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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

コンゴ民主共和国:児童労働と貧困の悪循環から子どもたちを救い出すために

【2011年9月26日 コンゴ民主共和国発】

© UNICEF/DRC/Walther
鉱山での労働からなんとか抜け出したクリスチャンさん(左)とダニエルさん(右)。児童労働を強いられた時の記憶にいまも苦しんでいる。

ダニエルさん(16歳)は、世界の中でも過酷な労働のひとつといわれているコンゴ民主共和国南部にある銅山での仕事に3年間従事した後、今の生活を取り戻しました。

ダニエルさんの父親は、国営鉱山会社「Gecamines」での職を失い、それ以後、一家の生活は徐々に苦しくなっていきました。教師だった母親は、家計を助けようと、リカシ町近くのカマタンダ鉱山に隣接する鉱山労働者のためのキャンプへ移り住み、ビスケットとピーナッツを売る小さなお店を開きました。両親には、ダニエルさんと弟のクリスチャンさんの面倒をみる余裕はありませんでした。

死の恐怖
© UNICEF/DRC/Walther
鉱山で働く男の子たち。川で泥を落とし、鉱物を取り出している。鉱山労働者のために川沿いに作られたテント村では、性的搾取や飲酒、麻薬などの問題が日常の一部になっている。

「お金を稼ぐために鉱山で働かないかと友達に誘われたんです。」「最初は、川で泥を落として鉱石を取り出す仕事をしていました。でも、最終的には地下の坑道で働き始めました。」ダニエルさんは、こう説明しました。

鉱山では、子どもたちは、その体力に応じて異なる仕事が与えられていました。年上の子どもたちは、地下で鉱物を掘り起こす仕事を。その一方で、まだ幼い子どもたちは、鉱物を運んだり、川で鉱物の泥を落としたりする仕事をしていました。

「とっても恐い仕事でしたが、賃金は良かったんです」と、ダニエルさんはその時のことを振り返って話します。「良い時には、一日で5,000コンゴ・フラン(約6ドル)、悪い時でも2,000コンゴ・フラン(約2ドル)稼げました。」

日々の労働はとても過酷で、病気や事故は日常茶飯事。子どもたちはいつもひもじい思いをしていました。

「たいてい朝の7時から、次の日の朝まで地下にもぐっていました。」「みんな麻薬をやっていました。それしか死の恐怖に打ち勝つ術がなかったのです。」(ダニエルさん)

悪循環を断ち切る

この国では、貧困や教育の欠如、そして児童労働の悪循環が存在します。食べものを買ったり学費を払う余裕が無い親にとって、鉱山での労働は、(子どもたちが)生きるため、世の中で認められるための“出口”のように映るのです。そうして教育を受ける機会を逸した若者たちが、新たに親になり、今度は、彼ら彼女らの子どもたちに児童労働などを強いる傾向があります。重要なことは、こうした労働に代わる、現実的な代替手段を提供することです。

ユニセフは、パートナー団体とともに、この悪循環の鎖を断ち切るべく、人々が収入を得られるようにするための活動を提案しました。2008年にスタートしたこの試験的なプロジェクトは、鉱山地域で暮らす最も厳しい環境に置かれている家庭に、専門的な訓練や衣服、米、砂糖、油などが入ったキットを提供し、家計面での指導の機会も提供しています。キットは、すでに1万世帯に配布されました。

キットに入っていた物品を売り払ったことで、ダニエルさんの母親は、子どもたちを小学校に通わせるためのお金と、商いを始めるのに十分な資金を準備することができました。彼女は、小さな農地を購入し、今では、一家を養えるだけの収入源となった豚を飼っています。

「今は、最終学年に在籍しています。成績はクラスでトップ3に入るんです。」「来年には試験を受けて、大学で勉強を始める予定です。」(ダニエルさん)

ダニエルさんの将来は、光り輝いていますが、過去の辛い思い出が、いまだに彼を悩ませ続けています。

「(鉱山で)見てきたことが頭から離れません。でも、徐々に良くなっていくと思います。」 ダニエルさんは、静かにこう語ってくれました。

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