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ユニセフ協会からのお知らせ

第81回アカデミー賞 ポリオ根絶をテーマにしたインド映画
短編ドキュメンタリー賞 オスカー候補に!

【2009年2月19日 ニューヨーク発】

© UNICEF/NYHQ2006-2646/Pietrasik
インドのウッタルプラデシ州で経口ポリオワクチンを投与する保健員。ユニセフは、予防接種の偏見をなくし、コミュニティで予防接種を促進するために、地元の宗教的リーダー、学校、大学と協力している。

2月22日(日本時間23日)に開催される第81回アカデミー賞®授賞式。短編ドキュメンタリー賞候補に、ポリオ根絶支援活動をテーマにしたインド映画『The Final Inch-<最後の1インチ>』(※邦題は仮訳)がノミネートされています。

開発途上国でのポリオの終焉を告げる最初の兆しを与えた効果的なワクチンの開発から50年が経過しました。しかし、身体に麻痺あるいは、時には死をももたらす疾患であるポリオは、最も貧しい国々の子どもたちをいまだ脅かし続けています。

今年に入ってこれまでに発生したポリオの症例は42例。そのほとんどは、いまだポリオを根絶しきれていないアフガニスタン、パキスタン、インド、ナイジェリアの4カ国で発症しています。新作映画『ファイナル・インチ<最後の1インチ>』は、文字通り、ポリオ根絶に向けた努力の中で、「最後の1インチ」を担っている人々の姿を追ったものです。

当初、この映画は、1988年以来、ポリオの症例を99パーセントまで減少させた世界中の努力を追うつもりでしたが、最終的には、インドでの大規模で集中的な根絶プログラムに焦点をあてることになりました。

インドでの予防接種

「インドは、疑いなく世界で最もポリオ根絶活動に努力しています。」このポリオ根絶活動に多大な貢献をしているビル&メリンダ・ゲイツ財団のマイケル・ガルウェイ プログラム上級担当官は話します。「インドのプログラムは、ポリオが残る世界中のどこに持っていっても、即刻ポリオを根絶できるほど優れたものです。」

しかし、人口密度が高く、出生数が多いインドでは、最も効果的な予防接種プログラムでさえ、困難がつきまとうのです。

イレネ・テイラ・ブロツキー監督が『ファイナル・インチ』を撮り始めたとき、ガルウェイ氏は、ユニセフ・インド事務所の広報官でした(現在は先に述べたようにメリンダ・ゲイツ財団に所属)。ユニセフは、映画関係スタッフのビザの確保を手助けし、このドキュメンタリーの主役となる人たちを何人か推薦しました。そのひとりが、ムンザリーン・ファティマさんです。ウッタル・プラデシュ州のイスラム教徒の親たちに、「子どもたちに予防接種を受けさせるように」と説得する役目を果たすために動員された、多くのコミュニティ保健推進員のひとりです。

イスラム教徒コミュニティへの影響

5年前、ポリオに感染しているインドの子どもたちの80パーセント近くは、イスラム教徒の家庭の子どもたちでした。しかし、イスラム教徒は、インドの人口のわずか17パーセント。それだけポリオにかかる子どもの割合が高かったのです。ポリオの根絶の努力が一番必要とされるのがこのグループの人たちだと知ったユニセフは、すぐに研修を受けた5万人を使って、毎月200万世帯の家を訪問してまわったのです。

ギャラウェイ氏は、こう話します。「これは、ユニセフが世界中どこでも行っている、最大で単一の公衆衛生の広報活動です。」

インドで、人口が最も集中するウッタル・プラデシュ州のイスラム教のコミュティでの予防接種の割合は、今では大幅に伸びました。ポリオの新規症例者のうち、イスラム教のコミュニティの割合は4分の1にまで減ったのです。それでも、ウッタル・プラデシュ州、そして同州の北部に広がるビハール州でも、長期にわたって、ポリオの感染を食い止めることには成功していません。

「責任は、明らかに私たちにあります」とアフシャク・バーツ氏。WHO(世界保健機関)のナショナル・ポリオ・サーベイランス・プログラムに参加している医師です。バーツ氏は、この映画の中では、ガンジス流域の村を、徒歩で、あるいはボートに乗って、予防接種して回り、すべての子どもたちが予防接種を受けているかどうかをチェックしているところが紹介されています。

重要な仕事を果たす
© The Final Inch' / Vermilion Films
アカデミー賞短編ドキュメンタリー作品賞にノミネートされた映画『ファイナル・インチ』より。

Vermilion Films(ヴァーミリオン・フィルムズ)とGoogle Foundation(グーグル基金)が制作したアカデミー賞ノミネート作品『ファイナル・インチ』は、ニューヨークで行われる第4回世界予防接種会議に出席している専門家たちに向けて、今週、ニューヨークのユニセフハウスで上映されました。

題名は、ロシア出身の作家故アレクサンドル・ソルジェニーツィンの著書『First Circle (煉獄の中で)』からの引用です:「ファイナル・インチ<最後の1インチ=あと一歩>の鉄則は、(最後の最後で)重要な仕事を回避しないことだ」

ポリオにかかる危険性がある子どもたちに予防接種することは、この子たちを救うだけでなく、将来の世代の健康をも守ることになる、と保健担当者や開発担当者は言います。

世界的なポリオ根絶に向けて

「根絶を最終的な目標にしない限り、今注ぎ込んでいる資金もコミットメントもどんどんなくなってしまいます」と語るのはユニセフの保健分野の広報担当官であるジェフリー・ベイツです。「現在、根絶を目指して進めている努力を、一歩でも後退させたら、ポリオはアフリカと南アジアばかりでなく、ヨーロッパやアメリカでも再び発生してしまうでしょう」

「『ファイナル・インチ』」はアドボケートを主導する団体、ドナー、保健ケア関係者まで届き、その心を動かすことだろう、とベイツ氏は言います。

「ポリオの根絶に向けた努力を10年以上続け、それでも根絶にたどりつけないでいるとさすがに疲弊感が出てきます」とベイツ氏。「このような映画は、数え切れないほどの課題に直面してでも頑張って成し遂げなければならないのだ、という道徳的なコミットメントを奮い立たせてくれるでしょう」

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