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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

シリア:避難民キャンプにいるイラク人の子どもたちに
「子どもに優しい空間」で希望を

【2009年2月12日 シリア】

シリアのジャラマナの難民キャンプにいる子どもたちのために作られた「子どもに優しい空間」で絵を描くイラクの女の子。
© UNICEF Syria/2008/Rashidi
シリアのジャラマナの難民キャンプにいる子どもたちのために作られた「子どもに優しい空間」で絵を描くイラクの女の子。

シリアにはイラクからの避難民が150万人もいます。武力紛争によって国を追われ、全てを故国に置いてきたこの人たちに、基礎支援物資を提供するのは至難の業です。こうした状況の中では、どうしても子どもたちの特別なニーズが見過ごされがちになります。

2007年、ユニセフは、シリア赤新月社(SARC)と協力して、イラク人の避難民の子どもたちのニーズに応えるため、シリアに5つの「子どもに優しい空間」を設置しました。

2008年の間に、1万1,500人以上のイラクの子どもたちが、「子どもに優しい空間」に登録されました。ここで、子どもたちは安全に遊んだり、他の子どもたちと交流を深めたりすることができます。これは、子どもたちが厳しい環境によるストレスを乗り越え、正常な発達を促すために不可欠なのです。

ここで提供されているゲームや遊びは、娯楽を提供し、辛い経験を忘れさせてくれる時間である以上に、自分の考えを表現し、辛い記憶を上手に忘れる一助にもなるのです。

行動観察
シリアのドゥマの登録センターに作られた「子どもに優しい空間」で遊ぶ子どもたち。
© UNICEF Syria/2008/Mala
シリアのドゥマの登録センターに作られた「子どもに優しい空間」で遊ぶ子どもたち。

セルマさんは、ジャラマナ地区にある子どもセンターに保護された女の子のひとりです。他の4つの「子どもに優しい空間」が設置されたセンターと同じく、このセンターも、基本的な心理サポート訓練を受けたSARCのボランティアの人々によって運営されています。

セルマさんが子どもセンターにやってきた時、セルマさんはすぐに空いている部屋に行ってしまい、姿が見えなくなりました。セルマさんは、何を聞かれても答えず、誰とも目も合わせようとはしませんでした。しかし、すぐにセンターのボランティアの人々は、なんとかセルマさんに絵を描いてもらうことに成功しました。

セルマさんは、両親に銃を向けている兵士と、その後ろには、炎に包まれている家の絵を描きました。

訓練を受けたボランティアの人々は、避難民の子どもたちの振る舞いを観察し、話を聞いて、子どもたちが、追加的な支援が必要かどうかを判断します。お絵かきを通して、セルマさんのようなコミュニケーションがうまく取れない子どもたちは、こうして自分たちの心を開く術を見つけるのです。

安心して遊ぶことができる空間
シリアのオウドサヤにあるコミュニティセンターの「子どもに優しい空間」。
© UNICEF Syria/2008/Al-shoura
シリアのオウドサヤにあるコミュニティセンターの「子どもに優しい空間」で、ユニセフスタッフと、シリアのボランティアと共に遊ぶ子どもたち。

シリアにいるイラクの人たちは、多くの場合、混雑した環境の中で生きています。子どもたちは、遊ぶ場所もほとんどなく、テレビがあれば、一日中それを見て過ごしている状態です。こうした状況は、子どもたちを不安にさせ、新しい生活になじむことの障害となり、すでに厳しい状況をさらに悪化させています。

他の子どもたちと一緒に遊ぶことによって、子どもたちは、普段の生活の感覚を再び取り戻すことができるのです。

また、「子どもに優しい空間」でのゲームや遊びでは十分ではないと思われた場合、子どもたちは、センターと密接に協力している分野横断的に活動する子どもの保護・心理支援ユニットのひとつに紹介され、そこからの支援を受けることができます。この特別なユニットを通して、支援が必要な子どもたちは、心理社会的な評価と支援を受けることができるのです。

母親たちのカウンセリング

子どもたちが必要としている支援を提供するもうひとつの方法は、子どもたちの親を支援することです。全ての「子どもに優しい空間」では、母親のためのカウンセリングを開始しました。このカウンセリングでは、育児方法、最も多く聞かれる問題への対処方法、子どもたちとのコミュニケーションのとり方についての情報を提供します。

母親たち自身が専門的なケアを必要とする場合は、女性の精神科医と心理学者が、心理社会的な支援ユニットと一緒になって、専門的なケアを提供します。

しかしながら、シリアにいる多くのイラクの子どもたちは、いまだ十分な支援が受けられずにおり、センターのニーズは高まっています。先月、新たに137人の子どもたちがセイダ・ゼイナブにあるセンターに登録されました。

より多くの支援を提供するために

もっと多くの子どもたちに支援を届ける継続的な支援の一環として、ユニセフは、国連パレスチナ難民救済事業機関と協力して、アル・ヤルムーク難民キャンプに、もうひとつ「子どもに優しい空間」を設置しました。

2009年、ユニセフは、イラク人難民キャンプにいるできる限り多くの子どもたちと家族のニーズに応えるため、2008年、シリア内で活動する国連機関が合同で行ったアピール(支援要請)で集まった資金を利用し、支援を行っています。

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