世界のニュース(1)

〜学校を標的にするのは戦争犯罪!〜
ベスランの子どもたちの悲しみとユニセフの怒り

9月のはじめにロシア・北オセチア共和国、ベスランで起きた事件に世界はこおりつきました。テロリストが、1000人以上の人質をとって学校にたてこもったのです。人質の多くは子どもたちでした。まる2日間以上、食べ物も飲み物も与えられないまま、最後には、しかけられた爆弾が爆発して、338人(そのうち子どもが145人、9月6日現在)が命をうしないました。

2人の娘を失ってしまったファティマ・テトヴァさん。

テトヴァさんはふつうのお母さんでした。13歳のイリーナと12歳のアリーナ。テトヴァさんの2人の娘は、この事件で命を失いました。残されたのは、途方もない悲しみと、思い出、そして写真だけ…。

「ユニセフは、この事件に激しく怒っています。ロシアで起きたこの事件はもちろんのこと、世界中で学校や通学路が子どもたちに安全な場所になっていないことに」。ユニセフの“子どもの保護”部門のスタッフ、パメラ・シフマンは、その怒りをかくしません。

「学校を標的にするなんて、戦争犯罪です。戦争のときに、決して子どもがねらわれるようなことがあってはならないのです。学校をねらうなんて、人類すべてをおとしめるようなことです」

ユニセフはこの事件のすぐ後で、ベスランの病院のようすをしらべ、不足していた医薬品などを緊急に届けました。

また、この事件で、あまりにも恐ろしい思いをし、強いショックを受けている子どもたちの心の傷をなおすための支援活動もはじめられました。

事件が終わっても恐ろしい記憶が消え去ることはありません。ユニセフの紛争下の子どもたちについての上級アドバイザーをつとめるマニュエル・フォンテインさんは、こう話します。

「今回、もっとも大変なのは、この地域全体がこの事件でひどくショックを受けていることです。傷ついたのは子どもだけではありません。この事件に巻き込まれた地域全体の人々が同じように傷ついています。小さなコミュニティで、いっぺんにこれほど多くの人が、ひどい状況の中で亡くなったのです。人々がそのショックから立ち直るには長い時間が必要です。子どもたちを助けなければならないことは言うまでもありませんが、同時に、親や先生、そして、すべてのおとなたちにも立ち直ってもらえるようにする必要があります」。

子どもたちの犠牲を無にしないために、私たちには何ができるのでしょうか?

どんな理由があっても、どんな争いであっても、子どもたちは“安全なとりで”にならなければなりません。そうでなければ、私たちは私たちの未来そのものを失うことになってしまうのですから…。