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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

ストリートチルドレンの集う「家」
<マケドニア>

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マケドニア、スコピエのストリートチルドレンセンター。セナドが描いた絵が壁に飾られています。

セナドはおそらく10歳か12歳になる男の子です。おそらく、というのは、セナドは自分の本当の年齢を知らないからです。お母さんと一緒に暮らしたり、結婚しているお兄さんの家で生活しています。学校には一度も行ったことはありませんが、これまでに様々な仕事を路上で経験してきました。

「近所のおじさんがトラクターでやってきて、プラスチックボトルを詰めたバッグを100ディナール(2米ドル)で買ってくれるんだ。だから、ぼくは毎日出かけて、ごみ箱からプラスチックボトルを拾ってくるんだよ。運がいいと、2日でバッグいっぱいに集められるけど、いつもうまくいくわけじゃないんだ。家に帰る頃には辺りが真っ暗になっちゃう」

一週間のうち3日間、セナドは旧ユーゴスラビア・マケドニアの首都スコピエにあるストリートチルドレンセンターに通っています。彼はそれ以外の時間を、首都北東部の郊外から街の中心部まで、路上を行ったり来たりして過ごします。セナドは合わせて十数キロも歩いていることになります。「アナ先生がいるからここのほうが好きだよ」

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ソーシャルワーカーのアナとネドズミー

「アナ先生」はストリートチルドレンセンターで働いているソーシャルワーカーです。彼女は息つく間もなく、センターの話をしてくれました。

「毎日8時半になると、私たちは家や路上まで子どもたちを迎えに行きます。ここに来たら、子どもたちはまず手を洗い、必要があればシャワーを浴びて、そして授業を始めます。読み書きや算数などを教えるの。子どもたちは驚くほど早く、教えられたことを覚えていきます。大切なのは、子どもたちに知的刺激を与えることだけなんです」

「ぼくのノートを見て。いつも先生はぼくに5をくれるんだよ。マケドニアの小学校や中学校では5が最高の評価なんだ。ぼくは作文が上手なんだ」

2004年の12月のセンター開設以降、ユニセフはセンターが机やいす、ビデオ、IT設備、教材、衛生キットやおもちゃを備え付けられるように労働社会政策省を支援してきました。1回のシフトで、ソーシャルワーカーが2人、教師が2人、そして1人の心理学者の計5人の職員が働きます。

読み書きと、基礎的な算数のクラスのほかに、子どもたちはロール・プレイング・ゲームをして遊びます。「昨日は彼らが先生役で、私たちが子どもになったんですよ」と、アナが説明してくれました。3時ごろになると、子どもたちは家に帰ります。シフト制が導入されたのは、センターが狭いこととスタッフ不足が原因です。だから月・水・金曜日に通うグループと、火曜日と木曜日に通うグループに分かれているんです」

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アンドリジャナ15歳と、姪のネドズミー4歳は二人でストリートチルドレンセンターに通っています

福祉ソーシャルワーカーたちはこれまでに、スコピエの路上で物を売ったり、サービスをしたり(多くが乗り物に関する仕事)、物乞いをしたり、ごみ箱からボトルや紙を探すなどしている192人の子どもがいることが調査で分かりました。そのほとんどがロマの子どもたちです。彼らは一日のほとんどを路上ですごし、そして家に帰ります。192人の子どものうち、過去に正規の学校に入学したのはたった10人だけです。それもほんの2〜3年の間だけ。その後、学校をやめてしまい、現在学校に通っているのは3人です。「医師が検査したところ、100人以上の子どもたちが予防接種を受けていません。出生登録されていないので、社会保障、医療保障やその他の社会サービスが受けられないのがその理由です。一言で言えば、彼らの基本的権利が侵害されているのです。私たちは内政省と、出生証明書をリストにして発行するように交渉を続けています。両親のほとんどが公的な書類をいっさい持っていないため、出生証明をするのは本当に大変で、さらに複雑化するという悪循環に陥っています」

1日に約30人の子どもがセンターを訪れます。最年長は15歳のアンドリジャナ、最年少はまだ4歳のネドズミー。

センターの最年長アンドリジャナはネドズミーのおばさんにあたります。ネドズミーの母親は、実の父親に、ベオグラードに働きに出されました。「彼女は働きに出かけたの、道で物乞いするためにね。私たちのお父さんは取引をしたのよ。彼女が出ていく前の日に、お父さんが男の人からお金をもらうところを見たんです。ネドズミーはその時まだ1歳だった。私以外に世話をしてやれる人がほかにいたと思う?ネドズミーの父親?彼はいなくなっちゃったの、今どこにいるかもわからない」アンドリジャナがそう話す一方で、ソーシャルワーカーは、ネドズミーのお母さんは人身売買の犠牲者になったのだと信じています。

ソーシャルワーカーによると、ネドズミーの母親の写真が「オープン・ゲート」という子どもと女性の人身売買問題に取り組むNGOに提出され、現在彼女の捜索が続けられています。「オープン・ゲート」はユニセフと全欧安全保障協力機構の支援を受け、SOS電話を使って、人身売買の犠牲者を守る活動をしています。

アンドリジャナは小学校1年生の課程だけを修了しました。セナドのように、彼女もまた、保護施設の外にでると、路上で危険な労働に従事する生活を送っています。けれども、彼女は新しい機会を得て、明るい未来について考えるようになりました。「絶対夜間の学校に通って、小学校を卒業するの。アナ先生が言ってたんだけどね、センターがお金を出してくれるんだって」将来の夢を尋ねるとアンドリジャナはすぐに答えを返してくれました。「先生になりたいんです」

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