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公益財団法人日本ユニセフ協会

HIVと共に生きる青少年は210万人
エイズ撲滅に、青少年の参画を
青少年層のエイズ撲滅キャンペーンが開始

【2015年2月17日 ナイロビ(ケニア)発】

学校でHIVの啓発パンフレットを生徒たちに配布する様子。(スーダン)
© UNICEF/SUDA2014-XX166/Noorani
学校でHIVの啓発パンフレットを生徒たちに配布する様子。(スーダン)

ユニセフ(国際連合児童基金)は17日、ケニアのナイロビで、国連合同エイズ計画(UNAIDS)などとともに、エイズ対策で最も喫緊な課題のひとつである、青少年へのHIV対策キャンペーン、「オール・イン」キャンペーンを発足。エイズ対策はほとんどすべての領域で進んでいるのにもかかわらず、青少年に対する取り組みが遅れていることを指摘しました。

エイズ関連死は、アフリカの青少年の死因の第1位、世界全体の青少年の死因の第2位です。15歳未満の子どもで抗レトロウイルス治療を受けられるのは、わずか4人にひとりです。青少年を除く他の年齢層はエイズ関連死が大きく減少しているのに対し、10歳から19歳の青少年には減少がみられていません。

新たなHIV感染者数に関しても同様で、青少年の新規感染は、他の年齢層の減少率ほど著しくありません。青少年期の女の子が最もその影響を受けており、特にサハラ以南のアフリカで深刻です。南アフリカ共和国では、2013年、毎週860人以上の女の子がHIVに感染、対して男の子は毎週170人でした。

HIVと共に生きる17歳の女の子と9歳の弟、8歳の妹にカウンセリングを行うソーシャル・ワーカー。(シエラレオネ)
© UNICEF/SLRA2013-0901/Asselin
HIVと共に生きる17歳の女の子と9歳の弟、8歳の妹にカウンセリングを行うソーシャル・ワーカー。(シエラレオネ)

「オール・イン」キャンペーンは、このような不均衡の是正に取り組むため、ユニセフと国連合同エイズ計画、国連人口基金、世界保健機構、米大統領緊急 エイズ救済計画、世界エイズ・結核・マラリア対策基金、MTVステイング・アライブ財団、HIVヤング・リーダーズ基金を含む指導者グループによって、発足されました。戦略的な政策変更の促進や、若い人々の参加によって、青少年によりよい結果をもたらそうと行動することが、このキャンペーンの方針です。発足にあたり、リーダー的立場にいる、あるいは主体的に行動する青少年200人以上が集結しました。

2013年時点でHIVと共に生きる青少年は210万人おり、その感染のほとんどが、10年以上も前の母子感染によるもので、胎児期や出産時、あるいは生後数カ月の間に起きていました。母子感染率を著しく削減できる抗レトロウイルス薬の投与を、当時は受けられなかったのです。多くのケースが、一度もHIVの診断を受けなかった、経過観察ができなかった、あるいは治療ケア・プログラムの対象外だったとみられます。

10年〜15年前、多くの子どものHIV感染状況が未診断でした。現在は青少年期を過ごしているその子どもたちは、HIVの診断や、治療ケアの照会プログラムが限られているなかで、自分がHIVに感染しているかどうかを知らないままでいます。

2カ月の赤ちゃんを抱くHIVと共に生きる17歳の少女に、治療の説明をする女性。(シエラレオネ)
© UNICEF/SLRA2013-0590/Asselin
2カ月の赤ちゃんを抱くHIVと共に生きる17歳の少女に、治療の説明をする女性。(シエラレオネ)

ユニセフのアンソニー・レーク事務局長は、「私たちはエイズ撲滅に向けた取り組みを進めており、最初にその恩恵を受けるのは、子どもや青少年であるべきです。十分な支援を受けられていない青少年層へ支援を届けるとともに、私たちは、青少年層におけるエイズ撲滅を目指す活動に、すべての青少年が関わる必要があると考えます。事実、彼らの参加がなければ、“エイズのない世代”の実現はできないのですから」と述べています。

「オール・イン」キャンペーンは、次の4つの重要なアクションに焦点を当てています。

  1. 青少年の参加や行動を呼びかけ、青少年がリーダーとなり、あるいは、社会的変化のために主体的に行動する人となるよう、エンパワメントする
  2. よりよい計画策定のため、データ収集や分析方法を改善する
  3. 青少年のニーズに適応したHIVに関する支援を届けられるよう、イノベーティブな取り組みを推進する
  4. 具体的な行動を促し、資源や人員を動員するため、青少年層へのHIV対策を確固として政治課題に挙げる

「オール・イン」キャンペーンは、意思決定プロセスに青少年の有意義な参加を増やし、青少年主導の社会運動の強化を目指しています。これは、青少年層向けのHIV対策戦略を、すでに実施されている青少年期の健康と成長プログラムにリンクさせる機会にもなります。加えてこのキャンペーンは、国の指導者たちが既存のプログラムの評価を主導、調整、支援すること、また一般市民と民間部門との間でイノベーションのためのパートナーシップを拡大させることを、確かなものとするでしょう。

今後5年間が重要です。国連合同エイズ計画は、達成期限を2020年までとした青少年のための早期目標を設定しました。そこには、新規HIV感染者の青少年の人数を少なくとも75%削減すること、青少年のエイズ関連死を65%削減すること、さらにエイズに関する偏見撲滅などが盛り込まれています。これらの目標が達成されれば、2030年までに青少年のエイズは撲滅され、公衆衛生の脅威的存在である世界的なエイズ流行は終わりを迎えるでしょう。

■参考情報: 統計でみる青少年期のHIV/エイズ指標(レポー トより一部抜粋)

  • 10歳から19歳の青少年期の子どもで、エイズ関連死は12万人(2013年)。2012年の11万人から増加している
  • 青少年を除く他の年齢層はエイズ関連死が38%と大きく減少しているのに対し、10歳から19歳の青少年には減少がみられていない
  • 2013年に新たにHIVに感染した青少年は世界で25万人。そのうち3分の2を女の子が占める
  • 2013年、HIVと共に生きる15歳未満の子どもの24% (およそ4人にひとり)しか抗レトロウイルス薬の投与を受けていない

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