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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたちは今

中央アフリカ共和国:
絵に表れる過酷な経験、子どもたちに心のケアを

【2013年10月23日 中央アフリカ共和国・ボッサンゴア発】

© UNICEF Central African Republic/2013/Duvillier
13歳のフェリシアが描いた絵

13歳のフェリシアは、他の子どもと同じように絵を描くのが大好きです。しかし、フェリシアの絵には、学校での出来事や家族、友だちは描かれていません。地面に横たわった遺体、焼かれた家々、武器を持った男たちの絵が、鮮明に描かれています。中央アフリカ共和国のボッサンゴアで起きている武力衝突により、過去数ヶ月間、複数の場所を転々と避難してきたフェリシアの記憶のなかには、目撃した暴力の様子が焼きついています。

「“彼ら”が銃を持って家へ押し入ってきたとき、私は両親と家の中にいました。心臓の鼓動が激しくなりました。彼らはうちの前に遺体を捨てたのです。殺されたのは近所の知っている人たちで、ショックを受けました。私たち家族はパニックになって逃げ出し、離れ離れになりました。そして私の叔父は殺されました」とフェリシアは話します。

語られない出来事

© UNICEF Central African Republic/2013/Duvillier
避難をしている他の600人の子どもたちと同じように、フェリシアはユニセフが支援する「子どもに優しい空間」に毎日通っています

数週間の間、フェリシアと家族は川沿いの森に隠れていました。9月に新たな武力衝突が起きたため、彼女たちは再び逃げることを強いられました。現在、フェリシアの一家は17万人が暮らす避難所に身を寄せています。生後2か月だった妹は、嘔吐と下痢によって、まもなく亡くなりました。フェリシアは、森の中で飲んだ不衛生な水が妹の命を奪ったと想っています。

ぼろぼろの服を着たフェリシアは、「悪夢にうなされたりしません。でも、あのときの出来事を考えると、情景が蘇えり、涙が出てきます。ここに着いたとき、知っている人は一人もいませんでした。その後ユニセフのテントで、勉強を教えてくれる人々に出会いました。今や、彼らは共に勉強する仲間であり、友人でもあります。家の中では語らない話も、彼らは聞いてくれます」と話しました。

子どもたちの心や発育に、暴力や避難、家族の喪失、家族の離散といった出来事は、大きな影響を及ぼします。こうした子どもたちをケアするのに有効なのが、絵を描く、スポーツをするといった、芸術活動やレクリエーション活動です。暴力の影響をうけた子どもたちは感情を表現することで、過去のつらい出来事を緩和させていくことができます。

避難民の子どもに「子どもに優しい空間」を

© UNICEF Central African Republic/2013/Duvillier
ボッサンゴアの「子どもにやさしい空間」で絵を描く子どもたち。

9月の武力衝突から2ヶ月足らずで、ユニセフは、ボッサンゴア内の2箇所に「子どもに優しい空間」を設置しました。子どもたちは、遊び、レクリエーション活動に参加しながら、安心でき安全である環境下で、心のケアを受けられます。

「“子どもにやさしい空間”に初めて来たとき、子どもたちは周りの人と関ろうとはしませんが、だんだんと関心を持ち始めます。子どもたちと一緒に遊び、踊っていると、子どもたちは私を信頼し始めます。私自身も子どもたちと同じです。住む家を追われ、同じような経験をして、残虐な行為を見てきました」と、ペラジさんは言います。ペラジさんは20歳、ユニセフのトレーニングを受け、ボランティアで子どもたちに勉強を教えています。

子どもたちの心に平和を

ユニセフが支援する「子どもに優しい空間」を通して、ボッサンゴアや周辺の村から避難してきた最大600人の子どもたちが、子どもらしさを取り戻し始めています。遊ぶ権利も暴力のない安全な子ども時代を過ごす権利も、すべての子どもが持っている権利です。ユニセフは、武力衝突の影響を受けている地域に、より多くのトラウマ(心的外傷)ケアの専門家を配置し、子どもたちへの支援を強化しようとしています。

「子どもたちが描く絵には、武力衝突による影響がよく表れています。避難している子どもたちの多くは、暴力的な出来事を目撃し、その記憶が脳裏に焼きついています。つらい記憶や感情をしまいこんでおくことは良くありません。こうした記憶は、長期間にわたって、子どもたちに大きな影響を及ぼす可能性があります」と、ユニセフ・中央アフリカ事務所のジャン・ロケンガ子どもの保護専門官は指摘しています。

「国に平和をもたらすために、私ができることはほんの少しかもしれません。けれど、子どもたちの心に平和をもたらすために、私はたくさんできることがあります」(ペラジ)

2013年9月に発表された報告書(英文)は、こちらよりダウンロードできます。
A step back: The impact of the recent crisis on education in Central African Republic
「後退した一歩:中央アフリカ共和国で勃発した危機が、教育にもたらす影響」(英語版)[1.71MB] »

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