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No.28
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世界のニュース(3)

女の子にも教育を(トルコ)
〜一軒ずつ家庭をおとずれ
女子教育の必要性を説明するボランティアたち〜

みなさん、新学期ははじまりましたか? 日本では男の子も女の子も、すべての子どもに教育を受けさせることが憲法で義務付けられています。子どもは誰もが教育を受けられるよう権利が保障されているのです。けれど、世界では学校にも行けず、教育も受けられない子どもたちがたくさんいます。ユニセフの調べでは、就学年齢の子どものうち、小学校に通っていない子どもは1億1500万人、その過半数は女の子です。子どもたちがおとなの都合で教育を受けられないことがないように、様々な取り組みが行われています。

© UNICEF I NYHQ/2005/Beck
バンに住んでいる女の子。バンでは学校への子どもの出席率は高くない

トルコでは、小学校における女子の就学率(学校へ通う子どもの割合)は69%です。しかし、大規模な教育システムの改善によって、2003年から学校に通っている子ども合計より多い50万人以上の子どもが入学しました。そのうち、175,000人が女の子でした。

“Hey Girls, Let’s Go to School,(女の子たちも学校に行こう!)”と名づけられたキャンペーンは、大規模なボランティアネットワークが一軒ずつ家庭をおとずれ、保護者に教育の重要性を理解してもらえるよう働きかけをおこないます。このボランティアネットワークは、様々な職業の人々からなりたっていて、署名活動を行いトルコの大統領夫人や首相など著名な政治家から、このキャンペーンの取り組みに対する支援を得ました。

トルコのバンでは全国キャンペーンが2年前から始まりましたが、今もなお貧困と伝統的な価値観のため“女の子は家にいて家事をするべき”とい考えが根強く残っています。そのため、東部の地方に住んでいる女の子の半分以上は、学校に通っていないと推定されます。しかし、このキャンペーンの結果、2万人の女の子が初めて学校に通えるようになりました。

© UNICEF I NYHQ/2005/Beck
地元のチェリック先生は、地元の家庭を訪れ、娘を学校に通わせるよう説得しています。

ある日、先生4人で編成されたボランティアチームがイラン国境付近の人里離れたバキンリ村を訪れたときのこと。子どもの就学リストを確認していくうち、ある家にたどり着きました。そこは、学校に通っていない8歳の女の子がいるといわれている家です。

このキャンペーンでは、親が入学手続きを継続して行っているか確認するため、ボランティアが各村を定期的に訪れます。彼らがこの家を訪ねたとき、娘の母親は返事はしたものの、玄関口に立っている4人を見て驚いてしまい、外には出てきませんでした。ようやくあきらめて、母親はあいさつもそこそこに、突然の来訪者のために椅子を用意しました。

「私の主人と兄はイスタンブールで働いているので、娘が学校に行けば、私は家に1人でいなければならず心配です。それに私は、娘が学校に通うべきだと思っていません」と彼女は言いました。

キャンペーンに共感してボランティアとして活動をしている、トルコ・バン出身のチェリック先生は言いました。「いたるところに行き説明を読んだりするのはあなたにとって大変でしょう。もしあなたの娘が教育を受けられたら、彼女がお金を稼ぎ、家に収入を入れてくれたり、母親であるあなたの面倒をみてもらえるのですよ」。

そしてチェリック先生は自分を例に説明しました。「私はここバンの出身です。私はここで育ちました。女の子も学校に行くことができれば、私のように先生にだってなれるのです」。 20分後、チェリック先生の力強い説得に母親は動揺していました。彼女はまだ、教育を受けることで、自分の娘が結婚の機会を逃してしまうのではないかと心配していました。村の宗教指導者のヤシンさんも、「学校に行けば、娘さんはより賢いお母さんになれますよ」と説得しました。

トルコの多くのイスラム教指導者と同様、ヤシンさんも金曜日の礼拝中に女子教育の大切さを訴えます。「学校に行くことは、女の子の権利なのです。女の子は教育を受けられなければなりません。イスラムは私たちにこのことを教えています」。

長く続く貧困と資源の不足によりトルコの教育システムは困難な状況が続いています。学校は数が少ないため、生徒が入りきれないほど集まります。都会のスラム街や地方では特にその状況はひどいものです。食べ物を手に入れるのもままならない家族にとって、学用品ですら十分に手に入れることはできないのです。

バンの地域ミーティングでは、キャンペーンのコーディネーターが教育の重要性を述べた演説に対し、女性たちの好意的な反応がありました。しかし、高校の校長先生でありボランティアの1人であるイルディバス先生が、子どもを学校に通わせるのは親の義務であると発言したところ、不満の声があがりました。

「私たちも学校に行かせてあげたいけれど、お金がないのです」母親の1人が言うと、つづけて他の母親も言います。「学校は遠くて通うには時間がかかり子どもには危険なのです」。

解決しなければいけない問題はまだまだありますが、キャンペーンを通じて、この状況を変えたいという願いが人々の中に芽生えてきています。バン女性支援団体の代表オックスゴックさんや他のボランティアによると、教育が全ての子どもに必要であるという考えは全員の共通意識となってきています。

母親たちに、子どもがどのように育ってほしいかと聞くと、「私のように」とは答える人はほどんどいません。「子どもたちに何が必要か?」と聞くと「教育」と答えます。

このキャンペーンの結果があらわれるには25年ぐらいはかかるでしょう。なぜなら、今このキャンペーンによって学校に通っている世代の子どもたちが、25年後、その成果をきっと見せて受け継いでくれるからです。

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