『子羊独立宣言』

羊飼いに見守られ、導かれていた羊の群の中の一匹の子羊が、ある日突然、頭を高く上げて叫びました。
「ぼくたち、もうただ黙って誰かに従わなくても、自分の智恵と勇気で生きてゆけるんだ!」
それを聞いて、大人の羊たちは、驚いて顔を見合わせ言いました。
「なんてことを言うんだ、あの子羊は!そんなことしたら、一体どこでおいしい草を食べたらいいのか分からなくなるじゃないか!」と。
しかし、全ての子羊が口をそろえて、そうだ!そうだ!と一斉に声を上げました。
それ以来、子羊たちは自由に野原で生きていくようになりました。
これが、かの有名な「子羊独立宣言」です。


葉 祥明【本名:葉山 祥明】(絵本作家・画家・詩人)

1946年熊本市に生まれる。創作絵本『ぼくのべんちにしろいとり』でデビュー。1990年創作絵本『かぜとひょう』でボローニャ国際児童図書展グラフィック賞受賞。1991年、鎌倉市に「北鎌倉葉祥明美術館」、2002年に「葉祥明阿蘇高原絵本美術館」を開館。『地雷ではなく花をください』『心に響く声』などをはじめ、人間の心を含めた地球上の様々な問題をテーマに創作活動を続けている。近著にことば集『幸せな日常のために』(日本標準)、絵本『星の王子さま』(Jリサーチ出版)がある。