メニューをスキップ
HOME > 世界の子どもたち > ストーリーを読む
財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

イラク:暴力には屈しない! 
危険と隣り合わせの毎日の中でも教育をあきらめないお母さん

 【2007年3月28日 ニューヨーク発】

© UNICEF Iraq/2007/Dhayi

ナダさん(40歳)は、イラクの首都バグダッドで夫と4人の子どもとともに暮らしています。子どもたちは男の子と女の子が2人ずつで、みんな学校に通う年齢です。「ここでの暮らしはとても困難なものです」とナダさん(仮名)はユニセフのラジオ放送局の電話インタビューで答えました。

ナダさんは、2003年に戦争が始まったとき、もしかすると、この戦争によって状況が良くなるかもしれない、と期待していました。しかし、この戦争がもたらした最大の変化は、日常生活までもが脅かされるようになってしまったという現実でした。「安全が100%奪われてしまいました。仕事場だけでなく、家でも道路でも常に危険と隣りあわせなのです」とナダさんは訴えました。「家や学校にいるときでも子ども達が安全でいられるかどうかはわからず、いつも心配ばかりしています。誰もこの危険な状況から逃れることができないのです」

教育と仕事を取り戻す

ナダさんは、バグダッドで暴力がはびこっている間も、子どもたちをなんとか学校に通わせつづけてきました。しかし、いつ危険が迫ってくるかわからない状況の中で、子どもたちの教育が影響を受けないはずはありませんでした。それでも、ナダさんは、子どもたちを学校に通わせないということはばかげたことだと言います。

「危険だからといって子どもたちを家に留めていたら、子どもたちは長い間外に出ることはできないわ。いつ危険でなくなるかなんてわからないんだもの。1年や2年も学校に通わなかったら、私の子ども達は他の子どもよりもずっと遅れてしまう。生きていくためには、教育や一生懸命働くことが重要。だからこそ、危険だとわかっていても、私たちは教育や仕事という目的を達成できるように努力しなければならないの」

実際、ナダさんは、経済学の学位を得てキャリアを向上させるため、3年前に大学に戻りました。数カ月前、その大学で自爆テロが発生しました。ナダさんはその時学校にいたのです。「犯人は、警備員がいるところにやってきて、学生達が集まっている中で自爆したの。誰にとってもショッキングな出来事だった。ケガをした人や、事件を目撃したショックで倒れてしまった人を見たわ。中間試験中だったので、みんな学校にいて、事件は私たちが試験室に入るたった5分前に起こったの」

「暴力には屈しない」

それでも、ナダさんは夢をあきらめたりはしません。「今、勉強をやめることなんてできない。もう3年も努力してきたのよ。人生の中で大切なこの時期に、どうしてあきらめることなんてできるの。私たちの運命はこれからも続いていく。がんばらないと」とナダさんは語りました。「暴力には屈しない。あとは運に任せるわ」ナダさんは続けます。「どうか、最終学年を無事に終え、学位を取れますように・・・」

イラクには、自分や子どもたちの生活を支え、家族のより良い未来のために全力を尽くしているたくましい女性がたくさんいます。ナダはそんな女性のひとりです。「私たちが望むことは、安全な生活が戻ってくることだけ。 これは最も基本的な権利、人間としての権利なのです。自分自身や家族の安全という基礎的なことが達成されてから、次のことに進むことができるのです。一歩ずつ、ゆっくりと・・・」

トップページへコーナートップへ戻る先頭に戻る