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日本ユニセフ協会
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世界の子どもたち

カンボジア
子どもたちの栄養改善に取り組む
スナック菓子風の栄養補助食品を開発

【2016年10月27日  カンボジア発】

母親の膝に座る1歳3カ月の赤ちゃん。重度の急性栄養不良状態だったが、栄養治療ケアを受けたことで回復に向かっている。

© UNICEF Cambodia/2016/Kiev

母親の膝に座る1歳3カ月の赤ちゃん。重度の急性栄養不良状態だったが、栄養治療ケアを受けたことで回復に向かっている。

カンボジアでは、生後6カ月から2歳までの子どもたちの多くが、健やかに成長するために十分な栄養を取ることができていません。最近の調査では、生後6カ月から8カ月の乳幼児のうち、最低限必要な栄養素を摂取できているのは、5人に1人だということが、明らかになりました。5歳未満の子どもの3人に1人が重度の発育阻害(スタンティング:慢性的な栄養不良)、4人に1人が深刻な低体重に陥っています。10人に1人は急性栄養不良状態である消耗症です。

栄養不良状態は、身体的、認知的な発達を阻害し、生涯にわたって子どもたちに影響を与える可能性があります。

そのため、ユニセフは、フランス開発研究所のオランダ人研究員、フランク・ウィアリンハ博士の協力のもと、子どもたちが毎日の食事から必須栄養素のビタミンやミネラルを取り入れられるよう、地元で製造可能な栄養補助食品を開発しています。

スナック菓子が大好き

2014年にユニセフがプノンペンの貧しいコミュニティで調査を行った結果、家庭支出の6~7%をスナック菓子代が占めていることが分かりました。農林水産省のチャムナン博士は、「調査が示す通り、カンボジア人はスナック菓子が大好きです。しかし、スナック菓子は糖分を多く含み、他の栄養素はほとんど含まれていません。同価格で健康的な代替食品が開発されれば、そちらを選ぶと思います」と語ります。

現在、ウィアリンハ博士協力の下、栄養があってカンボジアの人たちが手に取ってくれる食品の開発が進められています。注目したのは、カンボジア保健省から認可を受け、栄養豊富な地元産食品を開発している非営利企業、ヴィソットです。ヴィソットは、パートナー団体とともに、農村部と都市部のコミュニティ向けに安くて良質な商品を開発・供給しています。その活動は、カンボジアの将来の子どもたちの健康状態に変化を起こす可能性を秘めています。

カンボジアの人にあったものを開発

栄養補助食を試食するカンボジアの子どもたち

© IRD Cambodia/Wieringa

他の栄養補助食品を試食するカンボジアの子どもたち

では、実際にどのようなものを開発しているのでしょうか。「カンボジア人好みの食品であることが必要です」とウィアリンハ博士は言います。「近隣諸国の人々向けに過去に開発したものを導入するだけでは、不十分です」

そこで始まったのが、「フィッシュ・キューブ」の開発です。

開発チームは、魚、米、緑豆、大豆、油、砂糖、微量栄養素をもとに、キューブ型の試験品を作りました。これらの材料は、栄養価の高さ、地元で入手可能であること、価格、人々の好みを基準に選定されました。

このフィッシュ・キューブはスナック菓子の代わりに選ばれるのでしょうか。子どもたちの反応を見るため、プノンペンでNGOが運営するプレスクールに通う2歳から7歳の子どもたちを対象に調査を行いました。

ところがその評価は、魚臭く食欲がわかないとの散々なものでした。

栄養添加ウエハース

その結果を受け、チームは開発の見直しを余儀なくされました。幼い子どもたちの間でさえスナック菓子が大量に消費されていることから、ウィアリンハ博士は、カンボジアで作られており、日常的に食されているウエハースに栄養を添加するイノベーティブな提案をしました。

人々が普段食べているスナック菓子により似ていることから、受け入れられやすいのではないかと考えたのです。魚臭さを減らし、味を良くするため、ココナッツパウダーも加えました。

このウエハースが受け入れられるかの調査を行った結果、フィッシュ・キューブに比べて食べやすいとの評価を得ました。

地元で入手できる食材を使って

魚を材料にした栄養補助食「Num Trey」。子どもの好みに合わせた味とパッケージの改良を重ねたことで、家族にも広く受け入れられるようになった。

© UNICEF Cambodia/2016/Laillou

魚を材料にした栄養補助食品「Num Trey」。子どもの好みに合わせた味とパッケージの改良を重ねたことで、家族にも広く受け入れられるようになった。

2016年から2017年にかけての全国発売に先立ち、このウエハースがどれだけ効果的であるかの最終的な調査を行う予定です。生後6カ月から17カ月までの乳幼児と、妊娠中の女性または授乳中の母親を対象にしています。

「最終調査は非常に重要です。栄養補助食品や栄養治療食品において、動物性食品として用いられるのは、一般的にミルクや乳清です。このウエハースによる栄養摂取が可能になれば、カンボジアは、栄養補助食品や栄養治療食品で、魚類のタンパク質を世界で初めて利用する国の一つとなるのですから」(ウィアリンハ博士)

栄養補助食品に動物性食品を加えることで、微量栄養素の含有量の向上や、脂肪を含まずに体重が増加することと関連しています。WHO(世界保健機関)は、生後6カ月から24カ月までの子どもたちが、毎日お粥に動物性食品を足して摂取することを推奨しています。

しかしながら、粉ミルクや粉状の乳清は、外国からの輸入に頼らなければいけません。それに比べ、魚は地元に豊富にあり、カンボジアの食卓に欠かせないものなので、人々の口に合い、費用対効果の高い材料なのです。

持続可能な取り組みにする

妊産婦や授乳中の女性をターゲットにした、別の味のウエハースの生産も可能になるでしょう。「ヴィソットのような社会的企業にとって、原材料や生産過程が同じ幅広い種類の商品を開発することは重要です。市場が拡大すれば、生産コストを減らすことができるのですから」と、ヴィソットのリンドン・ポール代表は言います。

栄養補助食品によって、カンボジアの子どもたちの栄養状態が向上していることが、調査によって証明できれば、ユニセフは、この取り組みをより持続可能なものにするつもりです。

カンボジアの幼い子どもたちが、この美味しくて栄養価の高いウエハースを楽しみながら、健康的で幸福な未来を持てることを願いつつ、ユニセフは、今後もこうしたソーシャル・マーケティングの取り組みを続けていきます。

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