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日本ユニセフ協会
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ラテンアメリカ・カリブ地域
感染拡大が続くジカ熱
ユニセフ 感染予防のための情報提供と啓発活動を推進

【2016年4月1日  パナマシティ発】

母親と小頭症の赤ちゃん。

©UNICEF/BRZ/Ueslei Marcelino

母親と小頭症の赤ちゃん。

蚊が媒介し「小頭症」との関連性が疑われる感染症「ジカ熱」が、ブラジルのみならず中南米地域全体に広がっています。ユニセフ(国連児童基金)は、影響を受けている各国の現地事務所を通して、感染リスクを伝えるコミュニケーション活動や、コミュニティ支援を実施し、これまでにラテンアメリカ・カリブ地域の1,610万人の人々を支援してきました。

概況

  • ジカ熱感染が報告されており、ユニセフが活動を展開しているラテンアメリカ・カリブ諸国:ボリビア、ブラジル、コロンビア、コスタリカ、キューバ、ドミニカ共和国、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、ガイアナ、ハイチ、ホンジュラス、ジャマイカ、メキシコ、ニカラグア、パナマ、パラグアイ、スリナム、ベネズエラ
  • ジカ熱感染が疑われるまたは確認された事例(2016年3月24日時点):19万2,000件以上
  • ブラジル国内で小頭症または中央神経系の異常の疑いがある事例(2015年10月22日から2016年3月19日まで):6,671件
  • ブラジル、コロンビア、エルサルバドル、ホンジュラス、スリナム、ベネズエラではギラン・バレー症候群の増加が報告されている
  • 1,610万人が、ジカ熱のリスクに関する情報を提供され、コミュニティ支援の対象となっている

3月以降、ジカ熱の報告件数が急増

ジカウイルスを媒介するネッタイシマカ

©UNICEF/BRZ/Ueslei Marcelino

ジカウイルスを媒介するネッタイシマカ

2016年3月24日時点で、ジカウイルスの感染が疑われる、または確認された事例は19万2,000件以上。これは、3月16日時点の14万5,000件に比べ、32パーセントの増加にあたります。またブラジル国内で、2015年10月22日から2016年3月19日までに小頭症または中央神経系の異常の疑いがある事例は6,671件報告され、3月16日時点の5,909件からさらに増えました。同時に、ブラジル、コロンビア、エルサルバドル、ホンジュラス、スリナム、ベネズエラでは、神経疾患の一種「ギラン・バレー症候群」の増加も報告されています。

高いリスクに曝されるブラジル北東部の子どもたち

ブラジルのシレネイデさんは、妊娠4か月の頃、胎児のイアネちゃんに先天的異常があることを知り、生後8カ月の時に小頭症と知らされました。「私の人生のすべてはイアネのためにあります」とシレネイデさんは話します。「娘が話したり歩いたりできるようになるかどうか、医者はまだはっきりとしたことは言いません。でも、何が起ころうとも、娘と私はいつも一緒にいます」

イアネちゃんは、パライバ州カンピナグランデのペドロ市民病院内の特別診療室で治療を受けている44人の乳幼児のひとりです。カンピナグランデは、ブラジル半乾燥地帯で、ユニセフ「シール・イニシアティブ(子どもの生活改善を行う自治体に対する認証キャンペーン)」を通じて子どもの権利を守るための取り組みを行っている、1,134の自治体のひとつです。ブラジル保健省によると、カンピナグランデはネッタイシマカによる感染リスクの高い状況にあります。

各国のユニセフ現地事務所、感染予防を推進

ブラジル・カンピナグランデの病院で情報収集にあたるユニセフ職員

©UNICEF LACRO

ブラジル・カンピナグランデの病院で情報収集にあたるユニセフ職員

ユニセフ・ラテンアメリカ・カリブ地域事務所のサポートのもと、ユニセフ・ブラジル事務所をはじめとする19のユニセフ現地事務所が、ジカ熱の感染予防に関する情報提供や研修活動を行っています。以下がその活動の一例です。

  • ブラジル:ネッタイシマカに対する新たな「シール・イニシアティブ」の戦略的行動に関する研修を23回実施し、9州の681の自治体から2,258人(730人の青少年を含む)が参加しました。
  • コロンビア: 354の学校に対する働きかけの調整、及び、500人の教員にコミュニティへの支援やごみ処理に関する研修を行っています。
  • ホンジュラス:病原媒介生物による疾患の予防と管理に関する基礎的な知識、考え方、行動を啓発しています。
  • メキシコ:先住民に関する政策を担当する政府部局とともに、農村部や先住民のコミュニティに暮らす660万人に対して、予防啓発のメッセージを発信するための、ターゲット戦略を立案しています。

先端技術を活用したナレッジマネジメントを導入

ユニセフは、各国でのジカ熱の感染予防を効率的に進めるため、情報収集や分析において最新の技術を用いています。

・RISK MODELING TOOL(リスク・モデリング・ツール)

昆虫、疫病、気象、移動に関するリアルタイムのデータを用いて、ジカ熱の感染拡大の特定を助けるツール。これを用いることで、ある一定の期間内に高リスクとなる地域に対して、予防対策や予防のためのコミュニケーション活動を集中的に実施できます。このツールは、緊急事態およびその影響の把握や対応に関して、さまざまなパートナー団体から集められた情報を格納したデータベースを通して、作られています。ブラジル、コロンビア、パナマのユニセフ現地事務所が、試験的な運用に参加しています。

・U-REPORT (ユー・レポート)

グローバル・イノベーションセンターによるサポートと、IFRCとのパートナーシップにより、「ジカウイルスU-REPORT (ツイッターやモバイルアプリ等を通したコミュニケーションキャンペーン)」を7カ国(ブラジル、ボリビア、コロンビア、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ペルー)で開始。ネッタイシマカへの対応において、特に若者、青少年、保健関係者の参加促進を目指しており、予防のための情報、および、ベクター・コントロール(媒介蚊の制御)キャンペーン参加促進のための情報共有に用いられています。U-REPORTを通じて意見を交換したりアンケートに回答したりするU-Reporter(ユー・レポーター)の募集が、2016年3月28日に開始されました。

・ソーシャルメディア・モニタリング

ラテンアメリカ・カリブ地域全土で国レベルで実施されているコミュニケーションキャンペーンの改善のため、ユニセフ・ブラジル事務所と共同で日次モニタリングを実施し、活用するデータを収集しています。

さまざまなニーズに対応、支援が不可欠

ユニセフは、ジカ熱への対応に必要な計1,380万米ドルの支援を要請しています。これには、ラテンアメリカ・カリブ諸国における緊急対応に必要な880万米ドル、予防や研究開発に関する世界規模での支援の取り組みに必要な500万米ドルが含まれています。

ラテンアメリカ・カリブ諸国における880万米ドルの要請額に対し、ユニセフ・ラテンアメリカ・カリブ地域事務所はこれまでに199万米ドル(30.6パーセント)を確保しています。さらに、子どもたちと家族の緊急の人道支援ニーズに応えるため、通常予算から71万1,000米ドルの予算を割り当てています。しかし、ジカウイルスの爆発的な感染拡大に直面している各国の緊急対応を支援するためには、追加の資金が必要とされています。国や地域ごとにさまざまな課題やニーズを抱えているといった複雑な事情から、それぞれに沿った支援を柔軟に提供するための資金が不可欠です。

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