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日本ユニセフ協会
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未来のために教育への投資を
緊急事態下で教育を必要とする1,360万人の子どもたち
新たな教育支援基金が目指すもの

【2016年5月20日  ニューヨーク発】

25年にわたってユニセフなどの国連機関に携わり、スマトラ島沖地震やシリア危機の影響を受ける国々において人道危機対応にあたってきた、ユニセフ緊急支援プログラム部長のアフシャン・カーンによる寄稿文です。

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日常の光景

ナイジェリア難民のためのチャドの仮設の学習センターで学ぶ子どもたち。

© UNICEF/UNI185048/Cherkaoui

ナイジェリア難民のためのチャドの仮設の学習センターで学ぶ子どもたち。

自宅を出て仕事に向かう途中、私は目に飛び込んでくる様々な光景一つひとつに、“日常”を感じずにはいられませんでした。

学校の門が閉まる前に急いで子どもたちを家から送り出す親たち。黄色の通学バスに、わくわくした様子で乗り込む子どもたち。なかには、バスの乗車口の階段に通学かばんを引きずらせ、気乗りしない様子の子どもたちもいました。通勤や通学する人たちがニューヨークの地下迷路に流れ込み、朝のニュースを聞きながら車や自転車に乗って、多くの人々が混雑した町の中を行き来しています。

学習や開発、そして尊厳のある生活を送るという普遍的な開発目標を、これらの光景以上に目に見て感じ取れることはありません。しかし、世界の多くの子どもたちや家族にとって、この“日常”の中の夢や生活は、あまりにも簡単に砕け散ってしまうのです。

危機下の子どもたち

今日、約2億5,000万人の子どもたちが紛争の影響を受けた地域で暮らしており、5億人以上の子どもたちが洪水のリスクの高い地域で暮らしています。そして、多くの人々が気候変動の脅威に晒されています。さらには、エボラ出血熱の流行などの感染症が、子どもたちの命や未来を奪っています。

では、私たちはどのようにすれば、これらの危機に対してよりよい対応を行えるのでしょうか。暮らしている地域に関わらず、危機の影響を受けるすべての子どもたちが日常や機会、希望を取り戻すための支援を、どうすればもっとよいものにできるのでしょうか。

緊急支援と開発支援

イスタンブールで開催される世界人道サミットに向かう飛行機のなかで、このサミットが、危機下の子どもたちによりよい見通しと長期的な成果をもたらすきっかけとなることを、強く望みました。

人道支援の世界では、緊急支援と開発支援の連携、そしてこの連携を危機のサイクルを絶つ力とするための方法がよく語られます。しかし実際の世界で、これはどのような意味があるのでしょうか。身の安全を求めて自宅から逃れなくてはいけない子どもにとって、地震で家が壊れ、避難所に一人で身を寄せている子どもにとって、そして、感染症の拡大の恐怖で自宅から外に出られない子どもや家族にとって、どのような意味があるのでしょうか。

教育の成果

カメルーン北部の難民キャンプにある学校から歩いて家に戻る子どもたち。ナイジェリア北東部でのボコ・ハラムの暴力により、多くの人々が避難を強いられている。

© UNICEF/UN015793/Prinsloo

カメルーン北部の難民キャンプにある学校から歩いて家に戻る子どもたち。ナイジェリア北東部でのボコ・ハラムの暴力により、多くの人々が避難を強いられている。

私は昨年、レバノンでアヤートさんという少女に出会いました。アヤートさんは、家族と一緒にシリアの自宅から避難してから3年もの間、学校に通うことができませんでした。ユニセフ・レバノン事務所は、教育省や現地のパートナー団体と協力し、非公式教育の機会の拡大を支援しました。その結果、アヤートさんは学習プログラムに参加し、現在は学校で再び勉強することができるようになりました。コミュニティで友達を作り、信頼関係を築き上げ、いくらかの日常を取り戻しています。長期的に見ても、アヤートさんは終わりが見えない危機に対する対応能力を高め、最終的にはより豊かな将来を築いていくための力を身につけることができます。

アヤートさんを支援する教員たちは、このプログラムの一環である研修を受け、自身の専門性をより高めることができました。これは長期的に見れば、コミュニティのすべての子どもたちに恩恵をもたらすものです。そして、学校に通えていない国中のすべての子どもたちが正式な学校に通えるようにするためには、自宅での学習を含めた代替的教育に大きな価値があることを、教育省は改めて認識したのです。危機が勃発する以前からそれらの国々で支援を続けているユニセフは、危機下にも、危機後にも、このプロセスで大きな力を発揮することができます。

子どもたちや家族が自然災害へのよりよい備えができるようにするための支援にも、同様のことが見られます。学校の防災訓練で習った手順に従い、頭を保護し、机の下に隠れて身を守った12歳のネパールの少年の話を思い出しました。この取り組みが少年の命を守り、コミュニティへの影響は減少したのです。

教育を後回しにではできない

5月23日~24日の世界人道サミットでは、緊急事態下の教育に力をいれるための新たな教育基金、『Education Cannot Wait(教育を後回しにはできない)』が正式発表されます。教育は短期的にも長期的にも重要な恩恵をもたらすにも関わらず、世界の人道支援要請額のうち、教育に充てられているのは、平均でわずか2%です。この基金では、緊急事態下で教育を必要としている1,360万人の子どもたちが、人道支援と開発支援の連携で重要な役割を果たす質の高い教育にアクセスできるようにするため、5年以内に36億5,000万米ドルの資金を集めることを目指しています。

危機の影響を受けている国で暮らす子どもたちにはいつも、驚かされ、感動させられます。子どもたちは、直面する壁や危険にも関わらず勉強を続けようとする決意や、逆境にも負けない強さを持っています。そして、安全な通学や学校生活、つまり普通の子ども時代を送りたいという極めてシンプルな夢を持ち続けているのです。

次世代を担う子どもたちは、生き抜かざるを得なかった危機を以ってではなく、逆境を乗り越えて成し遂げた多くのことを以って、語られるべきです。子どもたち一人ひとりが目指す、未来の医者や先生、エンジニアになるための機会を提供することが、私たちの責任です。そうすることで、すべての人が、より安定した豊かな未来を手にすることができるのです。

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