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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

2003年6月3日 信濃毎日新聞掲載

深刻な先生不足・中途退学
<スリランカ>

スリランカ東部の街、カルクダにある学校で校長先生として働くアナンダラヤさんは、今、大きな課題に直面しています。海辺にあるこの小さな学校では、先生が深刻なまでに不足しているのです。学校に通う5歳から16歳までの生徒500人に対し、先生は10人のみ。子どもたちの中途退学率も高いと、アナンダラヤ校長は言います。

 スリランカ東部では、過去20年間、政府と反政府タミル人勢力のLTTE(タミル・イーラム解放の虎)による内戦が続いてきました。LTTEは、スリランカ北部と東部のタミル人地域の分離独立を主張し、政府軍と戦ってきました。政府は教育システムを整えようと努力していますが、政府とLTTE支配地域の境界にあるこの地域では、研修をしっかり受けた先生を確保するのが難しいのが現状です。

 ユニセフは、内戦や貧困のために中途退学した子どもたちの学校への復帰を促そうと、カルクダで「子どもの再入学プログラム」を実施しています。このプログラムにより、75人の子どもたちが学校に戻り、2人のボランティアの先生が教壇に立っています。ユニセフは、教育省の下で特別に研修を受けたボランティアを採用し、プログラムを実施しています。こうしたボランティアがいなければ、中途退学した子どもたちが学校で再び勉強をすることはできなかったでしょう。

 このプログラムに参加する8歳の少年、パディヘレンの場合、ユニセフのボランティアが学校に子どもを通わせていない家庭の調査をしている際に見つけました。パディヘレンの父親は内戦のため亡くなり、母親は精神疾患にかかっています。教育や社会保障も受けず、パディヘレンは母親と暮らしていたのです。今、パディヘレンは、ユニセフの支援により学校に通うことができるようになりました。「成績はクラスのトップレベル」と、ボランティアの先生は言います。

 一方、アナンダラヤ校長は、地域の治安が改善し、教室などの設備が向上しないならば、今後、子どもたちが学校で勉強できないかもしれないと危ぐしています。この学校では、生徒の15%が政府とLTTE勢力の境界地域から学校に通っています。通学時の安全が保障されない限り、子どもたちは学校に戻ることができないのです。

 ノルウェー政府の仲介で実現したスリランカ政府とLTTEの間の停戦は、現在まで1年以上続いています。今月上旬には、東京でスリランカ復興支援に関する国際会議が開催される予定です。より多くの子どもたちが再び学校に通うことができるよう、一刻も早く和平交渉が開始されることが期待されています。

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