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日本ユニセフ協会
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世界の子どもたち

ソマリア
元子ども兵士の子どもたち
職業訓練で新たな人生のスタートへ

【2016年2月11日  ソマリア発】

訓練生用の青い作業着を身につけた17歳のアブディくんが、最新の注意を払いながら、木製の板に取り付けられた赤や青の電線を配線しています。そのすぐ近くで、同じく電気技師の訓練を受ける同級生がはしごに登っていきました。アブディくんが配線した蛍光灯がきちんと機能するかを確認しましたが、電気はなかなか上手く点きません。

軍服から作業着へ

かつて武装グループと行動を共にしていた少年たち。現在は支援を受けて職業訓練や心のケアを受けている。

© UNICEF/UN09598/Rich

かつて武装グループと行動を共にしていた少年たち。現在は支援を受けて職業訓練や心のケアを受けている。

「兵士だった頃は、ライオンのように勇敢でした」と、アブディくんが語ります。「紛争のなか、他の武装グループと戦っていました」

電線や電球との格闘から一息つき、アブディくんが青い作業着ではなく軍服を身につけていた日々について語り始めました。武装グループの思想と給料に魅了され、アブディくんは子ども兵士としてソマリアで長く続く紛争下で戦闘に参加していました。

「はじめは、良い人たちだと思ったのです。武装グループの思想は、宗教に基づくものでした」と、アブディくんが真剣な眼差しでジェスチャーを交えながら語ります。それはまるで、これまでずっと背負っていた重荷を解き放とうとしているかのようでした。「でも結局、彼らの考えはイスラム教の誤った解釈だと気が付いたのです。武装グループのしていることは、私たちの国やコミュニティを傷つける行為以外、何でもないのです。だから、僕は武装グループから離れることにしました」

「家族は僕が家に戻ってきて、とても幸せそうでした。でも、僕は何をしたらいいのか、どうやって毎日を過ごしたらいいのか分かりませんでした」

やりがいのある仕事に就くための十分な教育や技術もなく、希望すら失っていたアブディくんは、自宅へ戻った後も絶望の淵に追いやられていました。そのとき、元子ども兵士のための職業訓練プログラムについて耳にしたアブディくん。家族の励ましのもと、大工や配管工、電気技師、仕立て屋などになるために必要な技術を学ぶことができる、ユニセフが支援するプログラムへの参加を決めました。

取り戻した自信と生きがい

かつて武装グループと行動を共にしていた少年たちや徴用の危険に晒されていた子どもたちが、ユニセフの支援するセンターで技術訓練を行っている。

© UNICEF Somalia/2015/Rich

かつて武装グループと行動を共にしていた少年たちや徴用の危険に晒されていた子どもたちが、ユニセフの支援するセンターで技術訓練を行っている。

「このコースを修了して、プロの電気技師としていい仕事に就いている自分の姿が目に浮かびます」と、自信に満ち溢れた声で話しました。アブディくんは今、手にしたチャンスを最大限に生かすべく、努力を続けています。そして、アブディくんには同じ志を持った仲間がいます。

中庭に戻ると、訓練生たちが本格的な技術訓練に精を入れていました。大工技術を学ぶグループでは、少年たちが電気ドリルを一生懸命使っています。反対側に目をやると、ドリルと同じぐらい大きな音を立てながら、別の少年たちが研磨機で木材を扱っています。そして建物を挟んだ反対側では、配管技術を学ぶ若者たちが集まり、先生の指導のもと、一人ずつ建物の上に登ってさまざまな形や大きさの道具を使う練習をしていました。

アブディくんたちが作業する中庭とは離れた場所にある大きな教室では、少女たちが忙しそうに作業を続けています。少女たちが手にしているのは、のこぎりや電気ドリルではなく、針や糸、ミシンです。上手にミシンを扱う姿は、少女たちがミシンの訓練を始めてたった半年の研修生だということが信じられないほどです。

武力紛争に直面し、脆弱な立場に置かれているのは少年だけではありません。このセンターで訓練を積む100人の訓練生のうち、30人は女の子です。そして、彼女たちもまた、武力グループに徴用されていたか、徴用される危険のあった子どもたちです。

武装グループに身を置く子どもたち

20年以上続いているソマリアの紛争の最も甚大な影響の一つが、子どもたちへの暴力や虐待、搾取です。ユニセフは現在約5,000人の子どもたちや若者がさまざまな武装グループに身を置いていると推定しています。そして、特に中部や南部の地域で深刻な状況が続いています。

「アル・シャバブという武装グループに入りました。まだ子どもでした。きちんとした判断を下すには、あまりにも幼かったのです」と、訓練生のアリくんが話します。ユニセフは欧州連合や英国国際開発省、カナダや米国海外災害援助室の資金援助のもと、子どもたちの支援を行っています。また、危険下にある子どもたちを保護し、新しい生活をスタートさせることを望む子どもたちへ総合的な支援を行うため、現地の担当官やNGO、市民社会団体、コミュニティを支援しています。

訓練を修了すると、訓練生一人ひとりに「スタートキット」と呼ばれる支援物資が提供されます。そして、子どもたちが地域社会に再び円滑に戻ることができるよう、支援が続けられます。職業訓練などの実りある支援が、武装グループの勧誘から子どもたちを守り、家族やコミュニティの中で再び生活を続けることができるようになるために非常に重要です。

前を向いて

アブディくんもアリくんも、決して武装グループには戻らないと強く決意しています。

「武装グループでの生活は、とてもストレスが溜まります」と、アリくんが語ります。「武装グループに入ろうとしている人たちには、もう一度考え直してほしいと伝えたいです。武装グループに入っても、いい生活など待っていません。教育を通して自分の能力を高めることが、いい生活を手にするための唯一の道なのです。武装グループには決して入ってはいけません。そこにはただ、死が待っているだけです」


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