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公益財団法人日本ユニセフ協会

ユニセフ事務局長 アンソニー・レーク
“子どもたちとの出会いが、わたしの仕事の醍醐味”
第3回国連防災世界会議 子ども若者分科会にて

【2015年3月17日 仙台発】

2015年3月17日に仙台にて開催された、第3回国連防災世界会議の子ども若者分科会に、ユニセフ事務局長アンソニー・レークが参加。子どもや若者たちに下記の言葉を伝えました。

* * *

子どもたちとの出会い

第3回国連防災世界会議でスピーチをするアンソニー・レーク事務局長。
©  UNICEF Tokyo/2015/Matsueda
3月17日、第3回国連防災世界会議でスピーチをするアンソニー・レーク事務局長。

わたしの仕事の醍醐味は、世界中にいる皆さんのような若い人たちに出会えることです。例えば、教室でその日学んだことを誇らしげに話してくれる女の子、自分や他の人々の人生をより良い方向に変えられるアイディアを豊富にもった若きイノベーター。

あるいは、描いた絵をわたしに見せてくれる子どもたちに出会います。子どもたちの絵には、確かに日々の生活で直面している困難も描かれていますが、それ以上に、その絵からは、より良い未来を築き上げようとする、子どもたちの決意と勇気が伝わってくるのです。

今日、それらの絵のうちひとつの写真を持ってきました。ここからそれほど離れていない、津波で大きな被害をうけた地域を1年ほど前に訪れたとき、小学校の壁に貼られていた絵のひとつです。この絵は、災害への備えや、災害被害の対処に向けた取り組みを推し進める勇気を描いています。

この絵に描かれた子どもたちは、押し寄せてくる波を恐れていません。特に勇敢な一人の若者は、波に立ち向かってさえいるのです。

この絵が語りかけるメッセージは、わたしたちへの励ましであると同時に、わたしたちに学びも与えてくれます。それは、災害が起こることを防ぐことは不可能ですが、起こりうる災害のために備えることは可能だということです。力を合わせ、ともに行動し、アイディアを持ち寄ることによって、未来に起こりうる災害へより良い備えを実現すること。これがまさに、この国連防災世界会議のテーマなのです。

災害の影響を受ける子ども、年間2億人に達する予測

津波の被害を受けた地域の小学校の壁に貼られていた絵を見せるレーク事務局長。
©  UNICEF EAPRO/2015/de Bono
津波の被害を受けた地域の小学校の壁に貼られていた絵を見せるレーク事務局長。

目を見張るような統計がいくつかあります。1990年代の終わり頃まで、気候変動に関連した災害によって影響を受ける子どもたちは、年間約6,600万人でした。しかし今後数十年のうちに、その数は3倍の2億人に達すると予測されています。より多くの子どもたちが命を落とし、より多くの子どもたちが学校に行けなくなり、より多くの子どもたちが人身売買や虐待、搾取、強制労働のリスクに晒されることになるでしょう。

それは、最も貧しく、最も脆弱なコミュニティの子どもたちにとって、特に重大なリスクです。適切な排水施設や暴風雨管理システムが備わっていない都市部のスラム街で暮らす子どもたち。辿りつくのが困難な、都市から遠く離れ、孤立した地域で暮らす子どもたち。宗教や性別、人種、あるいは障がいがあることから、偏見に苦しみ、十分なサービスを受けられない子どもたち。

世界のすべて子どもたちは、どこに住んでいようとも、どのような困難があろうとも、学び、健康に暮らし、保護され、成長する機会をもっています。災害への備えと発生時の対応に向けた努力は、すべての子どもたちのこうしたニーズに応えるものでなければなりません。

命を守るための、防災への取り組み

ここ日本では、災害への備えと発生時の対応に向けた取り組みによって、命が守られています。岩手県では、地震と津波が発生した当時、およそ2万人の幼い子どもたちが353の保育所にいました。保育所の園舎は被災し大きな被害を受けましたが、毎月の避難訓練や教員研修、さらには非常袋の準備などの計画的な備えのおかげで、保育中の子どもたちやスタッフに犠牲者は出ませんでした。

他にも多くの事例があります。恒常的な飢饉に直面するニジェールでは、コミュニティを基盤とした保健ケアや予防接種、蚊帳、そして微量栄養素などの支援を強化することによって、2009年だけで推定6万人の子どもたちの命が守られました。

インドネシアやハイチ、フィリピンなどでは、洪水や地震、サイクロン、津波に耐性のある学校の建設が進められています。

マダガスカルでは、早期警報システムの構築や、サイクロンに耐えられる教室を建設する取り組みが進められています。その成果として、2006年以降、洪水や暴風雨によって、学校で子どもが死亡するケースはゼロです。ひとりの子どもも亡くなっていないのです。

水泳の訓練のように、子どもたち自身に災害の備えをさせることは、基本的なようで、とても革新的なアイディアです。例えば、季節によってはモンスーンが到来し、毎年1万8,000人もの子どもが溺死している国バングラデシュの子どもたちにも、水泳訓練が行われています。バングラデシュでは、モンスーンが到来する季節、数百人の学生が船上の学校で学んでいます。このように教育を続けられる機会は、子どもたちの将来に極めて重要なのです。

子どもや若者のメッセージ

先ほど話に挙げた仙台の小学校を訪問した際の、もう一つの思い出があります。子どもたち自身が考えた未来のまちの模型を見せてくれたのです。現在のまちの姿ではなく、子どもたちが願う、復興後のまちの姿です。そこには新しい発電システムがあり、広い農地や住宅地がありました。その模型は、子どもたちの想像力の素晴らしさを表していました。子どもたちはまた、明確で大切なメッセージを伝えてくれました。

それは、「わたしたち若者や子どもは、未来に起こりうる災害に対応するための支援を必要としています。わたしたち子どもの声を聞いてください。わたしたちにも、参加させてください」という声です。

そして、多くのコミュニティでは、子どもたちが参加し始めています。洪水と地滑りが発生しやすいブラジルの都市リオデジャネイロでは、子どもたちが凧に取り付けたカメラを使用して彼らのコミュニティを地図に起こし、潜在的なリスクを特定しています。ネパールでは、子どもたちの作ったコミュニティや学校の地図には、緊急事態下に水源や排水施設を守り、雨季でも安全な通学路を確保するための、村や学校の緊急計画が練り込まれていました。

わたしたちは今日、パネリストの方々に、災害への備えや災害からの復興の計画を策定するにあたり、どのようにコミュニティを支援しているのかを示していただくことで、より多くの事例やアイディアを知ることでしょう。

わたしたちは洪水や暴風雨、干ばつの発生を防ぐことはできません。しかし、よりよい計画を策定し、準備し、対応することで、大災害に陥らずに済ませることはできます。

そして、特に若者たちなど、コミュニティのことを最もよく知っている人たちの意見に耳を傾けることで、大災害を防ぐことができるでしょう。今日、わたしは、若い人たちの意見やアイディアを聞けることを心待ちにしています。

すでにお話したように、それはわたしの仕事の醍醐味なのですから。

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