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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

2004年12月28日信濃毎日新聞掲載

「貧困」「紛争」「エイズ」なお深刻
<世界子供白書2005>

 「子どもの権利条約」という、子ども時代を守るための基準をほぼすべての国々が受け入れているにもかかわらず、貧困や紛争、HIV/エイズによって世界の半数以上の子どもたちの基本的な権利が脅かされている——ユニセフ(国連児童基金)は2004年12月初旬に報告書『世界子供白書』を発表し、こう訴えました。

 同条約は1989年に採択され、人権条約史上最も多くの国々に批准されています。しかし、それから15年、今なお10億人以上の子どもたちが、この条約で約束された、十分な保護を受けながら健やかに育つ権利を奪われています。

 報告書では、現在、子どもに最も破壊的な影響をもたらしている3つの要素として「貧困」「武力紛争」「HIV/エイズ」を取り上げています。

 世界の子どもは約22億人。そのおよそ2人に1人が貧困の中で暮らし、開発途上国の半数以上の子どもたちは必要な物資やサービスが受けられずにいます。例えば、3人に1人は家にトイレがなく、5人に1人は安全な水を利用できず、7人に1人は保健サービスを利用できません。

 紛争は子どもたちに大きな影響を与えてきました。1990年以来、戦争で犠牲となった360万人のうち、ほぼ半数が子どもです。兵士として徴用、誘拐される子ども、性的暴力や地雷の犠牲となる子ども、暴力や殺人を目の当たりにする子ども…。そうした子どもたちの多くは戦争で親を失い、住む家も追われています。

 エイズはいまや、世界の15−49歳の人々の死亡原因のトップを占めています。HIV/エイズが子どもに及ぼす影響で最も目立つのが、全世界で1,500万人にものぼる孤児の問題です。親が病気になっただけでも、家計を支えたり、家族の面倒を見るために学校をやめざるを得なくなり、危険な労働や他の搾取に遭う危険性が高くなります。HIV/エイズは親だけでなく、教師や保健員といった子どもたちが頼りにする大人の命も奪い、子どもたちを守る安全網を崩壊させています。

 現状をこのまま容認することはできません。子どもの権利条約の目的を果たすためにできることが、確かにあります。

 「子どもの生活の質は、家庭や地域社会、政府が日々くだす決断に左右されます。私たちは子どもにとって最善の利益は何かということを常に胸に抱きながら、賢明な選択をしなければなりません」と、ユニセフのキャロル・ベラミー事務局長は述べています。理想と現実との溝を埋めるのは選択の問題なのです。

 「すべての子どもに健康的で保護された子ども時代が保障されなければ、人類の真の進歩は始まりません」。未来は、私たち1人ひとりが今どのような選択をするか、ということにかかっています。 ※『世界子供白書2005年』の日本語版は2005年春発行予定です。

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