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『子どもの権利条約』採択から20年

「『子どもの権利条約』は、子どもの人権に進展をもたらした。しかし、課題は残されている。」

1989年に国連総会で採択された『子どもの権利条約』は、すべての子どもに人権を保障する法的拘束力を持った初めての国際条約となりました。子どもの権利は、この20年間に大きな進展を遂げてきましたが、それでもまだ多くの課題が残されています。ユニセフ本部政策企画部のダン・シーモアは、次のように評価しています。

『子どもの権利条約』は、子どもにとって最善の世界を作るための国際社会による長年の取り組みの中で、一つの画期的な出来事でした。『子どもの権利条約』は、法的拘束力を持つ国際法として、国連加盟国が共有すべき原則、即ち国家や文化、時代背景に関係なく、人類社会に生まれたすべての子どもに適用されるべき原則が成文化されたものです。

この条約が生まれたことにより、世界中で子どもの保護をさらに推進すべく法律の改定が進み、国際機関や国際NGOは、それまで以上に子どものための活動に力を注ぐようになり、武力紛争下でも子どもを保護するといったような新たな国際的な課題が明らかにされました。

世界にもたらされた効果

(C) UNICEF/NYHQ2008-0668/Sato

『子ども権利条約』は、世界各地で、法律や子どもたちを守る様々な活動に多くの影響与えています。1990年、ブラジルは条約の批准に続き、その原則に基づいて新たな子ども・青少年法を制定しました。ブルキナファソは、条約の4つの柱のひとつ、「参加する権利」を実現するため、提案された法律の審査を行なう子ども議会を創設しました。

フィンランドは、『子どもの権利条約』に基づいて、幼児教育や保育に関する計画、小・中学校のカリキュラム、学校保健の質の改善に関する提案、子どもの貧困と社会的疎外問題に関する行動計画など、数々の新たな方策を打ち出しました。

エリトリアは、子どもを無視したり虐待したり養育を放棄した親や保護者への刑罰を伴う暫定刑法を発表しました。

今後の課題

(C)UNICEF/NYHQ2009-0690/Ramoneda

このように『子どもの権利条約』が、国際社会に広く受け入れられたことで、それが特に難しいことでも新しいことでもないという誤った印象を与えるかもしれません。しかし、現実には、子どもが権利を持つ存在だという概念自体が、普遍的に認識されているとは言えない状況です。きわめて多くの子どもたちが、おとなの所有物と考えられ、様々な形態の搾取や虐待にさらされています。

『子どもの権利条約』第12条にあるように、子どもは自分に影響を及ぼすすべての事項について自分の意見を表明する権利を持っています。しかし、現実には、そうしたことは一般的に軽視されているばかりか、多くの人が、その合法性について疑問さえ抱いています。

条約第3条が唱える「子どもたちが、子どもに関するあらゆる措置について、子どもの最善の利益を中心に考える世界で暮らす」ことに対し、私たち自身が異議を唱えている可能性もあるのです。事実、人類が資源を分配する際に、子どもが最善の利益を受けられるよう配慮されることはほとんどなく、そのために戦争は起こっているのです。

変革をもたらすもの

(C)UNICEFNYHQ2009-0665Ramoneda

これまで人類が発案し世の中を変える原動力となってきた数々の新しい考え方と同じように、『子どもの権利条約』は、子どもに対する見方や処遇の仕方に、根本的な変革を求めています。

世界は、子どもの権利を尊重していません。子どもが権利を持っていることさえ否定し、そのために、驚くほど多くの子どもたちが予防可能なことが原因で死亡し、学校に通えず、適正な教育を受けられず、親がエイズで死亡すると誰からも見放され、自分で自分を守ることができないような暴力や搾取、虐待にさらされています。

『子どもの権利条約』が唱える子どもの権利が、すべて達成されたわけではありません。むしろ、まだ変革せねばならない問題に取り組む際に、私たち一人ひとりが果たすべき役割の本質を示唆してくれるのがこの条約なのです。

『子どもの権利条約』の力

(C)UNICEF/NYHQ2008-0840/Isaac

変革を進めるために私たちに求められているのは、『子どもの権利条約』を最大限利用し、この条約が持つ次の3つの基本的な特徴=力を活用することです。

  • 第一に、『権利条約』は法律であり、各国政府は自国内の子どもたちに対し、明らかな責任を負っていることを規定しています。
  • 第二に、『権利条約』は、子どもの諸権利に対応しようと社会のさまざまなレベルで多様な当事者(アクター)によって分担されている任務の枠組みを示したものであり、これらの任務を果たすうえで必要な知識、技術、資源、権限などについて、私たちが理解する手立てです。
  • 第三に、『権利条約』は、一致協力して世界の子どもに最善のものを与えるという国際社会の約束という形で表現された人類の倫理的声明です。

『子ども権利条約』の採択から20年。今こそ、私たちが今後取り組むべき課題を考える良い機会です。『権利条約』が求めているのは、人間開発の中心に子どもを据えるという大きな変革です。その理由は、投資に見合う大きな見返りがあるからでも、子どもの脆弱さに同情するからでもありません(大きな見返りがあることも、子どもたちの脆弱さに同情すべきことも事実ではありますが)。それよりももっと根本にある理由は、そうすることが、子どもたちの権利を実現することだからなのです。

日本政府による批准と日本ユニセフ協会の取り組み

日本政府は『子どもの権利条約』を1989年11月20日に採択し、翌90年9月2日に発行、同月21日に署名しました。 しかし署名とは、条約の趣旨と内容に基本的に賛同することを意味するだけで、法的な拘束力はなく、実行の義務は伴いません。そこで、日本ユニセフ協会は、日本政府・国会に、早期批准を求める活動を展開しました。この活動は、現在、日本ユニセフ協会の活動の柱の一つとなっているアドボカシー活動の、最初の本格的な取り組みとなりました。

条約の批准は、1992年に国会に上程されましたが、当時白熱していた「PKO論議」などの影響で継続審議となりました。1993年5月には、当時の日本ユニセフ協会東郷良尚専務理事と波多野里望(学習院大学法学部教授(当時/後に日本ユニセフ協会理事に就任)が、衆議院外務委員会に参考人として招致され、早期批准を訴えましたが、1993年7月の衆議院解散で廃案となり、再び批准に向けた動きが止まってしまいました。日本ユニセフ協会は、ユニセフ議員連盟の国会議員と協力して国会内で働きかけを強める一方、1993年11月19日、各界の有識者によって構成される任意団体の「『児童の権利条約』理解促進委員会」を立ち上げました。

こうした活動の結果、1994年4月22日(5月22日付で発効)、日本でも『子どもの権利条約』が批准されました。 日本ユニセフ協会では、その後も、18歳未満の少年兵の戦闘参加の禁止や子ども買春・人身売買・ポルノ問題に関する2つの『子どもの権利条約選択議定書』の批准に向け、関連する国内法の改正を求める様々なキャンペーンをはじめとするアドボカシー活動の他、学校を中心にした『子どもの権利条約』に関する知識の普及活動を、精力的に続けています。

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