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日本ユニセフ協会
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釜石市「子ども課」の活動を支えた
みなさまのご支援

【2016年7月1日  岩手県釜石市発】

岩手・宮城・福島の沿岸部を中心に震災発生直後から足かけ6年間続けてきた緊急・復興支援活動を本年末で終了するにあたり、日本ユニセフ協会では、支援実施にあたって各自治体からいただいた様々な助言や協力へのお礼を兼ねた活動報告のため、改めて各自治体を訪問しています。

7月1日(金)、日本ユニセフ協会の東日本大震災緊急・復興支援本部本部長を務める当協会の早水研専務理事は、岩手県釜石市を訪問。野田武則市長にもご挨拶に伺いました。

「子育て」を支えたみなさまのご支援

 

震災発生直後から続けてきた支援活動を終了するにあたり、当協会専務理事で東日本大震災支援本部の本部長を務める早水研(写真中央右)が、岩手県ユニセフ協会の方々とともに、活動の報告とご挨拶のため、釜石市長を表敬。野田市長(同左)から、感謝状を頂戴いたしました。

© 日本ユニセフ協会

震災発生直後から続けてきた支援活動を終了するにあたり、当協会専務理事で東日本大震災支援本部の本部長を務める早水研(写真中央右)が、岩手県ユニセフ協会の方々とともに、活動の報告とご挨拶のため、釜石市長を表敬。野田市長(同左)から、感謝状を頂戴いたしました。

日本ユニセフ協会は、1000人あまりの死者・行方不明者と4000棟にも及ぶ家屋や建物が全半壊するという大きな被害を受けた釜石市でも、震災直後の避難所への様々な物資の支援や学校再開のための学用品支援に始まり、子どものインフルエンザ予防接種費用の助成支援や、子どもの虐待・暴力防止のためのCAPワークショップ実施のための支援、父親・父子家庭支援など、様々な活動を実施してまいりましたが、中でも、現在も継続している市子ども課への支援は、他の自治体とは異なった釜石市特有の状況を背景に実施したものでした。

震災前、釜石市は、子どもへの行政サービスの充実を図るため、2011年4月に「子ども課」を新設することを決めていました。震災への対応のため、当初計画通りとはいきませんでしたが、それでも釜石市は、市保健福祉部の中に「次世代育成係」、「子ども福祉係」、「発達支援室」の3つの係で構成される「子ども課」を僅か半年遅れの同年10月に設置しました。

「次世代育成係」は、こども園や幼稚園、保育所等を利用する小学校就学前の子どもの認定、入所調整、保育料の設定などのほか、幼児教育の振興計画や子育て支援に関することを主な業務とする係です。「子ども福祉係」は、児童手当、児童扶養手当、特別児童扶養手当や児童館、児童遊園、学童育成クラブに関すること、母子・父子、寡婦に関することの他、婦人相談(女性が抱える悩み事、生活に関すること、家庭の問題、配偶者などからの暴力に関することなどの相談)や家庭児童相談(児童虐待、家族関係、養育相談、学校生活などの相談)を行います。「発達支援室」では、子どもの発達に関する相談、発達検査、市内教育保育施設訪問による発達支援や教諭・保育士に対する助言、子どもの能力を伸ばすために必要な療育や環境のコーディネートなどを、保健師、臨床心理士が対応します。また、言葉が遅い、落ち着きがないなど育ちに心配のある子どもたちに、年齢、発達に応じた保育・遊び等を提供し、成長を促す療育教室『すくすく親子教室』をに対する助言を行っています。

震災直後の混乱の中ようやく開設に漕ぎつけた「子ども課」でしたが、復旧復興のために多くの予算を必要とした釜石市は、「子ども課」には十分な予算を確保できない状態に置かれていました。一方、震災は、新設された「子ども課」の行政サービスが必要とされる状況も生んでいました。子どもの精神的な発達において小学校就学前後は特に重要な時期ですが、震災発生以降、子どもの健やかな発達に不可欠な子どもや親が安心できる安定した環境での親子のふれあいや遊びの機会が不足した状態が続いたのです。こうしたことも背景に、震災発生から2年半が経過した頃には、言葉の遅れや発音の問題が見られる子どもが震災以前に比べて多く見られるようになったことも報告されました。「発達支援室」は、市内の幼稚園・保育園への巡回や他部署が主管する乳幼児の定期健診にも参加し、就学前の子どもや親子へのフォローアップを実施していましたが、予算の確保がままならず、子どもたちの発達の特徴をより正確に捉え一人ひとりに合った支援や療育を組み立てていくために必要な、多くの自治体が実施する「発達検査」の実施が叶わない状況でした。この状況の改善を支援するため、2013年、日本ユニセフ協会は、釜石市の要請に基づき、この「発達検査」に必要な専用の機器の購入や市職員の研修費用の他、適切なケース管理のための事務用品やキャビネットなどの備品、巡回訪問活動用の車両(リース費用)の支援などを実施。翌年以降も、市職員の検査機器習熟研修やスーパービジョン研修(専門的スキルを向上させることを目的に継続的に指導者から指導を受けること)のための支援を続けてきました。

ご挨拶に伺った当協会の早水専務理事に対し、かつて釜石市内の幼稚園で園長を務められた経験も持つ野田市長は、「復興に向けてたくさんの課題が山積みだが、これまで受けたご支援を力に、これからも市として子どもたちを支えていきます」「これまでのご支援、誠にありがとうございました」と話されました。

みなさまのご支援で蒔かれた種

震災直後から「発達支援室」の立ち上げと運営に奔走されてきた市職員の澤田さんからは、次のメッセージを頂戴しています

「2013度に発達検査用具のご支援をいただきましたが、それに加えて習熟研修やスーパービジョン研修の費用もご支援いただいたことで、すぐに検査技術を習得することができました。」

「当発達支援室は、2011年10月の発足時より、常勤1名、非常勤1名の体制でやってまいりました。しかし、2016年4月から、任期付ではありますが、念願の保健師が1名当室に配属になることが決まりました!! とても大きな前進だと思います。このことは、車や鍵付きロッカー、ファイル、発達検査にまつわるハード面からのご支援をいただいたお陰です。これらがなければ、ここまで活動を広げることはできなかったと感じています。重ね重ね感謝いたします」

みなさまのご支援で蒔かれた種が、ここでも根を張り、花を咲かせはじめています。

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