子どもたちが厳しい暮らしを強いられています。サッカーが大好きなセルゲイくん。彼のチームは2004年の地域大会で優勝しました。「暴力は大嫌いだよ。すごく大変だったときに助けてくれた人たちには本当に感謝しています」と話します。

聖火を持って走るヌビアさん。

 リオデジャネイロで聖火を運んだひとりは、ヌビア・オリベラ・シルバさん(19歳)です。彼女は、今、児童労働をなくそうと活動しています。ヌビアさんは8歳のときから学校に通いはじめましたが、同時に、サイザル畑でも働きはじめなければなりませんでした。畑の仕事はとてもきつかったうえに、学校は片道1時間も歩かなければならないところにあったので、つかれはてて授業どころではありません。だんだんと学校は二の次にされていきました。幸運なことに、ヌビアさんは13歳のときに、労働を強いられている子どもたちを学校に通わせるようにするためのユニセフと国のプログラムの支援を受けられるようになりました。ヌビアさんは、教育やトレーニングを受け、今、将来は先生になりたいと考えています。聖火ランナーに選ばれて大興奮のヌビアさん。これまで村をはなれてそんなに遠くまで旅することはなかったそうです。

 世界各地でいろいろな苦しい思いを抱えて生きる子どもたち。ヌビアさんは、「私には子ども時代がありませんでした。子どもは学校に行き、遊ぶべきなんです」と話します。オリンピック会場でともされる聖火には、そんな子どもたちの平和な世界への思いもこめられました。

このオリンピックでは、“1000 Wishes for the Children of the World (世界の子どもたちへ千の願い)”と名づけられたプログラムで集められた世界各国の子どもたちの絵がかざられる予定です。子どもたちは、支援を必要としている世界の子どもたちへの自分の思いを絵に描きました。ドイツではじまったこのプログラムは、アメリカ、ブラジル、南アフリカなどをまわり、アテネに行く前に日本にも来て、日本の子どもたちの絵もこの中に入れられる予定です。布に描かれたそれぞれの絵は巨大な1枚の絵にまとめられて、アテネ・オリンピックに登場します。

リオデジャネイロで絵を描く子どもたち。