ユニセフ協会トップページ ユニセフ子どもネット入口
ユニセフ子どもネットウェブマガジン
No.
目次に戻る

世界の子ども物語

早期結婚が女の子の学習機会を少なくする 
〜スーダン南部地域で今起こっていること〜

突然ですが、『子どもたちが学ぶ機会を失う原因』にはどのようなものがあると思いますか?
前回のWEBマガジンで紹介したカンボジアのセンさんは、病気の母親に代わって畑で働いたために学校に行けなくなってしまいました。その他にも、HIV/エイズで家族を失ったために学校に行けなくなる子どもも世界にはたくさんいます。
そして、今回取り上げるスーダンの女の子ジャクリンさんも、学校に行く機会を今にも失いそうな子どもの一人です。ジャクリンさんは、どうして学校に行けなくなりそうなのでしょうか?

≪ヤンビオ女子中等学校での出来事≫

女の子たちは頭を教科書の上に伏せながら、外から聞こえる怒っている声を警戒しながら聞いています。

ここは、アフリカ大陸にあるスーダンという国の南部に位置する、ヤンビオ女子中等学校。この学校に通うジャクリンさん(18歳)は、こう話しています。

「ここの住民は、女の子がこの学校に隠れていると考えているみたいで、男の人たちは学校の近くまで来て私たちに向かって叫ぶのです。なぜなら住民は、女の子は勉強するのではなく早く結婚した方がいいと思っているからなんです。」

<スーダンにおける早期結婚の慣習>

 この地域の女の子の親たちは、いろいろな理由から、女の子を早く結婚させることを選びます。その理由には例えば次のものがあります。

  • 貧しい家庭では、幼い女の子を経済的負担と見なしているためか、彼女たちの結婚を家族の生存のために必要な手段と考えることがある。
  • 女の子の親たちはしばしば、早期結婚は、彼女たちを性的暴力の危険から守ってくれると考えている。
  • 女の子たちが望まない妊娠をしないための策として、早期結婚を選ぶこともある。

 スーダン南部では、学校で勉強する女の子よりも結婚する女の子の方が多く、若い女の子の5人に1人は、既に母親になっています。
 早期結婚は、子どもにとって良くない結果をもたらすことがあります。それは例えば、健康の問題であったり、結婚相手による虐待、教育を受ける権利を認めてもらえないことなどがあります。一度結婚してしまえば、女の子の多くは学校に戻ることができません。

 ほとんど全ての早期結婚のケースにおいて、結婚生活の始まりは、教育の終わりを意味しています。

「住民は、女の子の教育はただ時間を無駄にしているだけだと言っています。」と、中等教育を受ける数少ない女の子の内の1人、ジャクリンさんは話しています。「私がもし結婚したとしたら、夫は私を学校には行かせてくれないでしょう。」

≪女の子を学校に行かせるための支援≫

 ユニセフはこの地域で、2002年より200校を超える女子学校の建設プロジェクトを他の機関と協力して実施してきました(参考資料1)。その目的は、より早く基礎教育を普及させること、幼い女の子のために「保護環境(注1)」を提供すること、そして、女の子たちが通常の学校で学習を継続できるようしっかりと準備させることの3つです。

 
 女子学校で学習する生徒    女子学校の外で行われた授業風景

これらの学校の授業日程は固定されていないため、女の子の両親の間でも支持されています。また、食べ物の配給もあるために出席率も高くなっています。

≪安全な学校 〜女の子のための優先事項〜≫

 スーダン南部地域では、女性9人の内1人は、妊娠や出産が原因で亡くなっています。地域の先生の内、たった7%が女性の先生です。そして、女性の10人の内9人は字を読んだり書いたりすることができません。

12歳ほどの女の子たちは、だいぶ年の離れた男性たちと強制的に結婚させられることがあります。18歳ほどの子どものいない独身の女の子は、よく「結婚適齢期を過ぎた」と嫌がらせの言葉を言われます。

ヤンビオ女子中等学校では、食べ物が不足し、教師も訓練不足です。そして中等教育を受ける数少ない女の子の1人のジャクリンさんは、学費を払うために市場でお茶を売ることに必死になっています。

しかし、ジャクリンさんが一番恐れていることは強制や暴力です。「何があれば学校はより良い場所になりますか?」と質問すると、ジャクリンさんは、「私たちには、結婚したくないときに私たちを守ってくれる、強いフェンスが必要です。」と、ためらいながら話してくれました。

スーダンだけではなく、多くの国や地域で女の子の学習機会が失われそうになっているんだね。スーダンと日本では、教育状況だけでなく他にもいろいろな違いがありそうだね。

 
 

スーダンと日本、そして世界の国々の違いについて、ユニセフがまとめた統計資料があるみたいだよ。資料を比べてみて、違いを見つけてみよう!

世界の国々の統計資料

 

参考資料1  『スーダン南部地域プログラム2004』

 ユニセフは、一部屋の女子学校を村々の近くに建設することを支援しています。このことによって、スーダン南部地域にいる多くの学校に通っていない女の子に基礎教育を普及させるとができます。ユニセフは、2004年の終わりまでに、1万人の女の子に学んでもらうように300校を建設する計画を立てました。スーダン南部地域では近年、100人の女の子のうち1人しか初等教育を終えていないという現状があったからです。

学校建設に取り組む女性たち

女性が学校の屋根となるわらを積み上げています。スーダン南部地域の女性の多くは字を読んだり書いたりすることができません。そして、学校へ通う機会もない人が大勢います。
そういった事情もあり、現在建設されている学校は、建設途中でも開校して、多くの女の子が学んでいます。


教室で学ぶ女の子たち

男性教師が書いた算数の問題を解いている女の子たち。スーダン南部では、このような女子学校が数多く建設され、今まで学校へ行けなかった女の子が学ぶ機会を得られるようになってきました。


女子学校で学ぶ少女

建設された学校で、女の子が黒板で字を学んでいます。


参考資料2  『スーダンの女子教育スライドショー』

ユニセフニューヨーク本部のウェブサイトに、スーダンの女子学校の スラードショーが掲載されていたよ。クリックしてのぞいてみよう! 

スーダン スライドショー

<写真の説明>

最初の写真:女子学校で勉強している生徒の写真。
1枚目:学校の教室が狭いため、生徒は全授業の半分は外で勉強しています。
2枚目:水運びの仕事をしている女の子たち。このために学校に行けない子どももいる。
3枚目:学校の建設に取り組んでいる村人。
4枚目:学校の窓から娘たちの様子を見つめる女性たち。
5枚目:外で休憩する子どもたち。
6枚目:使われている教材の写真。
7枚目:教室で学ぶ女の子と先生。この地域では、何年間も同じ先生のもとで学びます。
8枚目:勉強したことを練習するノートの写真。
9枚目:建設された学校で行われている授業風景の写真。
10枚目:地元の女の子の写真。女の子は徐々に学校に通えるようになってきています。


参考資料3 『早期結婚に「NO」と言おう 〜海外情報 ニジェール〜』

 西アフリカの内陸国であるニジェールは、シエラレオネに次いで世界で最も貧しい国の一つです。 ユニセフの統計によると、子ども1000人あたり280人が5歳になる前に死亡しています。 国の人口900万人のうち、読み書きのできる人はわずか10%程度。女の子の84%が15歳以前に結婚しているというデータもあります。ニジェールでは、母親のお腹の中にいる子どもの結婚相手を親が決めてしまうこともあります。

早期結婚の伝統

 早期結婚という伝統が続く理由の一つには、女の子が未婚のまま妊娠することを、家族が恥ずかしいこと、不名誉なことと考えるからです。昔は幼い時に結婚しても、体が成熟するまで義理の母親と暮らすだけで、実質的な夫婦にはなりませんでした。しかし、最近では、こうした伝統が無視されています。例えば、12歳で結婚し、すぐに夫と共に暮らし、子どもを産むことがあります。あるいは、もっと若い子が結婚・出産することもあります。

早期結婚がもたらす問題の一つ、教育機会の喪失

 早すぎる結婚は、女の子から教育の機会を奪うことにもなります。教育を受けていない女の子は、妻あるいは母親になったときに、生活や育児に必要な最低限の知識や情報を身に付けることができません。医療・保健・衛生・栄養などの社会サービスへのアクセスができない可能性もあります。

子どもたちの声に耳を傾けて

 「私たち、この地域の女の子たちから、親たちに対してお願いがあります。早く結婚させないでください。そして、勝手に結婚相手を決めないでください。」

 早期結婚が伝統となっている地域では、このような意見を持つ女の子が多くいます。ユニセフは、地域の住民と協力し、問題の解決に取り組んでいきます。    



*注1 「保護環境」

世界には、強制的に結婚させられたりする子どもがいるみたいだね。そういった子どもを守るための「保護環境」というのは、どういうものなのかな?ユニセフ本部のウェブサイトに、次のように紹介されていたよ。一緒に勉強してみよう!

 子どもは、保護される環境において発育する権利を持っています。ユニセフは、良質の保健と十分な栄養が子どもを病気に強くするように、虐待に対し子どもを強くする「保護環境」の構築を手助けします。この保護環境を作ることは、子どもを虐待などから守る最も良い方法です。

ユニセフは、意識の向上と、政府や社会の様々なレベルにおける保護能力の向上によって、これを実行します。保護環境は、子どもや保健員から政府、市民セクターに至る全ての人々が、子どもが虐待や搾取から確実に守られるよう、それぞれの責任を果たしながら生活していく場です。

ユニセフの取り組みは、子どもの権利に関する国連会議で提示されたように、全ての子どもは保護される権利があると認識しています。ユニセフは、それらの権利を尊重するため、政府・家族・コミュニティ・個人の義務についての注意を引き起こし、その義務を実行できるよう支援します。さらには、子どもや青少年自身が、彼ら自身の保護のために活動的な役割を担い、他の人々の保護を主張することができると考えています。

ユニセフは、保護環境の8つの主要な側面を識別しています。

姿勢・伝統・慣習・行動・実践  
保護の権利を充足するための政府の取り組み  
保護のための法律制定とその施行  
開かれた論議と、子どもの保護問題への関与  
子どものライフスキルや知識、及び参加  
子どもの保護問題に関する調査と報告  
復帰と再統合のためのサービス  
子どもの保護のための能力  
ページ上へ