メニューをスキップ
HOME > 世界の子どもたち > ストーリーを読む
財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

バルバドス:体罰を無くすために


【2010年6月10日 バルバドス・ブリッジタウン発】

絵はがきのように美しい海岸で有名なバルバドス。この小さな島国で、国を二分するような論争が巻き起こっています。子どもの躾(しつけ)の手段として体罰を容認するべきか否か、激しく議論されているのです。

この国では、鞭打ちなどの体罰の慣習が、幾世代にもわたって続けられています。子どもを叩くことは、子どもの発達に害を及ぼすことが明らかになっているにもかかわらず、体罰は、家庭や学校で広く行われているのです。

‘機能’していない体罰
© UNICEF video
バルバドスの学校で頭を伏せて休んでいる子ども。ユニセフは、体罰が社会に深く浸透しているバルバドスで、体罰に代わる新しいアプローチを紹介しています。

体罰の件数は増える一方ですが、不適切な行為をする若者の数は減っていません。学校の教員や校長、政府関係者は、実際、学校で子どもたちの統率が取れなくなっていると訴えています。

「世界各国で、実際に子どもたち自身を調査対象にして実施したユニセフの調査は、学校で子どもたちを躾ける手段として、体罰は機能しないことを証明しています。」 バルバドスとカリブ海東部地域を担当する現地ユニセフ事務所のトム・オルセン代表は、こう語っています。

しかし、こうした明確な事実があるにもかかわらず、体罰という‘慣習’は、バルバドス社会に深く浸透しています。

根強い反対の声
© UNICEF video
体罰に変わる新しいアプローチを導入するべく、ユニセフはバルバドスの教師にワークショップを実施しています。

バルバドスの教育大臣で医師でもあるイダメイ・デニーさんは、この慣習の根絶には、根強い反対意見があると話しました。多くの人々にとって、体罰は、力強い国というイメージを象徴する行為であり、人々の誇りになっているというのです。

「この慣習に代わって、本当に子どもたちの躾に役立つ手段を、人々に明示する必要があります。」(デニー大臣)

ウインター・ピルグリムさんは、10歳から11歳までの子どもたちを教えています。ピルグリムさんは、自身の娘が問題を起こし、彼女との関係に亀裂が生じるようになるまで、体罰の価値を固く信じていたと言います。ピルグリムさんは、娘の学校に呼び出され、先生に、娘が自分を怖がっていると伝えられた日のことを思い出しながら、「今まで行われてきたことが、必ずしも全て正しいとは限りません。」と語ります。

体罰に代わるもの
© UNICEF video
バルバドスの学校で勉強する子ども。

娘との関係を修復しようと決心したピルグリムさんは、ユニセフの支援で開催されているワークショップに参加しました。ここでは、体罰の代わりとなる方法が紹介されていました。ピルグリムさんが、このワークショップで習い実行している新しいアプローチは、子どもたちに、自分の行動に対する責任を持たせることに重きを置いています。ただ悪い行いを罰するのではなく、子どもたちへの期待と、望ましい行動の形を明確に示すようにするアプローチなのです。

ユニセフは、バルバドスから体罰という慣習を無くすという大きな課題に取り組むべく、バルバドス政府とともに、3年計画でさまざまな取り組みを行っています。ピルグリムさんが参加したワークショップも、この一環として開催されました。

「今の教え方は、以前のものから大きく変わりました。」 ピルグリムさんは、子どもたちは以前よりも規律を守るようになり、常に安心した様子を見せているだけでなく、自分たちの振る舞いに対する責任も自覚し、学習能力も向上したと語っています。

「私と生徒たちとの関係も、以前よりとても良くなりました。」「子どもたちから本当に多くのものを得ることができます。」(ピルグリムさん)

トップページへコーナートップへ戻る先頭に戻る