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《2002年10月23日掲載》
手を奪われたアミーナの悲劇
21歳のアミーナは緑の長いベールの下に腕を隠して、慌てて頭を垂れます。誰にも姿を見られたくない彼女は、兄一家と暮らし、家の外に出ることはありません。アミーナは、手のない自分が恥ずかしくてしようがないのです。顔の下半分には無数の傷跡があります。あれは5年前の話。いまだにあの日のことを話す気になりません。
あれ以来、アミーナは人生に希望さえ見出せなくなってしまいました。できれば、あの日に死んでいれば良かった、と彼女は考えます。「どうして私はここに生まれたの? どうして生きていなければならないの?と妹はぼくに聞くんです」とアミーナのお兄さんは心配そうに言います。アミーナは人の力を借りないと何もできません。食事することも、服を着ることも、また体を洗うことも、ひとりではできないのです。
彼女の運命が劇的に変わった日、彼女は姉と一緒にのんびりと畑の中を歩いていました。ごく普通の日で、畑に仕事をしに行く途中でした。ふと見ると目の前に「美しい」ものが落ちているではありませんか。きらきら光る金属状のものに、思わず彼女は手を伸ばして拾い上げました。 イリバは、チャド政府が行った最近の地雷調査でも一番埋設量の多い地域でした。アミーナはこうした地雷と不発弾の被害を受けた数多い犠牲者のひとりに過ぎません。この地域には、チャドの武力紛争で地雷や不発弾がたくさん埋められたのです。
あの事故から5年。アミーナは義手が欲しくて欲しくてたまりません。ンジャメナには、義足はあるのですが、義手はありません。「妹に義手を買うとしたら、ドイツかカメルーンで手にいれるしかありませんが、費用が200〜300万CFAフラン(約36万円)もかかります。どう考えてもそこまで出せません」と大学の先生をしている兄のムーサは言います。「でも、彼女に希望を与えることができるとしたら、それしか方法がないのです」
ンジャメナ、2002年10月10日
クリスティーン・ジョルメ |