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ライブラリー 報告会レポート

ユニセフ・シアター 映画『はちみつ色のユン』上映会 ・ トークショーを開催しました

© Mosaïque Films - Artémis Productions - Panda Média - Nadasdy Film - France 3 Cinéma - 2012

2013年3月15日、第36回アヌシー国際アニメーションフェスティバル長編部門観客賞・ユニセフ賞受賞作品『はちみつ色のユン』(監督:ユン、ローラン・ボアロー)の上映会を開催しました。本作は5歳で祖国を離れ、ベルギーに養子として迎えられた少年が新しい人生を歩む中で対峙する葛藤や不安を描いた作品です。母親の愛情を求め続け、母親の愛情を確かめることで「自分の存在」を確かめようとした監督の青年時代を描いた作品でもあり、監督の過去の回想と現代のコントラストが「アニメーション」と「実写」で表現されています。

トークショー『子どもの幸せ』

上映会に先立ち「子どもの幸せ」をテーマにしたトークショーを開催。ゲストにはユニセフ職員としてガーナでの勤務経験があり、現在は日本ユニセフ協会東日本大震災緊急支援本部 心理社会的ケアアドバイザーとして当協会の活動を支えてくださっている臨床心理士・プレイセラピストの本田涼子さんをお招きしました。本田さんは幼稚園や保育園の先生方、子育て支援関係者など、子どもと接するおとなたちに向け、「遊びを通した心のケア」に関する講習会などを行い、未就学児を中心とした子どもたちの心のケアの活動をされています。

遊びを通じた心のケア

© 日本ユニセフ協会
実際におもちゃを使って子どもたちの"遊び"を再現する本田さん

本田さんは「人間の脳は、大きく"感じる脳"と"考える脳"にわけられる。通常、人間は感じる脳で感知して、考える脳で論理づける。しかし、怖い・辛いといった状況では、感知したら、とっさに対応しようと脳が反応するため、論理づけられずに残像として脳裏に残っているケースも多い。また、論理づけられなかった感覚は"言語化"するプロセスが欠落しているため、カウンセリングでは露見しづらい」と指摘しました。本田さんは"遊び"を通して心のケアを行うことで"感じる脳"に直接働きかけて、残像を取り除くことができると話します。また、おとなは見聞きしたものを言葉で表現するように、子どもたちは遊びで表現するため、遊び自体が子どもたちにとっては単語や言語の役割を持つことを理解し、子どもたちの行動に寄り添うことが大事だと続けました。

"遊び"には、多様なおもちゃが必要

本田さんは実際にプレイセラピーで使用するおもちゃの一部を見せながら、おもちゃの種類、遊び方、それぞれの効果を教えてくださいました。たとえば、救急車、ヘリコプター、兵士などは"自分を守ってくれた存在"として、また、重機、大工道具、聴診器、注射といった物を作り出したり治したりする道具は"治す・癒す存在"として、恐竜、宇宙人などの怖い印象のあるおもちゃは"無力感や怒りを吐き出す存在"として、そして魔法の杖などは"希望をもたらす存在"として、子どもたちは認識します。こういった様々なおもちゃを駆使して子どもの気持ちを引き出し、共感することで子どもの本来持っている回復力を高めることができるといいます。

映画の中でユンが出していたSOS

本田さんは『はちみつ色のユン』をご覧になって、ユンが絵や物語の世界に没頭することで世界を自由に表現できる、結末さえも変えられる"意のままになる世界"に居場所を求めていたこと、そして、強いイメージのものに自分の姿を重ねる="同一化"することで不安や葛藤・恐怖を打ち消そうとする点にユンのSOSを感じたそうです。本田さんはこのような子どものSOSを見極め、「共感」してあげることが大事だと指摘しました。

私たちが子どもたちのために出来ること

© 日本ユニセフ協会
トークショーにご登壇いただいた本田涼子さん(右)

子どもたちは、「共感」を得ることで自分が誰かに認められている、理解されている、見守られていると実感することができます。子どもたちに、そのような実感を持ってもらうには子どものとった行動を言葉に表現すること、同調することで、同じ世界観や感情を共有することが大事です。本田さんは私たちおとなが子どものために、家庭の中だけでなく、学校や社会とのつながりの中で「子どもの話を聞く」「ポジティブな感情だけでなく、モヤモヤ・イライラ・不安や葛藤など負の感情も共感する」ことが大事だとメッセージをくださいました。

参加された皆様からは「『家族』『愛』『つながり』を求めて揺れ動くユンの感情に共感できる場面がたくさんありました。フィルムとアニメとをおり混ぜた映像というのも面白かったです」「小さい頃の記憶は、おとなになってもその人の人生を左右するとても重要なものだと感じました。より一層子どもたちの心のケアを重要視していかなければならないと思いました」などのお声をいただきました。

今回の上映会が皆様にとって改めて子どもたちとの向き合い方、子どもの幸せについての思いを共有するきっかけになれば幸いです。多くの皆様のご参加、ありがとうございました。

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今後も日本ユニセフ協会ではイベントを開催予定です。詳細は随時ホームページ・Facebook等でお知らせいたします。

◇ 映画『はちみつ色のユン』は下北沢トリウッド他にて公開中(2013年3月現在)。公式ホームページはこちら

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