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ユニセフ協会からのお知らせ

世界の保健専門家による報告書:
子どものワクチン接種率は過去最高 しかし平等に行きわたっていない
リスクの大きい子どもたちに行きわたるには最低でも年間10億米ドル必要

【2009年10月21日 ワシントンDC発】

世界保健機関(WHO)、ユニセフ(国連児童基金)、世界銀行が、本日、共同で発表した報告書によると、予防接種率は、ここ数年の減少傾向に歯止めがかかり、過去最大の接種率を記録、世界のワクチン開発にも拍車がかかっていることが分かりました。

The State of the World’s Vaccines and Immunization (『世界のワクチンと予防接種白書』)によると、かつてないほど、多くの乳児たちが予防接種を受け、2008年の最新データでは、1億600万人に達しています。同時に、白書を発行した諸機関では、特に貧しい国やコミュニティに住み、ワクチンで予防できるはずの病気で命を失っている子どもたちが接種を受けられるよう、ドナーに対し、不足分の資金拠出を要請しています。

新型インフルエンザ(H1N1)の予防接種キャンペーンを世界が繰り広げる中で、予防接種に向けた世界の努力が、成功を収めていることを示す新しいエビデンス(証拠)が、この白書では提供されています。これは、すなわち、感染症を予防することができる、ほかに類を見ないワクチンの役割の大きさを示すと共に、感染リスクが高いコミュニティにまでワクチンを届けることの難しさをも示しています。

「インフルエンザの流行は、ワクチン開発の重要性と役割の大きさを考えさせます」と語るのはWHOのマーガレット・チャン事務局長です。「その一方で、貧しい国々の人々に、科学の恩恵をもたらすことの難しさも示しています。富める者と、貧しい者との格差——命を救うことができるワクチンを打てる人と、打てない人との格差をなくさなければなりません。」

国際機関の高官たちは、命を守ることができるワクチンは、富める国々では当たり前に打つことができるが、感染リスクが最も高い推定2,400万人の子どもたちには、いまだ届いていないと警告しています。72の貧しい国々のすべての子どもたちに、新しいワクチン、既存のワクチンを提供するには、年間10億米ドルの追加資金が必要だと言います。

「世界のはしかによる死亡数は2000年から2007年の間に74%減りました。これにはワクチンが大きな役割を果たしました」とアン・ベネマン ユニセフ事務局長。「こうした成果は、命を脅かす病気から世界中の子どもたちを守るため、予防接種をしようという新たな努力を呼び起こすべきです。」

© UNICEF/NYHQ2008-1508/Holtz
はしかの予防接種を受ける赤ちゃん(中央アフリカ共和国)。

予防接種率の減少傾向に歯止めがかかったのは、GAVI アライアンス(ワクチンと予防接種のための世界同盟)からの支援を有効に利用した開発途上国の努力によることが大きい、と白書では述べています。GAVIアライアンスは、 WHO, ユニセフ、世界銀行、ビル&メリンダ・ゲイツ財団が協同で行っているワクチン提供のためのパートナーシップです。2000年以来、このアライアンスにより、新しいワクチン、あるいは十分に利用されていないワクチンが導入され、開発途上国の2億人以上の子どもたちに提供されています。

専門家によると、死をもたらしかねない病気に対して、少なくとも120種類のワクチンが利用できるようになったと言います。ここ数年、政府やフィランソロピーの支援を受けて創設された官民パートナーシップの傘下にいる、学術分野、医薬品企業の科学者たちにより、髄膜炎菌性髄膜炎、ロタウィルス下痢症、肺炎球菌性の病気、ヒトパピローマウィルス(HPV)感染から命を守る新しいワクチンが開発されています。さらに、80種類以上に及ぶ新しいワクチンが臨床検査の後期段階に入っており、この中には、今のところワクチンが存在していない病気を予防するための新ワクチンが30種類含まれています。同時に、HIV/エイズ、マラリア、結核、デング熱のような病気を予防するワクチンの研究開発が現在進行中です。

白書は、世界のワクチン市場が、過去8年間に3倍に拡大し、170億米ドル以上の利益を上げていることも報告しています。ワクチンを提供する国連機関による需要の増加、ワクチンの発見と開発面での革命により、業界はワクチンに注目するようになりました。開発途上国のワクチン製造業者は、はしか、百日咳、破傷風、ジフテリアといった従来型のワクチンの全世界的な需要の86%を賄っています。

「貧しい国々でもワクチンは大幅に手に入りやすくなりました。」世界銀行のグレーム・ウィーラー専務理事は言います。「それでも、国際社会と開発途上国は、新しい技術、既存の技術が、最も弱い立場にいる人々——特に子どもたち——にまで届くよう、努力しなければなりません。」

ワクチンを必要としている人たちにワクチンを届けるコストは、GAVIアライアンスのような資金パートナーシップだけで解決できる問題ではありません。中所得国は、GAVIアライアンスの対象となっていませんが、3,000万人の子ども、20億人の人々がいて、その大半が、1日2米ドル未満で暮らしています。ワクチンの値段が大幅に下がっても、肺炎球菌性の病気、ロタウィルス下痢症、ヒトパピローマウィルス(HPV)を予防するための新しいワクチンのコストは、それぞれ、従来型のワクチンすべてを合わせたコストよりも高いのです。

「ワクチンは、すべての国で病気を抑制することができる素晴らしい方法です。保健面でも、経済的な面でも効果的な方法なのです」とケニア小児科協会会長フレッド・ウエア博士は言います。「わが国の医療に関わっている中で、残念ながら、ワクチンで防ぐことができる病気や、それによる死を数多く目にしています。これらを削減できれば、ほかの保健問題に資源を回すことができますし、時間的余裕もできるはずです。」

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