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公益財団法人日本ユニセフ協会
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エボラ出血熱緊急募金 第24報
エボラ出血熱・ナイジェリア
「必ず生きて退院する」回復者が語るエボラ
携帯電話や戸別訪問で啓発活動を実施

【2014年9月8日 ナイジェリア発】

デニスさんはエボラに感染した妻との面会時、医療従事者と同じように防護服を着用していました。
© Nigeria/2014/Denis
デニスさんはエボラに感染した妻との面会時、医療従事者と同じように防護服を着用していました。

西アフリカで感染が拡大するエボラ出血熱。感染が確認されている国のひとつであるナイジェリアから、ユニセフ・ナイジェリア事務所広報官のブレッシング・イジョフォーがエボラから健康を取り戻した男性について報告しています。

* * *

妻をエボラ出血熱で亡くしたデニスさん。後に自身もエボラの症状が現れ、隔離病棟に搬送されました。初回検査の結果、エボラの感染を告げられたデニスさんですが、希望を失うことは決してありませんでした。

“必ず生きて退院する”

「私は、エボラへの感染が死亡宣告だとは思っていません。エボラも他のウイルスで感染する病気と同じだと思っています。致死率が高い病気ですが、早期にきちんとした治療を受けることで、克服できるのです」と、ラゴスでビジネスを展開するデニスさんが語ります。「2度にわたる検査でも陽性だと告げられましたが、決して希望は捨てませんでした」

デニスさんは、エボラ患者やその親類に精神面でのサポートを行うユニセフのカウンセラー、テリー・ハワードさんが大きな支えになったと振り返ります。「エボラから回復してみせるという強い意思や自信を持たせてくれる人が重要なのです」と、デニスさんは語ります。

その2週間後、デニスさんの関節に激痛が走りました。「痛みに耐える心の準備はできていました。私は隔離棟から必ず生きて退院すると、自分自身に言い聞かせました」

彼の言葉は現実のものとなりました。3度目の検査結果では、デニスさんの体内からエボラウイルスは検出されず、健康を取り戻したことが証明されました。

妊娠2カ月だった、看護師の妻

ラゴスにあるエボラの隔離治療センター。病棟に入る前に、防護服を着用する医療関係者。
© UNICEF Nigeria/2014/EJIOFOR Blessing
ラゴスにあるエボラの隔離治療センター。病棟に入る前に、防護服を着用する医療関係者。

完治して安堵する一方、8月中旬に亡くなった妻を想い、悲しみに暮れるデニスさん。看護師だった妻は、ナイジェリアで初のエボラ感染者となった患者の治療にあたっていました。彼女にエボラの感染症状が現れたのは、その14日後でした。デニスさんは妊娠2カ月だった妻を自宅で看病しました。つわりで苦しんでいると思っていたのです。

妻が隔離病棟に搬送されてから、デニスさんは医療従事者と同じように防護服を着用して病室を訪れていました。「3度目の面会が、最期のお別れとなりました。死亡したとの連絡をうけて病室を訪れ、妻の死を自分の目で確認しました」

妻が隔離病棟に入院している時、デニスさんは患者と接触した一人として名前が挙げられ、観察下に置かれていました。そして後に、彼自身も隔離病棟に搬送されました。デニスさんは隔離病棟で服薬治療をうけながら、毎朝の日課である運動を続けていました。「入院中も、腕立て伏せは続けていました」(デニスさん)

「デニスさんの例は、模範的です」と、ユニセフ・ラゴス現場事務所所長であり、国立エボラ緊急オペレーションセンターの管理・調整チーム・リーダーを務めるサラ・ベイソロー・ニャンティが語ります。「デニスさんは、早期の治療開始がエボラの治療に大きな効果があると証明したのです。エボラ感染者と接触した人たちは検査を受けるだけでなく、エボラウイルスの潜伏期間とされる21日間の追跡調査を行うことが極めて重要です」

携帯電話や戸別訪問で啓発活動

エボラから回復したという証明書を読むデニスさん。
© UNICEF Nigeria/2014/EJIOFOR Blessing
エボラから回復したという証明書を読むデニスさん。

エボラの感染拡大を阻止するためには、エボラの症状、感染経路、予防方法に対する理解を高めることが必要不可欠です。ナイジェリアでエボラの感染が確認された人は2014年8月4日時点で18人。感染者はいるものの、他の感染拡大が続く国と比較すると、遥かに少ない人数で留まっています。しかし政府や政府の開発パートナー団体は、警戒を弱めることはありません。

ユニセフは社会啓発活動の支援を行っています。戸別訪問を通して、エボラウイルスの感染経路や適切な手洗いなど、簡単に行える予防法を広めています。また、バスやタクシー、薬局、ホテル、礼拝場所、ショッピングモールなどには、エボラに関するポスターやステッカーが貼られています。

若者の意見を政策に反映させることを目的にユニセフが開発したU-Report(ユー・レポート)も、エボラの啓発活動に活用されています。U-Reportを利用することで、住民たちが携帯電話のメッセージ機能(SMS)を利用してエボラの問題について意見を言ったり、報告することができます。また、エボラに関する認識を高めるために150万件以上のメッセージが送られ、住民の間で語り継がれている“魔法の治療法”など、誤情報や噂を解消しています。

感染者への偏見

ユニセフはまた、政府がメディアや宗教や伝統的な主導者、貿易連合やビジネスなどの幅広いリーダーたちと協力関係を築けるような支援も行っています。

エボラに関する認識を向上させるためのキャンペーンは、エボラから回復した人や、エボラ患者との接触者へ向けられる偏見や差別をなくすという目的もあります。「エボラから健康を取り戻したと証明されるまで、挨拶をしても誰一人、答えてはくれませんでした」と、デニスさんはエボラ患者に対する偏見の深刻さを語ります。

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