メニューをスキップ
日本ユニセフ協会
HOME > ニュースバックナンバー2016年 >

世界の子どもたち

チャド
結婚で夢を奪われる女の子たち
児童婚の慣習を終わらせるキャンペーン

【2015年11月20日  ンジャメナ(チャド)発】

2050年までに、アフリカはアジアを抜いて世界で最も“子どもの花嫁”が多い地域になると予測されています。アフリカにおける児童婚に関するユニセフの新しい報告書によれば、アフリカ全体の子どもの花嫁の数は2050年までに現在の1億2,500万人から倍増し、3億1,000万人となる恐れがあると指摘されています。

チャドの15歳の女の子が抱いていた教育と仕事への夢も、12歳で結婚させられた際に失われました。チャド政府はユニセフなどの支援を受け、児童婚の慣習を終わらせるキャンペーンを展開しています。

* * *

女の子だから

12歳で結婚したアミナさん(15歳)。ムスタファくん(3歳)とハルンくん(1歳)と一緒に。

© UNICEF Chad/2015/Gonzalez

12歳で結婚したアミナさん(15歳)。ムスタファくん(3歳)とハルンくん(1歳)と一緒に。

アミナさん(15歳)には、同年齢の他の女の子と同じように、将来への大きな夢があります。「病気の人を救うためにお医者さんになるのが夢です」と、アミナさんが目をきらきら輝かせます。

しかしアミナさんのこれからの人生は、描いた夢ほど輝かしいものではないかもしれません。12歳で学校を中退、結婚を余儀なくされた時、状況が深刻に変わってしまったのです。アミナさんは、この年齢で既に二人の子どもを持つ母親なのです。ムスタファくん(3歳)とハルンくん(1歳)の息子2人とともに、ワンルームの粘土製住居で暮らしています。

アミナさんが暮らす場所は、小さな村でもへき地でもなく、チャドの首都ヌジャメナのにぎやかな地域です。彼女の小さな家にはバクール(お香)の香りが漂い、カラフルな装飾が殺風景な部屋に関わらず心地よい雰囲気を生み出しています。

「小学校には2年しか通っていません。家族で唯一の女の子だったし、長女だったから、やめざるをえませんでした。料理をしたり家事をしたりしてお母さんを助けなければならなかったのです。学校をやめてすぐ、お母さんは私を結婚させました」とアミナさんが言います。

アミナさんは、教育を受けることで、自分で判断する能力がつき、自身の道を決断できるようになると思っていました。しかし、その夢は母親の考えとは遥かにかけ離れていました。アミナさんの母親は、女の子の人生における役割は、結婚し出産し、夫の面倒をみることだと捉えていたのです。

「家族がわたしに結婚するよう言ってきた時、わたしは何も言えませんでした」とアミナさんは続けます。「わたしが何か言ったところで、お母さんは受け入れなかったでしょう。だから、わたしは黙って従い、結婚したのです。お母さんたちも、かつてそうして結婚してきたのですから」

チャンスを奪われて

「病気の人を救うためにお医者さんになるのが夢です」と、アミナさん。

© UNICEF Chad/2015/Gonzalez

「病気の人を救うためにお医者さんになるのが夢です」と、アミナさん。

15歳を迎えると、多くの女の子が将来像を描き、どうすれば自分の人生をより良くできるかを考えるようになるでしょう。しかし、毎年1,500万人もの女の子がまだ子どもの年齢で結婚を強要され、やりたいことや夢を叶えるチャンスを奪われているのです。

「お母さんや兄たちと実家で住んでいた頃、兄弟はみんな学校に行っていました」とアミナさんは言います。「そんな兄弟たちが羨ましかったです。できることなら今すぐにでも学校に戻って、兄たちみたいになれればって思います。職を手にして、自分の家を建てて、子どもたちを育てるのです」

児童婚はチャドで広く行われている慣習で、10人中およそ7人の女の子が、18歳未満で結婚しています。結婚は娘にとって最善の利益だと、多くの両親が信じているのです。特に貧困率の高い地域では、経済的な理由から両親が娘を結婚させることもあります。

しかし、児童婚をした”子どもの花嫁”は学校を中退する確率が高まるとともに、身体が妊娠や出産するには十分に成長しきっていないため、命を危険に晒す可能性もあるのです。

ユニセフ・チャド事務所のフィリップ・バラニュ・ビゴ代表は、「児童婚を余儀なくされる女の子たちは、充実した人生を送るのに必要とされる身体的、感情的そして教育的なスキルを習得するチャンスを失ってしまうのです。児童婚は子どもの将来を危険に晒すだけでなく、その子どもの家族やコミュニティ、ひいては世界全体の発達、平和そして繁栄をも危機に晒しているのです」と指摘します。

新たな約束

ユニセフや他の国連機関の協力とともに、チャド大統領と大統領夫人の呼びかけの下、2015年にはアフリカ連合による「児童婚を終わらせよう」キャンペーンが開始されました。

「今日に至ってもなお、我々が児童婚を推奨し続けているとは、許容し難いことです。アフリカ全土において、未だに、女性性器切除を含めたこのような慣習が続いているのです」と、チャドイドリス・デビー・イトゥノ大統領は、キャンペーン開始の場で述べました。

「この慣習を終わらせるためには、親や家族、コミュニティ、宗教指導者、政策決定者、市民社会の皆が、責任を持って行動を起こさなければなりません。この取り組みにおいて、我々は信念をひとつに、一致団結しなければならないのです」

この児童婚に反対する全国キャンペーンはあらゆる場所で展開され、幅広いコミュニケーション手段を用いた社会的動員の努力が実を結び、2015年3月、イトゥノ大統領は18歳未満の児童の結婚を禁止する法案に署名し、法案は6月に議会によって採択されました。

しかしながら、この法案が実際に施行されるにはまだ道のりは遠く、明確な変化を促すプログラムの導入や、女子教育の促進には、抜本的な財源が必要とされています。女子教育は、児童婚を終わらせるための、そして、女の子が自らの夢を現実にするための、最も重要な手段です。

シェアする


トップページへ先頭に戻る