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公益財団法人日本ユニセフ協会
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エボラ出血熱緊急募金 第67報
シエラレオネ:
一緒にエボラを乗り越えよう
回復者だから可能な、子どもへのケア

【2015年3月3日 フリータウン(シエラレオネ)発】

エボラ経過観察のための一時保護センターに身を寄せる男の子。
© UNICEF Sierra Leone/2015/Francia
エボラで家族を失い、ユニセフが支援する経過観察のための一時保護センターに身を寄せるジェームズくん(13歳)。

ユニセフが支援する経過観察のための一時ケアセンターで、隔離が必要な子どもたちが新たな希望を、そして子どもたちのケアに従事するエボラ回復者たちが、新たな目標を見出しています。

* * *

絵に描いたように美しい山々や豊かな緑に囲まれた経過観察のための一時ケアセンターで、13歳のジェームズ・カマラくんと6人の兄弟姉妹が身を寄せて18日が経ちます。鮮やかな黄色の建物に流れるそよ風が、子どもたちの笑い声を運んできます。

エボラに感染した可能性のある子どもが経過観察のために身を寄せるこのセンターで、子どもたちはケアを提供するスタッフと仕切りや防護服なしで触れ合い、遊びながら経過観察期間を過ごすことができます。これは、スタッフ12人全員がエボラ・ウイルスの免疫を持つ回復者たちだからこそ可能なケアなのです。

エボラの影響を受ける子どもたち

エボラから回復した子どもたち。
© UNICEF Sierra Leone/2015/Francia
ジェームズくんと兄弟姉妹、センターの運営者アルフレッドさん(左)。

13歳のジェームズくんは、父親やおじさん、3人の兄弟姉妹をエボラで亡くしました。

「ぼくが暮らすコミュニティの子どもたちは、エボラの影響を受けています。特に、ぼくの家族は大きな影響を受けました。親せきも失い、もう自由に遊ぶことすらできません。他の人は、ぼくたちに近寄らないように言うのです。差別を受けているように感じました。水を汲む手助けすら、してくれません」

ジェームズくんのような子どもたちをケアするため、ユニセフの支援を受け、シエラレオネ社会福祉・ジェンダー・子ども省は経過観察のための一時ケアセンターを設置しました。

このセンターは、エボラに感染した両親や養育者、親せきなどと身近に接し、発症はしていないものの、死亡や治療が原因で保護者がいない子どもたちにケアや保護を提供するために設置されました。20〜25人の子どもを受け入れることができ、ウイルスの潜伏期間である21日間、経過観察を行います。そうすることで、エボラの症状を早期に発見し、発症した子どもに対しては、適切なケアを提供する施設に迅速に搬送することができます。

そして経過観察期間中には、子どもたちの親類を探し、養育者を確認する支援も実施されます。経過観察期間の終了までに見つからない場合、長期的な解決策が見つかるまでの間、子どもたちは一時ケアセンターに身を置き、安全に暮らすことができます。

常に最も優先されるのは家族との再会ですが、それが不可能となった場合、親族や里親によるケアを模索します。

安全で安心できる場所

「このセンターの人たちは、とても親切です。たくさんご飯を食べることができますし、悲しい時には話を聞いてくれます」とジェームズくんは語ります。

子どもたちのためのケアセンターで働くエボラ回復者。
© UNICEF Sierra Leone/2015/Francia
このセンターで支援を提供し、子どもたちの未来を守るスタッフ全員がエボラの回復者。

現在12地区で14の経過観察のための一時ケアセンターが運営されており、合計275人分のベッドが用意されています。エボラによる緊急事態発生後、ユニセフが支援する、経過観察のための一時ケアセンターで支援を受けた子どもは407人に上ります。

「エボラ感染者と接触した子どもたちには、経過観察期間中に、特別なケアと支援が必要です。まだ幼い子どもたちが、大好きな人を失い、差別され、自分自身も感染して命を落とすかもしれないという恐怖の中での生活を送っているのです」と、ユニセフの子どもの保護チーフ、マシュー・ダリングが話します。

「経過観察のための一時ケアセンターでは、新たな感染を予防し、保護された安全な環境を提供し、虐待されるリスクを減らし、心の傷を和らげ、エボラの影響を受ける子どもたちのレジリエンス(回復力)を高める手助けをすることができます。子どもたちはかつて、エボラに感染した家族の看病をするなど、感染の危険が非常に高い状況下にいました。経過観察のための一時ケアセンターに子どもたちが身を置くことで、そのような危険から子どもたちを守ることができるのです」(ダリング子どもの保護チーフ)

子どもたち、特に体の不調を伝えることのできない5歳未満の子どもたちは症状の進行が早く、命を落とす危険も高くなります。経過観察のための一時ケアセンターのほとんどが、エボラ治療センターや待機センターの近くにあるため、発症した子どもたちをそれらの施設に迅速に搬送することができます。

家族のように

アルフレッド・プジェーさんは、ジェームズくんたちが3週間身を寄せている、経過観察のための一時ケアセンターを運営しています。アルフレッドさんは家族11人を失い、自身もエボラに感染しましたが、幸いにも回復を遂げました。そのため、ケアセンターに身を寄せる子どもたちの気持ちが手に取るように分かります。

エボラ根絶のため、回復者たちの協力が求められています。ケアセンターでの仕事や看護師、ケア提供者、調理師、清掃員、警備員など、回復者だからこそ果たすことのできる役割が、エボラの感染拡大阻止に重要であると考えるアルフレッドさんは、この呼びかけを快く受け入れています。

センターに身を寄せている5歳の女の子を抱きしめるカディさん。エボラ回復者はウイルスへの免疫があるため、子どもたちと防護服などなしで接することができる。
© UNICEF Sierra Leone/2015/Francia
子どもたちのためのケアセンターで働くエボラ回復者。

「このような施設がなければ、もっと多くの子どもたちの命が失われていたことでしょう。かつて、4人の兄弟姉妹が身を寄せていました。うち2人がエボラに感染しているということが分かり、すぐに隔離ケアを行った結果、残りの2人にエボラが感染することはありませんでした」(アルフレッドさん)

カディ・パンダさんは、エボラで9人の家族を失いました。母親の看病をしていたカディさん自身もエボラに感染してしまいました。母親は後に息を引き取りましたが、カディさんは回復を遂げ、現在このセンターで子どもたちのケアをしています。カディさんは、このセンターに身を寄せている子どもたちと、自分の子どものように大切に接しています。

カディさんは毎朝子どもたち全員の健康状態をチェックし、体調の悪い子どもがいたら、看護師に報告します。また、子どもたちをお風呂に入れ、食事を用意し、不安に感じていたり、寂しがっている子どもがいないかを確認するため、子どもたちの様子にも目を配ります。

「悲しんでいる子どもがいたら、『悲しみに負けて病気にかかってはだめ。私たちみんな、同じ経験を乗り越えて、元気になったの。私にできることは、何でもするから』と伝えています」とカディさんが話します。

家に戻るとき

ジェームズくんは後3日で経過観察期間を終え、兄弟姉妹と一緒に、村に戻ることができます。ジェームズくんは家に戻ることができる日を心待ちにしています。家や畑仕事のお手伝いが恋しいと話すジェームズくんは、将来大きな夢を持ち、学校に戻るのが待ち遠しいといいます。

「勉強はとても大切なので、学校に戻りたいです。教育は、夢を叶える力を与えてくれますから」

そう語るジェームズくんの将来の夢は、大統領になることです。

「シエラレオネの大統領になりたいです。もしぼくが大統領になったら、国を上手にまとめて、子どもたち全員が教育を受け、親のいない子どもをきちんとケアできるようにします」(ジェームズくん)

*名前は仮名です

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