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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

≪2003年12月11日掲載≫

国中に広がるキャンペーン:「学校に戻ろう!」
<アンゴラ>


 アンゴラの2つの州で成功したユニセフの「バック・トゥ・スクール(学校に戻ろう)キャンペーン」は、これからアンゴラ全土で展開されることになりました。これにより、1,100万人の子どもたちが学校に通えるようになります。今回はアンゴラからの報告をご紹介いたします。
 ここは地元のコミュニティの人たちが作った学校。真新しいにおいがする教室に入り、ジョアナ・ナペイオは、見知らぬ男の子の横に座りました。教室の前には先生が立っています…。涙を浮かべるジョアナ。初めて学校に行った子は、そんなものです。でも、ジョアナの涙は少し違っていました。そう、喜びの涙だったのです。

 ジョアナ・ナペイオのような子が教育を受けられるになったアンゴラ。子どもたちはアンゴラの未来を担う世代です。こうした子どもたちに教育の機会が提供できるようになったことは、アンゴラの未来が少しでも明るくなったということを意味します。おしゃべりで聡明なジョアナは7歳。今年、アンゴラの教育省とユニセフが協働で行った「バック・トゥ・スクール・キャンペーン」で学校に戻ったアンゴラの子ども25万人のひとりです。

 「小さいときから学校に行きたかったの」とクイトの郊外に住むジョアナは言います。「でもね、内戦で学校は全部、壊されてしまったの。ふだんは洗濯とかしてお母さんを手伝ったり、ほかの子どもたちと遊ぶんだけれど、退屈で…。でも、今日からは学校! だから、朝起きて、まだ赤ん坊の弟の世話をして、それからここまで歩いて来たのよ!」

 アフリカでも、内戦が長く続いたアンゴラでは、4,000以上の教室が破壊され、社会サービスが崩壊しました。アンゴラの6〜9歳の子どもの44%(110万人)が学校に行くことができず、先生の数が圧倒的に不足しています。

 教育システムの建て直しにはたくさんの課題があります。でも、「バック・トゥ・スクール」では、まず教育の機会拡大に力を入れ、教育の質は、追って改善していくことにしました。

 ビエ州とマランジェ州で打ち上げられた「バック・トゥ・スクール」は、州や教会のリーダー、コミュニティ・グループ、支援者たちによるサポートが成功のカギとなりました。アンゴラにある18州のうち、この2州で教育を促進しようと決まってから、コミュニティは積極的な呼びかけを行い、ユニセフの支援のもと新しく3,300の教室を作ったのです。

 しかし、教室ができても、先生がいなくては意味がありません。アンゴラの先生は、平均的に、8年生までしか教育を終えていないので、「バック・トゥ・スクール・キャンペーン」では、先生を対象にした研修を緊急に実施することにしました。2月、ユニセフは5,500人の先生を対象にした研修を(新学校年度が始まる前に)15日間行い、6月と11月にもセミナーを開きました。ユニセフ支援によるこうした研修は、先生を対象に2004年度も開催される予定です。

 ジョアナの先生、ドミンゴス・マティアジェも研修を受けた先生のひとりです。床に座っている生徒たちの前で、先生は歌い出しました。覚えなければならないアルファベットを歌にしたのです。「ぼくが覚えた時より面白い方法を使いたいと思ってね」とマティアジェ先生は言います。基礎的な教育研修を終えた新しい先生に、より高度な技術を身に付けてもらう研修で、彼が習ってきた方法です。歌を終えると子どもたちから拍手が起こりました。それから、クラスを2グループに分け、それぞれのリーダーを決めると、今度は「書く」勉強をはじめ、その間、先生は教室内を見て回ります。

 「バック・トゥ・スクール・キャンペーン」は、内戦後のコミュニティに、安定した普通の生活を取り戻すために重要なばかりでなく、国連の「万人のための教育」の目標を実現させる、大切な一歩を踏み出す大きな決意を示したものとしても重要なのです。「教育ほど影響力の強い分野はありません」と、ユニセフ・アンゴラ事務所の教育担当の責任者、フランシスコ・バシリは言います。「人権の実現のためのカギであり、すべての開発の中心となるものですから」

 ジョアナが学ぶ教室には黒板がありません。机もありません。もしかしたら、ジョアナはがっかりしているのかもしれませんが、それは顔にはあらわれていません。「今日は、自分の名前を書く練習をしたのよ」と自慢気に言います。「見せてくれる?」とたずねると、ジョアナはカバンから、大切な物を取り出すかのように、ゆっくりとユニセフのノートを取り出し、中に名前の一部をきっちりと書いてくれました。「お父さんやお母さんの名前もそのうち教えてくれるって、先生が言っていたわ。そしたら『おとうさん、おかあさん大好き!』って書けるようになるわ〜!」

 中には、このキャンペーンのスピードに対する抵抗もありました。2015年までにすべての子どもたちを学校に通わせるようにするという、より漸進的な方法を望む人たちもいたからです。しかし、ユニセフは、教育のスケール(規模)面と教室や先生の質を継続的に改善していくという方法をとらない限り、今のアンゴラの子どもたちに「学ぶ」権利を確保しきれないだろうと判断したのです。

 「今まで通りの教室が作られるのを待ち、大学まで進学した先生たちが育つのを待つとしたら、さらにもう一世代の子どもたちが、学ぶ権利を奪われてしまうことになります」とユニセフのバシリは言い切ります。「それだけの人的資源を無駄にするほどアンゴラには余裕がないのです」

 ユニセフは、「バック・トゥ・スクール・キャンペーン」が成功すれば、アンゴラ政府が全国的なキャンペーンに乗り出してくれるだろうと期待していました。まず、コミュニティを中心とした小さな事業に中心を置き、アンゴラのすべての子どもたちを学校に通わせることを優先させる、次に教授法を向上させ、そして学校の環境改善へと、時間をかけながら進めていく方法です。最終的に、アンゴラ政府は「バック・トゥ・スクール」を全国に拡大することにしました。

 アンゴラ政府は2004年には4,000万ドルの予算を計上して、新しく先生になった人に対して拠出することを発表しました。これは、2004年度に、29,000人の先生が養成され、100万の教室ができ上がることを意味しています。これが成功すれば、学校に行っていない110万人の子どもたち(小学校1年から4年生の年齢にあたる)が10万人にまで減少することを意味します。割合で言えば、学校に行っていない子どもの数が90%削減されることになるわけです。教育プログラム(ひとり当たり)として見た場合は、アフリカ最大のキャンペーンになると言って良いでしょう。

 これにより2004年度の学校年度開始までに、実行しなければならないことが山のように出てきました。教室を作り、教材を提供し、先生たちに研修を実施し…どれもユニセフからの支援が必要になりますが、その代わりに得られる成果はとてつもなく大きいはずです。

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