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公益財団法人日本ユニセフ協会

世界子供白書2008 「子どもの生存」
The State of the World’s Children 2008 --- Child Survival

2008年1月22日13時30分(ジュネーブ時間、日本時間では21時30分)、ユニセフは『世界子供白書2008』(英語版)を全世界同時に発表しました。

2008年の白書のテーマは「子どもの生存(Child Survival)」。子どもの生存、そして母親、新生児、子どもの基礎保健ケアがどのような状態にあるのかを検証するとともに、過去の教訓を活かし、さらなる前進を図るために取られるべき数々の対策を紹介しています。

2006年に発表された統計データによると、世界の5歳未満の子どもの死亡数は年間約970万人と、記録をとり始めて以来初めて1,000万を下回りました。白書は、過去100年の間に子どもの生存や健康、栄養、水と衛生の分野で大きな前進が見られたことを評価するとともに、継続的な基礎保健ケアの普及が、5歳未満児死亡率の削減に有効であると報告しています。

一方、世界では未だに予防可能な病気などが原因で毎日2万6,000人を超える幼い命が失われている現実を深刻に受けとめ、これまでの成果に満足することなく、1990年から2015年までの間に子どもの死亡数を3分の1に減少させるというミレニアム開発目標(MDG)4を達成するために、さらなる努力の必要性を訴えています。


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白書は、これまで子どもの保健に関して得られた教訓をこの先どう進むべきかの「羅針盤」とし、次のような新しい方向性を指し示しています。

  • 子どもの死亡率と死亡レベルが高い国とコミュニティに重きを置き、基礎保健ケアを受けられない可能性が高い人たちに重点を置く。
  • 支援の範囲と効果を改善するため、基礎保健サービスをパッケージ(包括サービス)として届ける。
  • コミュニティの人たちをヘルスワーカー(保健員)に登用し、コミュニティ全体が健康に良い習慣を身につけられるようにするには、コミュニティとのパートナーシップを推進することが重要である。
  • ライフサイクルを通してケアが途切れることなく提供されるには、世帯やコミュニティが、訪問サービスを通して、あるいは施設でのケアの形でサービスを受けられるようにすることが大切である。
  • 妊産婦、新生児、子どものケアを中心にして、保健システムを整備し、戦略的、成果主義的なアプローチを採る。
  • 保健システムの強化にあたっては、政治的なコミットメントが必要であり、国内および国際的なリーダーシップ、維持可能な予算を組むことが必須である。
  • 数多く存在する世界規模の保健プログラムやパートナーシップをうまくまとめあげる必要がある


これまでのさまざまな成果を振り返ると、母乳育児や予防接種、マラリア予防のための防虫剤処理済みの蚊帳の使用、ビタミンAの投与など、基礎的で安価な手段が、子どもの命を守るために有効であることがわかります。 また、世界的なレベルでMDG4を達成するには、質の高い基礎保健ケアのサービスを拡大することによって、保健に関連したほかのミレニアム開発目標を達成するなど、多方面からの努力も必要です。それは、もっとも貧しい、排除されたコミュニティにも保健ケア・サービスを届けるためにはどうしたらよいのかという戦略の見直しにもつながっていくのです。

さらなる前進を図るために必要な行動として、白書は次の5つを提案しています。

  1. 特定の疾病に対する有効なプログラムを統合し、母親、新生児、子どもに継続的な保健ケア提供する
  2. 基礎保健サービスの拡大にあたり、国の包括的な計画立案の過程で、必ず母子保健が中心課題として含まれていることを確認する
  3. 保健システム強化のため、財政内容の質的向上をめざし、一貫性を保つ
  4. 国家レベルの政治的な約束をとりつける
  5. グローバルな保健プログラムやパートナーシップのために、より大きな調和を目指す

白書は、子どもと母親の生存と健康に関連したミレニアム開発目標を達成するためのキーワードのひとつとして「統合(UNITY)」を挙げています。母子保健の面での向上を狙ったイニシアティブやパートナーシップは多数あり、今後も増加する勢いですが、目標を達成するためには、より一貫した形、より調和のとれた形で実施されることが必要であると訴えています。

さらに、白書は、ミレニアム開発目標の達成へ向け、次の6つを国際課題の中心に据える重要性を訴えています。

  1. 妊産婦、乳児、子どもの生存と健康のために、支援が提供できるような環境を作り出す
  2. 保健システムやプログラムを人権ベースにする。また、平和、安定、子どもの保護、非差別、ジェンダーの平等、女性のエンパワーメントを目指す。

  3. 時間と場所をわきまえたケアの継続を可能とし、これを強化する
  4. 母子のライフサイクルの主要なポイントで、基礎サービスを提供できるようにする。家庭、コミュニティ、基礎保健施設や地区の病院での質の高い訪問サービスや診療サービスでも、強い絆が必要となる。

  5. 保健システムとコミュニティ・パートナーシップを強化することにより、基礎サービスのパッケージを拡大する
  6. 保健員の研修、訪問サービスの拡大、障害の払拭、新しい技術の有効活用など。

  7. データ、研究、証拠をより多く獲得する
  8. 母子保健の面でのデータや証拠は、すでにたくさん存在するが、より正確なデータ収集と発信、調査と評価が求められている。

  9. 母親、新生児、子どものためにより有効に資源を利用する
  10. 目標達成のためにさらなる支援が必要となっている。また、政府には、保健面での支出をより拡大するという約束が期待される。

  11. 妊産婦、新生児、子どもの保健を全世界的な課題とする
  12. 保健システムやプログラムを人権ベースにする。また、平和、安定、子どもの保護、非差別、ジェンダーの平等、女性のエンパワーメントを目指す。

これらが実現し、子どもの生存や健康に関するミレニアム開発目標が達成されれば、2005年から2015年までの間に3,000万人の子どもたち、そして200万人に母親たちの命が救われます。また、何億人もの子ども、男性、女性が、飢餓を免れ、安全な飲み水を手に入れられ、基礎的な衛生施設を利用し、教育を受け、ほかの人々と同じように経済的利益や政治的な機会を享受できるようになります。
行動のもととなるデータ、調査、評価は既に存在しています。また、何をめざせばよいかという方向性も明確になった今、子どもたちの命を救うために、私たちの意志と行動力が問われているのです。

PDFファイルで読む

巻末統計

» 掲載データについて (PDF 183KB)   » 表中の国の分類 (PDF 50KB)
» 5歳未満児死亡率の順位 (PDF 183KB)   » 人間開発の進展を測る 表10について (PDF 85.4KB)

 

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