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フェラシュ村の貧しい家のゴミだらけの庭に座ったシャーリーン・グルは、英語の言いまわしを時折混ぜながら、やわらかで詩的なウルドゥー語で口早に語ります。シャーリーンはティーンエイジャーのボランティアの1人です。最近成功させたばかりの難しい仕事について説明する彼女の言葉には、情熱があふれています。「はじめは、どこの家も関心がありませんでした。みんな、ビタミンAのドロップは健康のためではなくて、家族計画の方法のひとつだと思っていたからです。」 けれどもシャーリーンは、イスラマバードから14キロ離れたフェラシュ村の200世帯の幼い子どもたちが、ポリオの予防接種だけでなく、同時にビタミンAという重要な栄養素の投与も受けるべきだと確信していました。フェラシュはイスラマバード郊外とラワルビンディのあいだに位置する貧困にあえぐ30の村落のひとつですが、二大都市の都市開発の恩恵は受けていません。 シャーリーンは反対を受けることを承知の上で、村中の家々を訪ねてまわりました。「今では、ほとんどの家庭が、ポリオの予防接種は子どもたちのためになると受け入れています。フェラシュでは、全員の子どもがポリオの接種を受けていますが、ビタミンAのことになると、親たちの質問が多くなるのです」
シャーリーンは言います。「母親たちは、新しい考えを受け入れてくれますが、父親たちは、私のことを信じてくれず、疑いを抱いています。あるおじいさんは、私を見るなりこう言いました。『なんでおまえはこんなことで時間を無駄にしているんだね?』って。」 けれども、予防接種日の朝、決意を固めたシャーリーンはあきらめませんでした。家のカギをかけているかどうかで、どの家がヘルスワーカーに会うのを避けているのかわかっていました。そこで彼女は、そういう家の人びとが畑に出て行くのについていったのです。 「とても楽しくて、にぎやかでした」彼女は語ります。「子どもの親たちは収穫しているところで、そこらじゅうに子どもたちがいました。それで私たちはその場を収穫のお祭りにしてしまったんです。みんなとなかよくなり、子どもたちや親たちにもお話しして、子どもたち1人残らずビタミンAをとってもらうことができたのです。」 なぜ、幼少期の子どものケアと青年グループ開発プロジェクトのボランティアになったのかを尋ねると、シャーリーン・グルは兄にすすめられたと話してくれました。兄のカーシフは、フェラシュ村の青年グループの代表2人のうちの1人なのです。
9月から、シャーリーン・グルは地元の大学に通いはじめますが、フェラシュでのボランティアは絶対に続けるつもりだということです。子どもたちの健康や成長を脅かしているものが、いまだに無視できないほど大きなものであることを、十分知っているからです。 |
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2002年7月10日(ユニセフ)、イスラマバード ユニセフ・パキスタン 支援情報チーフ ジョージ・サマーウィル |
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