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ユニセフ子どもネットウェブマガジン
No.19
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世界の子ども物語

『世界の子どもたちの今 
〜ユニセフの取り組みとミレニアム開発目標〜』

みなさんは海外旅行に行ったことがありますか?日本では味わえない楽しい経験や、美しい景色に感動した人もいるかもしれませんね。世界にはたくさんの人々が住み、たくさんの文化が存在しています。しかし、一歩日本を飛び出してみると、世界にはいろいろな問題が存在していることに初めて気がつく人も多いのではないでしょうか。現在の世界がどのような問題を抱え、そして国際社会がその解決に向けどのように活動しているのか、今回のウェブマガジンで世界の現状を学んでみましょう。


目次

1. 世界の現状と課題

2. 国際社会の取り組み(ミレニアム開発目標)

3. ユニセフの取り組み


1. 世界の現状と課題

 世界には様々な問題があります。食糧不足、汚れている飲料水、紛争等による難民、栄養失調、教育を受けられない子ども、児童労働、HIV/エイズ、人身売買、自然災害などの問題は、特に開発途上国の子どもに被害を与えています。

(1)貧困と飢餓の問題 (アフリカ・マラウイの事例)

写真

 2002年、食糧不足や自然災害(洪水など)により、食糧の値段が上がり、飢えや栄養不足がマラウイで発生しました。バキリ・ムルジ大統領は「マラウイがかつて経験したことがない食糧不足」だとして「災害による非常事態宣言」を出しました。食糧不足が原因で亡くなった人の数は分かりません。しかし、人々にインタビューをしていると、「何日も食べていない」という人がほとんどでした。子どもの50%近くは、食べ物がないので学校にも行けませんでした。

栄養不良の子どもを抱く母親たち

(2)教育の問題 (南アジア・パキスタンの事例)

7歳のナジマ。学校で パンジャブ地方にあるマリアンワラ・チャクに住む7歳の女の子、ナジマの父親は日雇い仕事をしています。数年前、彼は、一家全員を引き連れて、先祖代々が暮らしてきた村からマリアンワラ・チャクへ移ってきました。理由は、その村には学校がなかったから…。
 ナジマは、マリアンワラ女子小学校の2年生です。全員分の教科書もなく、2、3年生は同じ教室で学んでいます。とても整った学校とは言えませんが、ナジマはここで頑張って勉強しています。
特に開発途上国の農村では、大きな家族ほど、家族全員が働く必要に迫られます。子どもでも1日に2〜3米ドル(数百円程度)を稼ぎます。5人の子どもがいれば、1カ月に300米ドル(3万円以上)ほどの収入になります。そのため、学校を途中でやめる子どもが多いのです。
 でも、ナジマは「他の子みたいに、学校を途中でやめたくない」と強く言います。ナジマには夢があったからです。「大きくなったら看護師になりたいの。学校に行けなくなったら看護師にはなれないから…」


(3)HIV/エイズの問題 (アフリカ・ボツワナの事例)

 南部アフリカの国々では、ここ10年間で平均寿命が10歳も短くなるほど、エイズが流行しています。国連人口局によると、南アフリカ共和国の北に隣接するボツワナでは近年、エイズの急速な広まりで、平均寿命が56.3歳(1995‐2000年)から39.7歳(2000-2005年)に低下しています。
 HIV(エイズウィルス)が広まることで、母から子どもへの感染(母子感染)や若者のHIV感染者が増加します。ユニセフによれば2003年までにエイズで親をなくした15歳未満の子どもは1500万人に達しました。そのうちの多くが南部アフリカの子どもたち。こうしたエイズにより親を失った子どもは、2010年には2000万人に上ると予測されています。
 子どもたちの親を奪い、生活に影を落とすエイズ。子どもたちを守るとともに、更なる小さな犠牲者を出さないよう、迅速な対応が求められています。


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2. 国際社会の取り組み

 世界には、いろいろな課題・問題があります。それらの問題の中には、地球環境問題に代表されるような、もはや一つの国だけでは解決できない問題もあります。
 世界に存在する多くの問題の解決に向けて、国際社会は2000年に「国連ミレニアム宣言」を採択しました。このミレニアム宣言が求めていることは、世界の平和、安定、平等、公正などです。
 そして、国連ミレニアム宣言と1990年代に開催された主要な国際会議やサミット(子ども、地球、社会、女性サミット等)で採択されたものが、「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)です。MDGsは、国連と全ての開発パートナーが連携して取り組まなければならない課題であるとされています。
 ミレニアム開発目標には8つの具体的目標があります。そして8つの目標には、2015年という達成期限と具体的な数値目標が定められています。

(1)極度の貧困と飢餓の撲滅

ターゲット1:2015年までに1日1ドル未満で生活する人口比率を半減させる。
ターゲット2:2015年までに飢餓に苦しむ人口の割合を半減させる。


(2)普遍的初等教育の達成

ターゲット3:2015年までに、全ての子どもが男女の区別なく初等教育の全過程を終了できるようにする。


(3)ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上

ターゲット4:初等・中等教育における男女格差の解消を2005年までには達成し、2015年までに全ての教育レベルにおける男女格差を解消する。


(4)幼児死亡率の削減

ターゲット5:2015年までに5歳未満児の死亡率を3分の2減少させる。


(5)妊産婦の健康の改善

ターゲット6:2015年までに妊産婦の死亡率を4分の3減少させる。


(6)HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延防止

ターゲット7:HIV/エイズの蔓延を2015年までに阻止し、その後減少させる。
ターゲット8:マラリア及びその他の主要な疾病の発生を2015年までに阻止し、その後の発生率を下げる。


(7)環境の持続可能性の確保

ターゲット9:持続可能な開発の原則を各国の政策や戦略に反映させ、環境資源の喪失を阻止し、回復を図る。
ターゲット10:2015年までに、安全な飲料水を継続的に利用できない人々の割合を半減させる。
ターゲット11:2020年までに、最低1億人のスラム居住者の生活を大幅に改善する。


(8)開発のためのグローバル・パートナーシップの推進

世界各国と開発に携わる機関や団体は、これらの目標の達成に向けて、協力し行動しています。


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3.ユニセフの取り組み

ミレニアム開発目標の達成に貢献するため、ユニセフは以下の5つの分野に取り組んでいます。

(1)女子教育

 女子教育は、女の子と次世代の子どもたちに大きな影響を与え、女の子と女性たちに多くの夢をもたせます。妊産婦の死亡、出産時の死亡を防ぐことができ、教育を受けた女の子が母親になれば、子どもたちの栄養を考えるようになり、子どもたちは健康に育ちます。また、家族の収入が増え、早すぎる結婚を免れ、一人あたりの出産数が減ります。女性の社会参加が促進され、女の子と女性の持つあらゆる権利が尊重されるようになります。 

■現状

世界で、初等教育就学率は男子が87%で女子が82%でした。(1998-2002)このような教育での男女格差が、成人の識字率男性85%、女性74% (2000)という結果を引き起こしてしまいます。

■ユニセフの目標

(1) すべての女子が学校に入学すること
(2) すべての女子が学校に通えること
(3) すべての女子が適切な教育を受けていることを保障する

■ユニセフの取り組み

ユニセフは、女子差別のない教育の推進、「箱の中の学校」(school-in-a-box)のような教育物資の提供、子どもが学校に通い続けられるように、と「バック・トゥ・スクール」キャンペーンの実施、「子どもにやさしい」学校作りなどを行っています。


(2)乳幼児総合ケア

 子どもたちが「最良のスタート」を切ることは、子どもの持つすべての権利を満たすための土台になります。健康に生まれ、健康に発育した子どもは病気にかかりにくくなります。そして、思考・言語などの能力を発達させ、社会の一員として、楽しい学校生活やそれからの幸せな人生を過ごせるようになります。

■現状

 2003年、およそ1億3,300万の子どもが生まれましたが、この年、5歳の誕生日を迎えることなく約1,065万人(約8%)の子どもが亡くなりました。

■ユニセフの目標

  1. 質のよいサービスの提供:保健、栄養、水と衛生環境
  2. ケア知的刺激、子どもの保護
  3. 3歳未満の子どもを中心としたアプローチ
  4. 家庭での育児ケアの改善
  5. 家庭、コミュニティが質の良いサービスへのアクセスが可能で適切な生活を送れること
  6. 男女平等の促進と、女性の権利の尊重

■ユニセフの取り組み

 ユニセフは、病気の予防と治療、母乳育児の促進、安全な飲み水の提供、トイレなどの衛生状態の改善など、総合的な乳幼児ケアに取り組んでいます。


(3)予防接種“プラス”

予防接種と微量栄養素補充をすることで、何百万人もの子どもの命がたすかります。子どもたちが、たとえ困難な状況にあったとしても、ワクチンに「プラス」して栄養素補充が利用できるように、そしてすべての人の健康状態によい影響をもたらすように。
予防接種は、家庭やコミュニティの育児習慣を助けます。保健システムを強化することで、子どもたちの病気の発症を防ぐことができるのです。

■現状

 2003年、ポリオの予防接種を完全に受けた1歳児は世界の79パーセント、はしかは77パーセントでした。

■ユニセフの目標

(1) 予防可能な死や障害から、すべての新生児と5歳未満児を守る
(2) 乳児疾患のまん延防止
(3) 乳児期に必要なワクチンをすべての子どもに提供する
(4) 予防接種「プラス」をその他の保健システム強化への第一歩とする

■ユニセフの取り組み

ユニセフは、予防接種キャンペーンをしながら、マラリアの感染を防ぐための蚊帳や、ビタミンAの配布活動も行っています。


(4)HIV/エイズ

■現状

世界には、HIV/エイズと共に生きている人がおよそ3,800万人います(2003年)。
そのうちの210万人が0歳から14歳までの子どもたちです。

■ユニセフの目標

  1. 若年層の感染リスクの削減
  2. 母子感染の予防
  3. HIV/エイズに感染した子どもと両親へのケア拡大
  4. エイズで両親を失った子どもの保護とケアの保障

■ユニセフの活動

ユニセフは、若者向けのエイズに関するウェブサイトや出版物を通じて正しい知識を広めて感染を予防すること、他の機関や組織と共同でエイズで親を失った子どもの保護とケアプログラム、母子感染予防の薬の配布などを行っています。


(5)子どもの保護

 「子どもの保護」は普遍的で不可欠な原則であり、すべての子どもが持つ権利です。暴力、虐待、放置、そして搾取はそれぞれの成長過程において子どもを脅かします。子どもと若者はおとなよりも傷つきやすく、無視されやすく、虐待や搾取の対象とされやすいのです。子どもの生存や完全な発育は危険にさらされてしまいます。子ども対する暴力は、学校や家庭、コミュニティなど多くの場で見られます。

■現状

今日、最悪の形態の児童労働に従事している子どもは1億8,000万人、人身売買の犠牲となる子どもは年間120万人にものぼると推定されています。

■ユニセフの目標

  1. 子どもに対する暴力をなくす
  2. 児童労働をなくす
  3. 家庭およびコミュニティを基盤としたケアを提供する
  4. 武力紛争下の子どもの保護を強化するあらゆる形の差別をなくす

■ユニセフの活動

ユニセフは人身売買根絶の国際協力を呼びかけたり、子ども保護団体や地域社会とネットワークを構築して、被害を受けた子どもたちの保護、ケアを支援したりしています。

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