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アグネス大使 モルドバ視察

 モルドバは、性的搾取目的の女性と子どもの人身売買の主要な送り国のひとつとなっています。2000年1月から2003年4月の間に1,131人の人身売買被害者が確認され、保護されました。しかし、この数は多くの女性や子どもたちは国外に売られるため、実際の数はさらに多いとみられています。保護され、身元を確認されるのはほんのわずかにすぎず、モルドバへ帰国する際の支援も受けることができません。
 そのため、子どもの人身売買の正確な被害者数は分かっていません。唯一の確かな情報源は、国際機関とNGOによって保護され身元確認がなされた被害者です。モルドバの性的搾取を目的とした人身売買の被害者の特徴は次のようなものです。

  • 被害者の大多数がとても若い。
    モルドバに帰国する際に18〜24歳の被害者が58%、人身売買の対象になったのが子どもの時(18歳未満)であったのが30%でした
  • 被害者の46%が母親である。
    彼女達のおおよそ65%がシングルマザーである。2002年には、被害者の20%が妊娠してモルドバへ帰国しました。子どもがいる被害者の割合(46%)は、他の南東ヨーロッパの被害者より相当高くなっています。母親の多くが、子どもの父親から経済的な支援を受けていません。母親の大半が、海外に出ている間は、子どもの面倒を家族に頼むか、保育機関に預けるといいます。

 南東ヨーロッパにおける子どもの人身売買は、たいてい性的搾取を目的に思春期の女子が対象になっていますが、さらに小さい13歳以下の子どもも、強制労働や、物乞い、臓器売買、不法な養子縁組のために売買されています。

 人身売買の対象になる子どもは、特に中途退学者を含む社会的に弱い立場に置かれている子ども、貧困や家庭崩壊など家庭環境に最も厳しい状況にある子どもなどです。2001年に保護された人身売買の被害者のほぼ50%しか義務教育を修了しておらず、被害者の10%は、施設で育てられています。

 最近まで子どもに対する専門的な支援体制がなかったため、子どもは特別な配慮を受けてこられませんでした。しかし、2003年7月以降、ユニセフの支援を受けて、国際移住機関(IOM)が、子どもに専門的なサービスを提供している人身売買の被害者社会復帰支援センター内に“子どもに優しい部門”を設置しました。人身売買の被害にあった子どもと母親に心理社会的・医療的・法的な支援を提供する長期的な支援体制も創設されました。

< 子どもの人身売買に対するユニセフの対応 >

 ユニセフは、人身売買に関する国家委員会のオブザーバーと、予防、実行、保護に関する委員会の下に設けられた3つの作業部会のメンバーとなっています。また、2002年8月以来、ユニセフは、子どもの人身売買に関する非公式の作業部会をコーディネートしています。この作業部会は、人身売買に関する国家委員会の決議により公式なものとなり、「子どもの人身売買と子どもの不法な国外誘拐」をなくすための作業部会が立ち上げられるもととなりました。
 ユニセフは引き続き、子どもに関する課題について専門家を委員会に派遣し、また、子どもの権利条約(1989年)と子ども売買、子ども買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する選択議定書(2000年)に従い、子どもの人身売買の被害者の特別なニーズと権利を保護する必要性を提唱しています。モルドバは、この選択議定書に署名はしていますが、批准にはまだいたっていません。ユニセフは政府に対して、迅速に批准できるよう働きかけ、必要な国内の法改正を実施するよう勧めています。

< ユニセフの人身売買防止プロジェクト支援活動 >

防止策

  • 若者の失業と人身売買被害を防止するために、モルドバ各地にある11の寄宿学校の2000人を超える子どもに対するライフスキル教育プロジェクトを支援。プロジェクトは教育省と国立青年・スポーツ部局の支援を受けて、子どもの人権に関する資料情報NGOセンターを通じて実施されています。

社会復帰と支援

  • 国際移住機関(IOM)が行う、人身売買被害者社会復帰支援センター内に設置された“子どもに優しい部門”への支援。この部局は、2003年7月に開設され、人身売買の被害にあった子どもとその母親に、医療的、心理的、精神的、社会的、法的な支援を含む専門的なサービスを提供しています。
  • NGOの全国幼児虐待防止センターとチシナウの市立子どもの保護部の共同で運営されている「AMICUL センター」の支援。センターでは、医師、教育学者、心理学者、精神分析医、ソーシャルワーカーを含む、さまざまな分野の専門家で構成されるチームを通じて、虐待と性的搾取の被害にあった子どもの相談所としても活動しています。
  • チシナウにある保健省児童暫定施設センター内にある妊婦センターの設立の支援。施設の復旧が終わると、妊婦センターは、人身売買の被害者である母親や子どもを放棄する可能性のある母親を含め、弱い立場に置かれた母親と子どもたちに、一時避難施設の提供や、医療・心理社会支援をなどをはじめる予定です。
  • 産科病室、小児病棟、妊婦センター、人身売買被害者支援に関わる医師、ソーシャルワーカー、精神分析医のための心理社会支援研修の実施。この研修は、子どもの放棄と人身売買の防止に焦点を当てています。

(ユニセフ・モルドバ事務所の資料より)

www.unicef.or.jp

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