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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

ソマリアはとても平和な国でした・・・
南部を逃れる人々

【2010年2月18日 ハルケイザ発】

© 日本ユニセフ協会
ステートハウス国内避難民キャンプの一角

視察2日目、アグネス大使は、北西部のソマリア第2の都市、ハルゲイサの中心部にある、約4万人の避難民を抱えるステートハウス国内避難民キャンプを訪問しました。

「ステートハウス」は、イギリス女王エリザベス2世が、1952年に戴冠した後、当時イギリス領だった国々を訪問した際、その宿泊先として造られました。かつて英国風の庭園やゴルフコースに囲まれていたと言われるその場所には、20年あまり続く内戦を経た今、形だけはソマリアの遊牧民族が伝統的に使ってきた葦作りのテント(モンゴルの遊牧民族が使う「ゲル」にあたるもの)に似ているものの、援助団体が配布したビニールシートやダンボール、食糧用の袋、食用油や粉ミルクの缶を板のように開いたもので作られたテントが立ち並んでいます。

神様は、いつになったら・・・
© 日本ユニセフ協会
3ヵ月前にモガデシュから逃れてきたサクゥア・アリ・イブラヒムさん(37歳 写真左側の白い服の女性)

「エチオピア兵、政府軍、イスラム過激派。誰であろうと、銃を持った人が来た時には、子どもたちと屋根の上でひたすら身をかがめていました。近所では、虐殺が横行していました。近所の女性は、顔を隠していなかっただけで、鞭打たれました。『敵』に加担していると疑いを掛けられただけで、首を刎ねられたり、銃殺されたり。言葉では言い表せないほど残酷な光景が繰り広げられています」。子どもたちを連れてソマリアの首都モガデシュを逃れたサクゥア・アリ・イブラヒムさん(37歳)は、3ヵ月前、ステートハウス国内避難民キャンプにたどり着きました。「無理やり戦いに引きずり出された9歳の子は、今も精神的に苦しんでいます。」「夫は仕事をしていました。一番上の子は、まもなく大学に行けるはずでした。でも今は、全てを失いました。」「ソマリアはかつて平和な国でした。神様は、いつになったらあの日々を戻してくれるんでしょう・・・。」

© 日本ユニセフ協会
「モガデシュが恋しい。でもどうしようもない。」と訴える女性の一人、ホダン・アタンさん(21歳)。この避難民キャンプで彼女が住んでいたテントは最近火事に遭い、今は、夫や子どもと一緒に路上で寝ている。

ソマリア北西部の戦禍からエチオピアに逃れて帰還した人々が多く住むこの国内避難民キャンプに、この数年、イブラヒムさんのような南部出身の避難民が増えてきています。

ベレトウェインから3人の子を連れて逃げてきたアルド・アブディラヒさん(18歳)は、逃げる途中、まだ生後3ヶ月だった子を失いました。「夫はベレトウェインに残りました。今、生きているのか死んでいるのかも分かりません。」

モガデシュに18歳と20歳の子どもを残して逃げてきたマコ・ヤシンさん(45歳) 「2人の子は、モガデシュで殺されました。一人は昨日殺されたと伝えられました。」

この日、ステートハウス国内避難民キャンプでアグネス大使が出会った20人ほどの女性たちは、異口同音に故郷への強い想いを語りました。「ここでは、収入もありません。家もありません。子どもたちに教育や医療も与えられません。ただただ、周囲の人々に迷惑を掛けているだけです。モガデシュが恋しい。でもどうしようもない。どうしたら良いかわかりません。」

「アグネス大使を迎えて」

© 日本ユニセフ協会
エティエ・ヒギンズ所長

ユニセフ・ハルゲイサ事務所のエティエ・ヒギンズ事務所長が、アグネス大使の来訪にあたり、次のメッセージを寄せてくれました。

アグネス大使が今回ソマリアに来てくださったことを、大変嬉しく思っています。
ソマリアの緊急事態は、世界でもっとも長く続いているもののひとつです。そうした状況に、新たな視点や国際社会の新たな関心を、今回の訪問はもたらしてくれています。

ユニセフはソマリアで、保健分野や飲料水分野など子どもたちの命を守る活動はもちろんのこと、「行政制度」が立ち上がり始めている地域では、より長期的な制度作りのお手伝いをしています。

今回、アグネス大使は、長年にわたる内戦や混乱の中で、何度も住む場所を追われ続けてきている人々の状況に加え、最近深刻になっているソマリア南部での戦闘を逃れて国北部に逃れてきている人々の状況も、国際社会に伝える機会を作ってくださいました。

日本政府や日本の皆様からのご支援は、ソマリアで活動する私たちユニセフ・ソマリア事務所一同に、大変大きな勇気と支えを与えてくださっています。今回のアグネス大使の視察をふくめ、皆様のご支援を支えに、私たちも、全てのソマリアの子どもたちのために、今後より一層の努力を重ねてまいりたいと思います。

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