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No.24
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世界のニュース(1)

すべての子どもを登録しよう!
〜フィリピンですすめられている出生登録〜

2006年2月20日、フィリピン・レイテ島でおこった地すべり災害。今も救援活動がつづいています。そのフィリピンでは、すべての子どもたちを出生登録するため、じみちな活動がつづけられています。出生登録はどうして大切なのでしょうか。そして、実際にどのような活動がおこなわれているのでしょうか・・・。

マニラの郊外にある、ムスリムの人びとがすむマハリカ村に、アッシャー・スルタンさん(写真の左から2番目)が子どもたちを登録するためにやってきました。

その日は、アッシャー・スルタンさんと子どもたちにとって、とても大切な日となりました。フィリピンのすべての子どもたちを登録しようという活動に参加するため、アッシャーさんは家族で、マニラ郊外にある臨時(りんじ)につくられた出生登録センターにやってきました。

スルタンさんはこう話します。「子どもたちを生まれたときに登録したかったけど、どうやったらいいのかわからなかったの。子どもたちが将来学校に入学するときに問題がおこらないように、子どもたちを登録したかったのよ」。

多くのフィリピンのおとうさん、おかあさんたちも、スルタンさんとにたような問題をかかえています。もし出生証明書がなかったら、子どもたちの名前、年齢、親子の関係、民族を証明できないのです。子どもたちが成長したときに、教育をうける権利や、社会サービス、医療面のケアや保護を受ける権利…。ほんとうなら当然の権利が守られなくなってしまいます。そして、今も、およそ230万人近くの子どもたちが、まだ出生登録を受けていないといわれています。

◆すべての子どもたちを登録するために…

世界では、毎年、中国をのぞく開発途上国に生まれる、半分の赤ちゃんが、出生登録をされていないといわれています。アジアや太平洋地域では、登録されていない子どもたちが数千万人います。

マハリカ村での出生登録のようす

アジアでの出生登録を難しくさせているおもな理由は、出生登録をすることは、基本的な権利をまもるためなんだという意識が、人びとにたりないからです。「おざなりにされてしまううえ、貧しさや飢えといった大きな問題とくらべると、あまり大切なことではないと考えられてしまうことがたびたびです」。こう話すのは、ユニセフのパートナーであるNGO「プラン」のアドバイザー、ミン・ヴィアドさんです。「政治的な意思がたりていないことや、紛争や戦争、民族や性別による差別もまた、出生登録の障害になっています」。

この週、出生登録にかんする4回目のアジア太平洋世界会議が、バンコクでひらかれました。この会議ではユニセフとそのパートナーであるNGOのプラン・インターナショナルが、26のアジア太平洋諸国の出生登録のようすをとりあげて、政府と国際専門機関がもつ出生登録にかんするこれまでに行ってきたことや、問題になったことについて、情報を交換しました。

「私たちが実現したいことのひとつに、災害などの問題がおこったときに、おたがいにどうしたら問題を解決できるかを相談できるようなしくみをそなえた、出生登録のネットワークをととのえることです」。とフィリピンの戸籍を担当している、カメリタ・エリクタさんがこたえました。

◆「存在しない子どもたち」の話

マニラのダウンタウンに夜がふけると、つらい生活をしいられているたくさんの子どもたちが道にあつまります。おおくの子どもたちは、出生登録をしていません。そのなかのひとり、16歳のショーヴェイ(本当の名前ではありません)さんは、1年前メイドとして、マニラに売られました。友だちや地元の自治体の協力で、やっと保護センターに避難をしました。この保護センターは、NGOによって運営されていて、ショーヴェイとおなじように人身売買された子どもたちをまもるためにつくられたものです。

ショーヴェイは、保護センターで、からだにいくつもあるアザの治療をうけました。保護センターでの最初の2〜3週間は、さけんだり、相談員がカウンセリングに近づくたびに、けったり、かみついたりしていました。今では、ストリートですごしたつらいことを思い出すと、涙をこぼします。

ユニセフ・フィリピン事務所で子どもの保護官として働くファローさんは、こう話します。「存在しない子どもたちがいます。もしその子どもたちが登録されていないとすると、彼らは書類のうえでは『存在していない』ということになります。登録していない子どもたちは、人身売買のブローカーたちにねらわれやすくなります。早い結婚や、児童労働、子どもの兵士や紛争から子どもたちを法律で守るために、子どもの年齢がわかることが重要です。年齢がわからなければ、おとなとして処罰されるのです」。

ユニセフとそのパートナーの支援で、ショーヴェイは今登録の手続きをしています。「私が生まれたことを証明できるおかげで、家にも帰ることができるし、学校に通って、看護婦になるための勉強だってできるの」顔をかがやかせて話します。

「出生登録は、世界にまだたくさんいるショーヴェイのような子どもたちを救うことができる、大切な対策なのです」と、ユニセフのスタッフは話しました。

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