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財団法人日本ユニセフ協会

UNITE FOR CHILDREN UNITE FOR PEACE

イブナ・シェリー(11歳)
暴力を忘れさせてくれたサッカー〈ハイチ〉

ハイチの首都ポルトープランス郊外にあるスタジアムで試合を待つイブナ・シェリーと友達
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うだるように暑い土曜日の朝、ハイチの多くの人々が太陽の光を避ける中、イブナ・シェリーは、首都ポルトープランス郊外の壊れかけたスタジアムのサッカー場で、友達とサッカーをしています。

11歳のイブナが週に2度サッカーをするようになって、もうすぐ1年になります。1年前、イブナと叔母のジェルメーヌ・シェリーは、暴力グループによる暴行が急激に増えたため、都心のナゾン地区からここに避難してきました。その頃は怖さのあまり、一晩中起きていることもしばしばあり、銃撃戦や誘拐を恐れて街頭を歩くことも怖かったとイブナは言います。

彼女と叔母は、ボア・モンケット郊外の丘に、狭い路地を挟んでひろがる軽量コンクリート製の住宅郡のひとつに移り住みました。叔父と5人の子どもたちもいっしょです。一番大きな部屋は2.4m×3mの広さで、そこにはダブルベッドが1つと映りの悪いテレビが置かれています。テーブルと棚にはたくさんの本と小物があふれ、壁には宗教画がかかり、洋服をかけるヒモが頭上にはられています。水道はなく、電気もいったん切れると3日はもどりません。

サッカーを教えてくれた学校

土曜日の朝、試合前に練習するイブナ

ボア・モンケットに移ったとき、叔母ジェルメーヌが心配したことのひとつは、イブナの学校を見つけられるかどうかでした。彼女が働いていたナゾンの印刷所は店を閉めてしまったので、学費を払うことができません。しかし幸運なことに、家族ぐるみでつきあっている友人が、近所にある無償の教会学校にイブナを入れてくれました。

その学校、ティムカテック・スクールは、カリキュラムがいいばかりでなく、サッカーを奨励していて、そのことがジェルメーヌの心をとらえました。彼女はずっと以前から、ブラジルのナショナルチームのファンで、とりわけロナルドとロナウジーニョが大好きでした。

「男の子でも女の子でも、育てるときには絶対にサッカーをさせたいとずっと言い続けてきました。イブナには、サッカーを続けるように言っています。サッカーをしていたら、よその国に旅行に行って見聞を広めるチャンスもあるし、サッカーをしなければわからないことが経験できますから」とジェルメーヌは言いました。

フェアプレーを学ぶ

ジェルメーヌは独身です。イブナの両親は田舎の農場で働いていて、しばしばイブナをひとりで家に残さなければならなかったので、イブナを自分のもとにひきとって育ててきました。姪のイブナがふしだらに育たないように、彼女は自分でも認める厳格さで接してきました。何十年も内紛が続いたハイチでは人々はとても貧しく、多くの女の子たちが性産業に携わって生活しています。叔母はイブナがそうなることを一番恐れたのです。

ティムカティックのサッカー・コーチであるフリッツ・キャリオットは、残忍な行為と不正の歴史を持つ社会で育つ子どもたちに、サッカーの試合は大切な社会的教訓を教えてくれると考えています。「サッカーは、傷ついたときに暴力に訴えるのではなく、お互いを許すということを教えてくれます。子どもたちはサッカーを通じてフェア・プレーを学ぶのです。」

サッカーには、イブナがこれまで経験してきた大変な暮らしを埋め合わせてくれる何かがあるのかもしれません。ジェルメーヌを手助けしてイブナを学校に入れてくれた教師のソフィア・ピエールは、次のように話してくれました。「イブナは以前より楽しそうです。サッカーをしているときはいうまでもなく、サッカーを見学しているときでさえ、楽しそうにしています。」

イブナも同じこと言います。「サッカーをすると元気になります。そして、世界のどこかで起こっている悪いことについて考えなくてもよくなるんです。」

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