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ユニセフ協会からのお知らせ

ユニセフ・イノチェンティ研究所
女性器切除(FGM/C)問題に関する最新報告書を発表

【2010年11月18日 イタリア発】

ユニセフ・イノチェンティ研究所が発行した本報告書『社会変革の力学:アフリカの5ヵ国におけるFGM/C根絶に向けた取り組み』では、この慣習(社会規範)を根絶したコミュニティの解決方法や実例が紹介されています。本報告書は、FGM/C根絶について合意を築くために必要不可欠な条件を分析し、この慣習を永久に根絶するための戦略を明らかにしています。

本報告書の要点を解説したビデオ(英語)はこちらで御覧いただけます。

本報告書は、何百年にもわたり続けられている慣習を変えるには、時間をかけた複雑な工程が必要であることも訴えています。また、最も効果的な根絶に向けた取り組みは、リラックスした雰囲気の中でFGM/Cに関する話し合いを行い、現地の文化の肯定的な面を強化し、地元のニーズに応えて実行されている開発プロジェクトを活用してコミュニティとの信頼関係を築くことであると明示しています。これは、人々の善意と生活の向上を目指すという目的意識から新しいアイディアが生み出される、ということを実証するものです。FGM/C根絶に成功したプログラムは、宗教指導者や地元のリーダーといったコミュニティの尊敬を集めている人々の協力を受け、社会の様々なネットワークや公的機関の活動と連動して行われています。法の改正や国の基本方針の変革、メディアを利用した活動も実施されています。

「ある家族が(その家庭の女の子に)FGM/Cを行うか行わないかという決定は、社会的な利害に大きく左右されています。」イノチェンティ研究所のゴードン・アレクサンダー部長はこう話します。

「FGM/Cが続けられてきた背景にある多様な社会状況に対する理解が進むにつれ、根絶への取り組みのあり方も変化しています。答えは一つではありません。方法も一つではありませんし、その場しのぎの方法もないのです。しかし、着実に前進しています。今こそ、女の子のために、こうした努力をさらに拡大して行う必要があります。」

イノチェンティ研究所は、今回、本報告書を作成するにあたり、FGM/C根絶のために、エジプト、エチオピア、ケニア、セネガル、スーダン各国のコミュニティが実施した数多くの有望な取り組みが検証されました。

毎年、世界中で、数百万人の女の子がFGM/Cを受けています。この慣習は、深刻な人権侵害行為であるとともに、出血、排尿に関する問題や出産合併症、新生児死亡も引き起こすなど、健康面でも長期にわたって悪影響を及ぼします。

しかしながら、FGM/Cが行われている多くのコミュニティでは、この慣習は有害な行為であるとは見られず、女の子の成長に不可欠で、多くの場合、結婚に必要な条件のひとつとして考えられています。FGM/Cの実施の有無によって、その女の子が社会から阻害され、厳しい非難を受けるかどうか、さらにその女の子の家族も同様に非難されるかどうかが決まるのです。

多くの場合、宗教、伝統、文化に従って、家族は自分の娘にFGM/Cを行っているとされています。例えば、世界の主な宗教が信者にFGM/Cを求めていないにもかかわらず、多くのコミュニティで、FGM/Cは宗教的な規則で定められているものと信じられています。両親が娘にFGM/Cを受けさせる大きな要因のひとつは、娘に最善のことをしてあげたいという親の思いによるものであり、社会規範と社会の風潮が変化すれば、この慣習を行わないという決断を促すことにも繋がると、報告書は指摘しています。

「この報告書は、どのようにすれば、コミュニティの中に広く持続的な変化を起こすことができるのかということに関する豊かな情報を、私たちに提供してくれています。」「また、FGM/Cだけでなく、同様に、それぞれのコミュニティの社会構造に大きな影響を受けている女性や女の子に対する暴力や強制的な児童婚といったその他の有害な慣習を根絶するためにも、大きなヒントを提供してくれています。」(アレクサンダー部長)

セネガルのように、FGM/C根絶に向けた活動の前進がみられる地域がある一方、エジプト、エチオピア、スーダンでは、いまだに高い割合でFGM/Cが実施されています。しかしながら、この3ヵ国全てにおいて、この慣習の“利点”を疑問視する人や、許される環境であるなら、娘や妻、姉妹、従姉妹にはFGM/Cを受けさせなくないという意見を持つ人も出てきているなど、FGM/Cに対する認識に大きな変化が見られ始めています。

世界中で、約7,000万人から1億4,000万人の女の子や女性がFGM/Cを受けていると推定されています。アフリカでは、毎年300万人の女の子と女性がFGM/Cの危険に晒されているものとみられています。この慣習は、アジアと中東の一部でも行われています。また、ヨーロッパ、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、米国の移民の間でも、わずかながらFGM/Cの実施が報告されています。

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