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日本ユニセフ協会
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シエラレオネ
エボラで隔離された村
保護者を伴わずに暮らす子どもたち

【2015年8月27日  トンコリリ地区(シエラレオネ)発】

エボラ出血熱の感染拡大の恐れがある地域に対する隔離は、シエラレオネの人々の日常生活に大きな影響をもたらしています。そして特に、保護者を伴わない子どもたちの安全やケアが課題となっています。

* * *

エボラの影響が続くシエラレオネ

救急車で一時ケアセンターに向かうエマさんと弟たち。

© UNICEF Sierra Leone/2015/Kassaye

救急車で一時ケアセンターに向かうエマさんと弟たち。

エマ・カマラさんの母親は仕事のために内陸の地へと向かい、近所の人に3人の子どもの面倒を頼んで長い間家を空けていました。母親は、家を離れるにあたって、子どもたちが後に隔離状態に置かれることになるとは、想像もできなかったことでしょう。

「時々、お母さんは仕事のために1カ月ぐらい家を空けることがあります。お母さんは、私たちが今隔離されていることは、知らないと思います」と、16歳のエマさんが語ります。エマさんの母親が家を出発したのは火曜日のことでした。そのすぐ後の金曜日、トンコリリ地区で新しいエボラの感染が確認され、一家が暮らすマッセセベ村も隔離の対象となりました。

マッセセベ村のほとんどの住民が、農業で生計を立てています。そしてしばしばトンコリリ地区北部にある鉱山地帯に仕事に出かけ、家計を補うのです。ダイヤモンドや金、鉄、レチルなどの鉱業は、シエラレオネ最大の輸出収入です。

シングルマザーで土地を所有していないエマさんの母親は特に弱い立場に置かれており、村の外に仕事に出かけて得る現金収入に頼らざるをえません。

マッセセベ村のあるトンコリリ地区でエボラの感染が確認されたのは、150日間で初めてのことです。エボラが流行している首都のフリータウンに旅行に出かけていた男性が、村に戻ってからエボラの症状を発症したのです。

外の世界からの隔離

この男性がエボラで命を失ったことで、エマさんを含め、村全域が隔離の対象となりました。オレンジ色のプラスチックの隔離用柵が、道路を境に民家と外の世界とを分ける壁となったのです。再び自由に外出できるようになるまでは、エボラ・ウイルスの潜伏期間である21日間の隔離が必要です。

村全域の封鎖は、容易なことではありません。農地や水汲み、学校、病院、仕事など、住民たちの基本的な生活に必要な移動をも、すべて制限されることになるのです。そのため、政府はユニセフやWHO、NGOなどと協力し、隔離されているすべての住民が水や食糧、トイレ、衛生施設や物資へのアクセスが得られるように対応を行いました。また、おもちゃやラジオ、ゲームが、隔離されている子どもたちのためのアクティビティやラジオ教育プログラムのために役立てられました。

しかし、このような隔離状態は、保護者を伴わない子どもたちに理想的な環境とはいえません。

「隔離された村の子どもたちの生活状況を調査している際、エマさんと二人の弟が子どもたちだけで生活していることが分かりました」と、ユニセフ子どもの保護担当官のエイミー・スローリーが語ります。「子どもたちが保護者を伴っていない場合、衛生的な生活をきちんと送れているか、特に10代の女の子にとっては大切なことですが、安全な生活を送ることができているか、誰も確かめることができないのです。経過観察のための一時ケアセンターに身を置くことが、エマさんたちにとって最善だと判断しました。そしてその間、母親を探し、子どもたちの状況を伝える予定です」

子どもたちへのケアと保護

ユニセフが支援する一時ケアセンターで隔離期間中に生活を送るエマさんと弟。

© UNICEF Sierra Leone/2015/Kassaye

ユニセフが支援する一時ケアセンターで隔離期間中に生活を送るエマさんと弟。

ユニセフの支援のもとパートナー団体によって運営されている一時ケアセンターでは、エボラの症状を発症していないながらも保護者を伴わず、高い危険に晒されている子どもたちの一時的なケアと保護を行っています。このセンターでは、エボラ・ウイルスへの免疫がある訓練を受けたエボラの回復者たちが、子どもたちにエボラの症状が出ていないかを注意深く見守りながら、ケアやカウンセリング、サポートを行い、本やおもちゃ、映画などで子どもたちが楽しく時間を過ごせるようにしています。エボラの症状が表れた場合、子どもたちは検査を行うためにエボラ治療センターに搬送されます。

子どもたちはスタッフに出迎えられ、登録を済ませると、お風呂に入って新しい服に着替えます。子どもたちはすぐに新しい環境に適応します。

「みんな元気に過ごしています。弟たちも大丈夫そうです。ゲームをしたり、映画を観たりして楽しい時間を過ごしています。今朝も、映画を観ました。食べ物もたくさん食べています。家が恋しいと思ったことはありません。みんな、ここに来ることができて幸せです」と、エマさんが語ります。

母親は村が隔離状態にあることを耳にしていない可能性もあるため、エマさんたちが一時ケアセンターに身を寄せている間、子どもたちの居場所を知らせるため、母親の捜索が行われました。

再び家に戻る日

21日間の隔離期間が終了し、エマさんや弟たちは自宅へと戻りました。隔離生活から日常生活に戻ることを容易にするため、衣服やシーツ、マットレスなどの支援物資が手渡されました。

母親には、おじさんを通して子どもたちの様子が伝えられました。そして母親がいない間、おじさんが子どもたちの元を定期的に訪れてくれることになりました。

シエラレオネで最後に確認されたエボラ患者もまた、マッセセベ村出身でした。この患者は8月24日に退院を果たし、新たな感染者が確認されなければ、42日後にシエラレオネはエボラの終息を宣言することができます。

8月26日時点で、シエラレオネでは8,697人のエボラの感染が確認されており、3,586人が命を失っています。

ユニセフはWHOや英国国際開発省、米国海外災害援助局、日本政府、アイルランド外務省、ユニセフ国内委員会など、さまざまなパートナー団体と協力し、エボラへの対応と影響を受けた地域の復興を支援しています。ユニセフはシエラレオネでのエボラ危機への支援のため、1万7,800万ドルを国際社会に要請しています。そのうち、7月末時点で確保できた資金は1万2,260万ドルに留まっており、5,520万ドルの資金が不足しています。

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