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公益財団法人日本ユニセフ協会

科学の力を子どもたちの支援に
人生の基盤を築く乳幼児期
生活環境が脳の発達に与える影響が明らかに

【2014年9月20日 ニューヨーク発】

ダンスの練習をする子どもたち。(バングラデシュ)
© UNICEF/BANA2014-01667/Mawa
ダンスの練習をする子どもたち。(バングラデシュ)

科学技術は、幼い子どもたちのための開発政策や実際の支援活動への考え方に大きな影響を及ぼします。また、乳幼児期の発育の定義や、子どもたちが人生の最良のスタートを切ることができるようにするための支援に根本的な変化をもたらします。

子どもたちの脳は、生後数年間で最も急速に発達します。乳幼児期は、子どもたちの人生の基礎をつくり、より持続的な社会を築くことにもつながる重要な時間です。

食料や栄養が赤ちゃんの健康と福祉のために必要不可欠だということはだれもが理解しています。飢えや栄養不良が乳幼児や幼い子どもたちに及ぼす影響は、目に見えるかたちで表れます。乳幼児期に十分な栄養が得られないことで発育不全に陥り、心身の成長にも遅れが出てしまいます。そして、学ぶ機会や実りのある生活を送る機会すら、脅かされてしまうのです。

発育に重要な乳幼児期

赤ちゃんをあやす両親。(バングラデシュ)
© UNICEF/BANA2014-00767/Mawa
赤ちゃんをあやす両親。(バングラデシュ)

お腹を空かせた赤ちゃんが泣く姿を目にして、食べ物の重要性を感じない人はいないでしょう。しかし、脳に対する刺激や安心感、愛情に関してはどうでしょうか。ケアや養育を十分受けられていない場合や、家庭内暴力や虐待、紛争下での生活は、食べ物が十分に得られないときと同じく、脳の発達に大きなダメージを与えます。

このたび、こうした環境的な要因が幼い子どもたちの脳の発達に大きな影響を及ぼすことが明らかになりました。

ユニセフ事務局長のアンソニー・レークとWHO(世界保健機関)のマーガレット・チャン事務局長は、「遺伝と周囲の環境、どちらが乳幼児期の発達を決定付けるのかという議論は、終わりを迎えました。双方が重要であり、互いに密接な関係にあることが明らかになったのです」と医学雑誌『ランセット』で述べました。

論文では、ストレスが世界で最も弱い立場にある何百万人もの子どもたちに及ぼす影響が明らかになっています。両事務局長は、人間の発達に極めて重要な乳幼児期に、遺伝と周囲の環境の両方に関係性があるという事実は、政策や人道援助の方針に大きな意味をもたらすと語っています。

生活環境が脳の発達に影響

幼稚園の授業に参加する子どもたち。(タンザニア)
© UNICEF/ UNI161988/Holt
幼稚園の授業に参加する子どもたち。(タンザニア)

遺伝子と周りの世界との関わりの両方が私たちの脳を形作り、未来を形成するということが明らかになってきています。脳の発達の常識に関して、科学の革命的な変化がまさに起こりつつあるのです。

これは特に毎秒に700〜1000という新しい神経回路が形成される乳幼児期にあてはまります。乳幼児期の子どもたちにとって、栄養や良い健康状態を保つことは極めて重要です。しかしそれと同じぐらい、特に暴力や災害、貧困などの逆境に直面している場合、適切なケアや養育、脳への刺激が重要です。

両事務局長は、世界で最も不利な立場に置かれている子どもたちの権利を守るための支援活動には、環境的な要因と生物的な要因の双方を考慮する必要があると指摘しています。

論文では、以下の3点の提言を行っています。

  • 妊産婦ケアなど早期からの支援に焦点を絞ること
  • 政策の立案や支援に、保健や栄養、質の高い養育や保護を含むこと
  • 効果的な支援を行うため、プログラムの策定に脳の発達も考慮に入れること

科学の力を子どもたちの支援に

保健センターで栄養検査を受けた親子。(ナイジェリア)
© UNICEF/NYHQ2012-0156/Quarmyne
保健センターで栄養検査を受けた親子。(ナイジェリア)

ユニセフとWHOは、子どもの発達のためのケアプログラムで、この新しい知識を実際の支援活動に生かしています。このプログラムは、子どもたちと積極的に関わり、親として責任を持ち、子どもたちの言葉の発達や学習を後押しすることができるよう、両親のサポートや栄養指導を行っています。

新たに明らかになった事実は、乳幼児期の発育プログラムの支援計画に重要な影響をもたらし、証拠に基づく新しい政策やプログラムの立案に役立てられます。科学技術を子どもたちの生活に大きな変化をもたらす政策や支援プログラム、資金調達により役立てていくため、ユニセフは第一線で活躍する研究者と協力して活動を行っています。

科学技術は、各国政府が総合的な乳幼児期の発育プログラムを取り入れる後押にもなります。国連総会の開会に先立ち行われたイベントで、ユニセフはチリやルワンダ政府と共に、乳幼児期の発達における科学技術の前進、進歩を歓迎するとともに、世界のリーダーたちに、乳幼児期の子どもの発達を、より豊かで持続可能な世界を築くための世界的な目標の中心に据えるよう訴えました。

乳幼児期は、人間の発達に非常に重要な時間です。この時期に発育に必要不可欠なものが得られない場合、そのダメージは一生に及び、取り戻すことはできません。物事に変化が訪れることを待つのではなく、今すぐ行動に移す必要があります。そうすることで、子どもたちが実りのある人生を歩むことができ、よりよい社会を築くことにつながるのです。

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