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公益財団法人日本ユニセフ協会
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エボラ出血熱緊急募金 第44報
エボラ出血熱:シエラレオネ
「触れてはいけない」
エボラ看護師、子どもへのケアに心痛

【2014年10月28日 シエラレオネ発】

フリータウンにある5歳未満の子どもたちのためのマコーリー診療所。
© UNICEF Sierra Leone/2014/Dunlop
フリータウンにある5歳未満の子どもたちのためのマコーリー診療所。

「触れてはいけない」

この警告は、エボラ出血熱との闘いが続くシエラレオネにおいて、人々が従うべきルールとなっています。エボラの感染を防ぐためには身体的な接触を避けることが重要だと広く認識されるようになった一方で、子どもたちをケアする際にこのルールを守るのは、決して簡単なことではありません。

子どもたちは本能的に愛情を求めます。そして子どもたち、特に赤ちゃんは常におとなたちの注目を引きつけます。子どもたちに魅了され、抱き上げて笑顔にしてあげたい、寄り添い、抱きしめたいという気持ちになるのです。

身体的な接触を控えることでしか効果的に予防することのできないこの感染症に見舞われたこの国の子どもたちにとって、「触れてはいけない」というルールは何を意味するのでしょうか。

「触れてはいけない」

子どもは、病気にかかったときに特に助けを必要とします。しかし、伝染性の高いウイルスに子どもが感染した場合、看病をする親たちへの感染リスクが高くなります。エボラは、発症した患者の体液を通してウイルスが感染します。つまり、エボラに感染した子どもたちが発症した場合、両親や看病をする人たち、姉妹や兄弟、結びつきの強いコミュニティでは、他の家庭の子どもたちさえもが感染に危険にさらされることとなります。

「エボラと闘うためには、コミュニティで子どもたちを注意深く見守る必要があります。エボラに感染した子どもを直ちに保健施設に連れて行くこと、元気な子どもを感染の疑いがある子どもと接触をさせないこと、そしてもし親がエボラに感染したら、診療所に報告するよりも前に、できる限り早い段階で子どもとの接触を避けるようにする必要があります」と、ユニセフ・フリータウン現場事務所のマーガレット・ジェームス母子保健担当官が話します。

保健員は治療ユニットでの感染拡大や自らの感染を防ぐため、防護服に身を包み、患者との接触を最低限にするように訓練されています。しかし、病気の子どもたちを抱き上げ、少しでも安心させてあげたいと願う保健員たちにとっては、心が痛いものです。そして、不安を感じ、愛情を求める子どもたちにとっては、心に困惑を招くものです。

「エボラ治療センターで苦しみに耐える子どもたちを目にして、とても心が痛みました。エボラ患者を担当する看護師たちにとって、子どもたちへの治療は最も難しいものです。治療時に身体の接触は避けられませんし、子どもたちは心細く感じ、だれかのそばにいたいと思っています。子どもたちを安心させたいと願う反面、身体的接触はエボラの感染リスクを高めることになります。とても難しい状況です」と、フリータウンのマコーリー診療所でエボラ患者の治療にあたる看護師のアミナタ・サンカーさんが語ります。

辛く困難な、子どもたちのケア

マコーリー診療所の看護師、アミナタ・サンカーさん。
© UNICEF Sierra Leone/2014/Dunlop
マコーリー診療所の看護師、アミナタ・サンカーさん。

すべての看護師が、エボラの予防法を十分に認識している必要があります。金曜日の朝、5歳未満の子どもたちのためのマコーリー診療所には母親たちが赤ちゃんに予防接種を受けさせるための列に並んでしました。母子保健を担当する看護師のミニラツ・キングさんは、同僚スタッフとともに、感染コントロールの訓練をたった今修了しました。赤ちゃんへの治療の際、エボラの感染予防策をきちんととれるよう、ユニセフによって実施された訓練です。

「手袋やマスク、エプロン、手を洗うための塩素が用意されています。これらは、すべての保健センターで必要不可欠なものです。治療の際、赤ちゃんを抱き上げたり、触れたりする必要があります。赤ちゃんと身近に接触するため、ウイルスに感染しやすくなります」(キング看護師)

啓発活動により、母親たちの育児方法に改善がみられているとキング看護師が語ります。「母親たちには、エボラを過度に恐れる必要はないけれど、着替えや食事の前には必ず手を洗うなど、予防法をきちんと守ること、そして赤ちゃんを常に目の届くところにおき、知らない人には触らせないようにするよう伝えています。母親たちはエボラの感染が始まる以前よりも知識を身につけ、注意して子育てをするようになったと思います」

感染の疑いがある子どもやエボラ患者との接触者となった子どもたちにも大きな影響が出ています。エボラの感染が確認されると、家族は「接触者」として、潜伏期間である21日間隔離され、経過観察を受けることになります。また、エボラによって親や家族を亡くし、孤児となった子どもたちは親戚に引き取られるか、ケアセンターや児童養護施設で暮らすことになります。

保健推進員のメアリーさんによると、現在、子どもたちと、子どもたちのケアに関わる人々の双方に、辛い状況が続いていると語ります。「感染の疑いがある場合、脆弱な立場にある子どもたちはサポートが必要です。しかし、エボラに感染している可能性があるため、子どもたちに触れることができません」

「しばらくの間ケアセンターに預けられた赤ちゃんが発熱したため検査を行いましたが、結果が出るまでだれも赤ちゃんに触れることができなかったということもありました。病気になって不安に感じ、ただ抱きしめられたかったであろう小さな赤ちゃんを、だれも抱き上げることも、近付くこともできませんでした。赤ちゃんの泣き声を聞きながらも、何もすることができないのは、とても心が痛むものです」

保健衛生省によると、シエラレオネの2,220人以上の子どもたちが、エボラによる影響を受けています。このような事態が、国中で起こっているのです。エボラの感染拡大は続いており、エボラに感染する子どもたちや孤児となる子どもたちの人数は更に増加する見込みです。

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