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公益財団法人日本ユニセフ協会

中央アフリカ共和国
武装組織による搾取に対するユニセフの活動
子どもの保護専門官による報告

【2014年9月19日 中央アフリカ共和国発】

中央アフリカ共和国・地図
中央アフリカ共和国・地図

国連ボランティアとしてユニセフ・中央アフリカ事務所に赴任している小川 亮子・子どもの保護専門官が現地での活動の様子を報告しています。

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今月1日から4日まで、首都バンギから北西82kmのボアリ(Boali)及び225kmのヤロケ(Yaloke)に出張してきました。今回の出張の目的のひとつは、同地域で武装組織によって徴用されている子どもを解放し、彼らの心理社会的サポートと医療サービスを確保するため、武装グループと交渉し、またパートナー団体の活動をモニタリングし、トレーニングを行う一連の活動です。

ユニセフは、武装組織によって搾取されている子どもを解放し、また今後子どもを徴用することがないよう、武装組織との話し合いを重ねています。更に、武装組織に使役されていたと思われる子どもの詳細な記録を行い、実際に使役されていたと確認の後に、彼らへの心理社会的サポート、必要な医療サービス、家族・コミュニティに戻るための支援といった総合的な支援を行っています。

徴用される子どもたち

破壊された建物(中央アフリカ)
© UNICEF/CAR/2014
破壊された建物

今回訪問したボアリ及びヤロケにおいても、2013年12月に激化したイスラム系武装組織旧セレカとキリスト教系武装組織アンチバラカ双方による攻撃・略奪が横行し、多くの住民が殺害され、建物が破壊されました。主要な輸入先であるカメルーンと首都バンギとの幹線道路が近くにあるため、物資や人々の流通が回復すると同時に、町の中心は活気を取り戻しつつありますが、破壊された建物はこの一年の暴力の連鎖を生々しく物語っています。

イスラム系住民が隣国チャド及び北方へ逃れ、キリスト教系アンチバラカが優勢となっている現在も、双方の戦闘は繰り返され、いつどこで戦闘・略奪行為が起こっても不思議ではない状況にあります。こうした中、子どもたちも攻撃の対象となるだけでなく、武装組織に搾取されるケースが多く起こっています。子どもたちは、武装組織の中で戦闘員としてだけではなく、料理、運搬を担わされたり、敵対グループの情報収集をしたり、中には武装組織の司令官や兵士の「妻」や「ガールフレンド」として性的搾取の対象となることもあります。

子どもたちの解放に向けて

バレーボールを楽しむ子どもたち (中央アフリカ)
© UNICEF/CAR/2014
バレーボールを楽しむ子どもたち

今回の出張では、ユニセフの同僚及び国連中央アフリカ共和国多面的統合安定化ミッション(MINUSCA)の職員とともに、アンチバラカの司令官及び兵士に対し、子どもを武装組織で徴用してはならないこと、すでに武装組織で徴用している子どもを解放しなければならないことを理解・実行させるための話し合いを行いました。銃・武器を持たずに現れた武装組織メンバー達は、ユニセフ及びMINUSCAスタッフの話に真剣に耳を傾け、活発に質問をしていました。こういった話し合いは、一回で済むものではなく、繰り返し根気強く理解を促していく他ありません。一方で、ユニセフによるこれまでの長期に亘る話し合いにより、武装組織との話し合いを保つことのできる関係が築かれてきたと言えます。

また、ユニセフのパートナー団体であるCARITASの職員に対するトレーニングも行いました。CARITASは、武装勢力が子どもの解放に応じ、提示するリストにある子どもに実際に聞き取りを行い、事実の確認と詳細情報を得る役割を担っています。この聞き取り調査を正確且つスムーズに行うため、ユニセフ職員が研修を行います。CARITASの現地職員の能力強化を行うことは、今後中央アフリカ共和国において持続的な子どもの保護活動が行われるためには不可欠です。本研修後、彼らは実際に武装組織から提示された子どもたちの聞き取り調査を行い、実に502人の子どもが実際にアンチバラカに徴用されていることが判明しました。この子どもたちは、武装勢力から開放された後、ユニセフが運営する「子どもにやさしい空間」で総合的サポートを受けることになります。

子どもに戻るための重要な場所

国連ボランティアとしてユニセフ・中央アフリカ事務所に赴任している小川 亮子・子どもの保護専門官
© UNICEF/CAR/2014
国連ボランティアとしてユニセフ・中央アフリカ事務所に赴任している小川 亮子・子どもの保護専門官

今回の出張では、3カ所の「子どもにやさしい空間」をモニタリングしました。ここでは、武装組織から開放された子どもだけでなく、地域の子どもたちも混ざってさまざまなアクティビティに参加しています。訪問した際には天気が良かったこともあり、バレーボール、歌、ダンス、バスケットボール、サッカーなどが屋外で活発に行われていました。地域でたくさんの子どもたちと交流し、遊ぶことができる場は、悲惨な経験を強いられた子どもにとって、子どもに戻るための非常に重要な場所となります。また、ここに来る子どものなかには家族が殺される・離別するなどして保護者のいない子どもがいます。そういった子のために、家族に戻れるよう支援したり、代わって保護者となり得る家庭を探したりすることもユニセフとパートナー団体の役割です。

今回の出張時に新たに確認された502人を含め、ユニセフは中央アフリカ共和国内で今年1月から累計2,013人(女の子576人、男の子1,437人)が武装組織によって搾取されていたことを確認、彼らの解放とその後の総合的支援を行ってきました。この子どもの人権侵害の中でも最悪な形態のひとつである武装組織による搾取を終わらせるため、ユニセフはパートナー団体とともに活動を続けていきます。

※ユニセフは、子どもたちを武装勢力から解放するため、パートナー団体や保健・社会省とともに、旧セレカとも直接交渉をしています。また、アンチバラカとの交渉が始まり、同グループに所属する子どものための開放・ケアの一連のプログラムを開始しました。

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ユニセフが中央アフリカ共和国での活動を続けるための資金が不足しています。同国の深刻で複雑な人道危機に対応し、中央アフリカ共和国の子どもたちが、保健、水衛生、保護、教育の必要最低限のサービスを確保するため、ユニセフは2014年の活動資金として8,100万米ドルを必要としていますが、そのうち約5,000万米ドル近くの資金が不足しています。このままでは、武装組織からの子どもの解放、心理社会・医療サポート、家族との再会などの支援を含むユニセフの活動続けることが難しくなります。皆様のあたたかいご支援をよろしくお願いいたします。

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