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公益財団法人日本ユニセフ協会
アグネス大使 インド視察特集
  • ◇視察報告サマリー
視察報告サマリー 持てる人と持たざる人の間に広がる格差繁栄の陰で子どもたちはどんな生活をしているのか…
私たちは、持てる人と持たざる人の間に広がる格差が世界的に深刻化する中繁栄の陰で子どもたちはどんな生活をしているのか…それを確かめるためにムンバイを訪れました。
雨の中、寝る場所を探すストリート・チルドレン
© 日本ユニセフ協会/2007/K.Shindo
雨の中、寝る場所を探すストリート・チルドレン=ハジ・アリ モスク付近(ボンベイ中央地区)

ムンバイはインド最大の商業都市。1,600万人の人口を抱え、金融と商業で栄えるこの都市は、インドの中で「夢の街」と呼ばれることもあります。

ムンバイの人口の75%はスラムに暮らしているといわれます。ムンバイのスラムは何代もの人々がそこに暮らしつづけ、定着しているものです。そして、スラム街の中でも格差があります。昔からあるスラムは電気が通っていたりトイレの近くに水がある、比較的状況の良いスラムもありますが、その一方で、道端に木を立て、ビニールシートを張って住んでいる人々もいました。さらにスラムの区域に入れず、夜になると路上や駅で寝ている人たちもたくさんいました。

私たちは一週間の滞在中、毎日数カ所のスラムを訪ね歩き、たくさんの子どもたちに出会いました。母親の死後、学校をやめさせられて家族の面倒一切をみている14歳の女の子プジャや、HIV陽性の父を持つチャンドン、ストリートチルドレンのリンクーたちです。

繁栄の陰で

ゴミや排泄物だらけの小さなスラム、バラート・ナガールでは、父親が28歳、母親が25歳ぐらいの若い家族に出会いました。1歳と2〜3歳ぐらいの2人の子どもはとても小さく、2人とも平均体重の半分ぐらいしかありません。栄養不良の影響でした。お母さん自身が栄養不良のため、一カ月で母乳が出なくなり、以来、1日に一度、ふつうの食事を与えているというのです。

栄養不良の幼児の体を洗う母親=バラート・ナガール・スラム
© 日本ユニセフ協会/2007/K.Shindo
栄養不良の幼児の体を洗う母親=バラート・ナガール・スラム(東バンダラ地区)

1日に一度しか食事を与えない理由は、お父さんもお母さんもゴミ拾いや下水道掃除などの仕事に出かけてしまうからです。仕事がない日は、ご飯が食べられません。

お父さんは、父親と一緒に12歳のときに田舎から出てきて、以来ずっと日雇い労働を続けてきたといいます。28歳になった今も、まったく状況はよくなっていません。

食事のときに、お父さんに「人生の中で何が一番楽しいですか?」と尋ねると、お父さんは答えました。「何もないです。こんな人生、もう飽き飽きです。楽しいことなんてひとつもありません」。お母さんに同じ質問をしました。すると、お母さんは何も答えられず、泣き出してしまいました。どんなにがんばっても、生活が良くならない。お母さんは疲れきっていたのです。

ムンバイにはお金持ちがたくさんいて、たくさんの富が見えます。でも、そこにたどり着くまでのハードルが高い。その夢にたどり着ける人は、いったいどれくらいいるのでしょうか。

ムンバイの光と影
インド・ムンバイの写真
© 日本ユニセフ協会/2007/K.Shindo

私たちが訪れたスラムの中の暗さ、匂い、ぬかるんだ道…。その様子は言葉では伝えきれません。

インドの子どもたちを苦しめているのは、経済的な格差だけではありませんでした。性別や生まれた場所、信仰する宗教などによって、与えられるチャンスがまったく違います。ムンバイならチャンスが増えるのではないかと多くの人々は期待しますが、理想と現実の差はとても大きいのです。みな毎日、一生懸命働いていますが、どんなに働いても楽しみが得られない。そんな人々がたくさんいました。

インド政府も懸命に努力しています。ユニセフやNGOの協力を得て、計画を実行する力をつけていくことが必要です。そして、一番大切なのは“Commitment”、あきらめないこと。「こんな状況ではどうしようもない、とあきらめてはいけない」。そうNGOのスタッフに言われました。

一人でも多くの子どもたちが食べられるようにしたい、ひとりでも多くの子どもたちが学校に通えるようにしたい。私たちにもできることがたくさんあるはずです。これから私たちも、一生懸命支援していきたいと思います。
帰国報告記者会見のフルレポートはこちらから