メニューをスキップ 公益財団法人日本ユニセフ協会

子どもの権利を尊重・推進するビジネス

国家の義務
〜企業セクターの子どもの権利への影響〜

子どもの権利が置き去りにされたり、企業利益の優先によって軽視されたりしないよう、各国政府が、十分に機能し子どもに焦点をあてたガバナンス構造としくみをもつことが重要です。2013年2月、子どもの権利委員会は、子どもの権利に対する企業セクターの影響に関する国家の義務についての「一般的意見16」を採択しました。これにより各国には、企業活動の中で子どもの権利が保護されることを確保する責任があります。

子どもの権利委員会

子どもの権利委員会は、締約国による子どもの権利条約の実施状況を監視する、独立した専門家から構成される組織です。すべての締約国は、子どもの権利がどのように履行されているのか、委員会に定期的に報告書を提出する義務があります。締約国は、最初は条約に加盟してから2年以内、その後は5年ごとに報告を提出しなければなりません。委員会は各報告書を審査し、「最終見解」という形で、締約国に対する懸念や勧告を明らかにします。

委員会はまた、テーマ別課題に関する「一般的意見」として、人権条項の内容についての委員会としての解釈を公表し、一般討論の日を設けています。

起草

子どもの権利委員会(「委員会」)は2011年に、子どもの権利と企業セクターに関する一般的意見の起草を開始することを決めました。この問題についての一般的意見を作成する初めての国連人権条約体であり、主な目的は、締約国が子どもの権利条約上の義務を果たせるよう支援することで、以下のような内容を含みます。

- 企業セクターに関する条約上の国家の義務の性質について、概念的な指針を提供しています。例えば、企業による権利の侵害から子どもの権利を保護する国家の義務とは何を意味するのか?国有企業の義務とは?といったことです。

- ビジネスと子どもの権利の文脈において、子ども権利条約の4つの一般原則がどのように関連するかについて詳しく述べています。

- 子どもの権利を尊重、保護し、実現するために、ビジネスとの関係で、国家が備えるべき履行のための措置について、実践的な指針を提案しています。これには法律、規制、政策に加え、行政措置や意識啓発、協働などが含まれます。

委員会との数回の意見交換の結果、ユニセフは、企業による子どもの権利の侵害を防止し、救済する国家の義務というトピックに関する研究を支援することを決めました。追加的に、企業による子どもの権利の侵害についての効果的な救済についても検討しました。

関係者との協議

2011年9月16日、ジュネーブにおいて、この「一般的意見」の内容を検討するための最初の専門家会合が開催されました。この機会に、ユニセフは、国家の責任についての上述の研究の概要を発表しました。委員会はこの発表を評価し、ユニセフにさらなる支援を要請しました。その結果は、2011年12月に、一般的意見の骨子として発表されました。

その後、一般的意見で扱われる中心的な内容の概要が、オンライン上の意見募集や協議のために公表されました。国際労働機関(ILO)、アムネスティ・インターナショナル、雇用者組織、エクパット・インターナショナル、乳児用食品国際行動ネットワーク(IBFAN)を含む様々な団体から、計26の意見がオンライ上で寄せられました。

2012年3月、アルゼンチンのブエノスアイレスにおいて、この概要についての意見を得るための多様なステークホルダーとの協議が行われました。民間セクター、国、市民社会からの参加があり、商工会議所、電話会社、政府観光省、司法・国際法センター、赤十字、国際移住機関(IOM)などが含まれていました。子どもの権利の実現を支援するための家族にやさしい職場の重要性、子どもの権利に関する企業の責任についての啓発の必要性、企業による人権侵害があった場合に子どもが司法へのアクセスを得る必要性など、多くの問題が議論されました。協議の中で、特に女の子にとって、差別の禁止について十分な重点が置かれていないことが指摘されました。また、国による企業に対する規制が増えることが、企業の国際競争力を妨げるものとならないよう、この一般的意見は、公平な競争の場を作ることをめざすべきであることも確認されました。その後すぐに、メルコスールの代表による協議が行われ、彼らはこの概要への支持を表明しました。

2012年4月、インドのデリーにおいても、市民社会組織、ドナー、業界団体が参加する協議が行われました。この協議では、官民連携や、子どもの権利に不可欠なサービス(教育、水など)を企業が提供する場合における、国家の義務について、集中的に話し合われました。また、企業による人権侵害から子ども保護する国家の取り組みは、どのように測定・評価することができ、そのためにどのような指標を使用できるかという点も議論されました。

これらの協議を経て、一般的意見の最初の草案が作られ、2012年8月24日を期限として、一般からの意見募集のために公開されました。

採択

2012年6月にジュネーブで行われた、子どもの権利と企業セクターに関する一般的意見の作業部会において、草案が議論され、とりまとめられました。草案には、オンラインで寄せられた提案が、可能な限り組み込まれました。また、ブエノスアイレスとデリーで行われた、様々なステークホルダーとの協議で出された意見も取り入れられました。

一般的意見の草案についての最終的な協議は、2012年8月、ケニアのナイロビで開催されました。ユニセフは、企業と協議するためのウェビナーを実施し、また、セーブ・ザ・チルドレンは子どもたちとの協議を行いました。

作業部会内の最終的な話し合いと、スイスのシオンで2012年10月に開かれた会議を経て、一般的意見は2013年2月に採択されました。