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公益財団法人日本ユニセフ協会
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東日本大震災復興支援 第261報
「お父さん」を支えるために
父子家庭+父親支援プロジェクト
9/26(土)大阪でセミナー

【2015年8月22日 東京発】

2011年3月11日に発生した東日本大震災。日本ユニセフ協会は、ユニセフが全世界で展開する支援の柱の一つである“子どもの保護”の観点から、震災によって保護者を失った子どもたち、中でも、日本国内はおろかユニセフの開発途上国の現場でも支援の対象として焦点が当てられることが稀な、母親を失い父子のみとなった家庭の子どもたちへの支援に取り組みました。

岩手・宮城・福島の3県で、震災によって父母いずれかをなくし、遺児となった子どもの数は1,514人(厚生労働省発表 2014年3月1日現在)。この約半数が、母親を亡くした子どもたちです。

「お父さん」に焦点

「イクメン」という言葉に代表されるように、お父さんによる子育ては、今や、それほど特別なことではなくなりました。しかし、家庭や保育園、幼稚園、そして学校等、実際の子育ての現場の主役は女性が中心。特に、東日本大震災で被災した多くの地域では、「イクメン」は、まだテレビや雑誌、インターネットの世界の話でしかなかったというのが現実です。

東日本大震災の被災地に限らず、全国的に父子家庭支援や男性を対象にした子育て支援策や制度の整備は遅れています。子育てに関する支援や援助の多くの現場でも、母親だけが支援の対象として捉えられる傾向にあるのが実情です。東日本大震災はこうした状況の中で発生しました。そして、多種多様な支援が寄せられる中でも、突然、子育ての主役となった“お父さん”を支える活動は限られていました。

2011年7月、当協会は、NPO法人新座子育てネットワークと共同し、「東日本大震災 父子家庭+父親支援プロジェクト」をスタート。福島、宮城、岩手各県で、子ども支援やひとり親支援、子育て支援に関わる専門家やボランティアの方々約500名に、「お父さん支援員」として必要な知識や技術を身に付けていただく研修機会を提供。お父さん方が、研修受講者に子育ての悩み等を気軽に相談できる「パパステーション」を3県107カ所に設置し、今年3月末まで、その活動をサポートしました。

ユニセフハウス(東京)には、子ども支援、遺児家庭支援などに携わる方々約40名が集まりました。
© 日本ユニセフ協会/2015
ユニセフハウス(東京)には、子ども支援、遺児家庭支援などに携わる方々約40名が集まりました。

約4年間にわたるこの活動で得た知見を、日ごろからの「父子家庭+父親支援」につなげていただくため、当協会と新座子育てネットワークは、本年3月、仙台で開催された第3回国連防災世界会議で報告書を発表。この度、プロジェクトの企画・運営・推進・評価に関わった専門家の方々も東京にお招きし、全国ひろば連絡協議会との共催で、セミナー『震災支援から学ぶお父さん支援』を開催しました。

震災の知見

8月22日(土)、セミナー会場のユニセフハウス(東京)には、南は愛媛県今治市から北は岩手県釜石市まで全国7都県から、自治体や地域の各種団体・サークルで子ども支援、遺児家庭支援などに携わる方々約40名が集まりました。

4年あまりにわたり実施した「東日本大震災父子家庭+父親支援プロジェクト」の報告に始まったセミナーでは、震災で父子家庭となったお父さんの声をビデオで紹介。日本ユニセフ協会はじめ多くの団体が展開したユニセフ「子どもにやさしい空間」支援や、震災発生直後の子育て支援拠点の動き、震災直後の避難所での親子の居場所作りの経験の発表など、「災害への備え」をテーマに、東日本大震災から得た知見が参加者に共有されました。

“今”に活かす

最後は、「父親の子育を支援できる拠点とするために」をテーマに講師陣と参加者が意見を交換。
© 日本ユニセフ協会/2015
最後は、「父親の子育を支援できる拠点とするために」をテーマに講師陣と参加者が意見を交換。

「子育ての場に出てこない」「外に支援を求めない」。父子家庭に限らず、世の中のお父さん方に広く見られるこうした傾向は、震災支援の現場でも大きな課題でした。恒吉紀寿北九州市立大学准教授は、「父親支援の動向と拠点の支援力について」と題した講演で、一般的にも、特に子どもが乳幼児期の場合、父親が保護者会などのグループ活動に参加するケースが少ない傾向にあるということや、男性は、様々な子育て支援の拠点利用に“ハードル”を感じる場合が多い実態を報告。支援側も、父親目線での声かけや、お父さんが利用しやすい曜日や時間帯などに支援拠点の活動/開館時間を合わせるなど、父親に配慮した工夫をしていく必要性が訴えられました。仙台市で子育て支援活動を展開する一般社団法人マザーウイング代表の出雲洋一さんからは、同団体の経験から得られた父親向けの様々なイベントを開催する際の“コツ”を伝授されました。続いて参加者は、NPO法人新座子育てネットワークの坂本純子代表の「父親支援の基礎講座」を受講。坂本さんが紹介した地域子育て支援拠点が利用できる父親支援のヒントやガイドラインを念頭に、チェックシートを使い、所属する団体や組織の“お父さん支援度”を自己評価していただきました。

セミナーの最後は、「父親の子育を支援できる拠点とするために」をテーマに講師陣と参加者が意見を交換。「父親のジェンダー意識(母親/女性との役割分担に関する意識)の改革に、支援拠点/支援者はどこまで食い込むべきか」という設問には、「本人同士が決めれば良いことで支援拠点/支援者が決めるべきことでない」、「利用者の方々が快適と思うジェンダー度合いは異なるので、支援拠点/支援者の中立性が重要」、「子育てに積極的なお父さんも排除しないことは、極力意識すべき」などの意見が出されました。また、子どもたちの成長などに伴って変化するニーズに切れ目のない支援を提供することの重要性や、子育て支援拠点側が“待つ”だけでなく、時として地域に出て行くアウトリーチ型の支援も求められていることなどが議論されました。

次は大阪で

「南海トラフに備えて父子家庭への支援が参考になりました」。「被災父子家庭だけでなく、(平時からの)“父親支援”が必要であることを学びました」。

今回参加された皆様から大変好評をいただいた本セミナーを、9月26日(土)、大阪で開催いたします。ぜひご参加ください!

* * *

セミナー「震災支援から学ぶお父さん支援」
イベント正式タイトル:
「ユニセフ東日本大震災被災父子家庭支援プロジェクトから学ぶ地域子育て支援拠点における父親支援の重要性」

■日 時2015年9月26日(土)
10:30〜16:00
■会 場ドーンセンター5階大会議室2
(大阪市中央区大手前1-3-49)
■対 象子育て支援センターやつどいの広場・子育てひろば、児童館等で、地域子育て支援に取り組んでいる方
■定 員50名(先着順・定員になり次第締切)
■参加費無料
■申込み子育てひろば全国連絡協議会のホームページよりお申込みください

参加者の声

「母親だけでなく、父親支援の重要性を実感できました」

「父親支援がなぜ必要であるのかが今回わかったような気がします」

「今後の自分の施設における父親支援を考えるヒントを得られました」

「大変勉強になりました。今後も、支援にたどりつけない家庭へのアプローチ方法や具体的なサポート方法など、常に学びながら支援を進めていきたい」

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